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第4話 火花散るバトル?
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今日も今日とて私こと藤ヶ谷虎夏は十佳にフラれて(相手にされず)図書室で過ごしていた。
さて、今日は前回読み損ねた本の続きでも読むとするか。前回私が読み損ねた本……それは「男に執着し過ぎた女の辿り着く場所」だ。
一体何をもってこの本を図書室に置こうとしなのかは私には分からない。読んでいる人間はいるのかと心配してしまうが、実際に私が読んでいるのだから読んでいる人は案外いるかもしれない。
男に執着し過ぎると周りが見えなくなり、気付いた時には時すでに遅しという展開が多いのねということを学んだ。
「男には気をつけるべし」
集中して本を読み進めていると、背後から声を掛けられた。せっかく妄想以外で集中してたのにと少々不満を見せた表情で振り返る。
「ごめんなさいね。その本は私が読む予定だったものなので今すぐ渡してくれる」
自信満々な表情で立つ女子生徒は左腕の腕章の色で三年の先輩と認識できた……が、自分の読む予定の本だからって早く渡せって、普通こんなこと言う人間いますか? 先に読んだもの勝ちだろ普通。あんた何様、校長か? 総理か? 偉い博士か?
「早くしてちょうだい、時間の無駄だから」
「私が先に見てました」
「何、あんた何様よ」
あんた何様と私が我慢して口にしなかった言葉をこの女は口にした。
「あんたこそ何様だつーの、先輩だからって」
「明らかに王女でしょ」
「なぬー王女。そうですか王女様でしたか、これは失礼しましたってなるかー」
私は図書室ではあるが大きな声をあげ、本を脇に抱え席から立ち上がった。
「逃げる気」
「当たり前だ。私が先に読んでたんだから。この本は絶対に渡さん」
私たちは間合いを保ちつつ互いの隙を探しあった。一瞬でも気を抜けば間を詰められ本を奪われる緊張感を感じつつ、相手の動きをよく見て隙ができた瞬間を狙えば図書室から脱出できる。
「きょえぇぇーーー」
「ふしゃあーーーー」
周囲に他の生徒がいるのにも関わらず互いに人としてのプライドを捨てたように奇声をあげあった。
先に動いたのは王女の方だった。腰元の銃を素早く取り出し発砲してきた。予見していたので瞬時に回避することができた。その後も本棚を盾にしながら銃弾を避けていく。
終わりの見えない攻撃に私は思考を巡らせていた。このまま守勢では体力を一方的に奪われるだけ攻守を逆転させねば。
だが、回避した時にバランスを崩し私は床に倒れ込んでしまった。手元から本が落ちると王女は物凄い勢いでダイブしてきた。負けられない場面なので不利な体勢ではあったが諦めず私も本に向かってダイブした。
「藤ヶ谷さん、図書室なんだから静かにしなさーい」
どちらかの勝ち負けが決まる前に図書室の先生である帆賀(ほが)に叱られた。本を取り上げられお説教タイムへ。せっかく妄想して迫力ある展開が待ち受けてたのに……ちょっとは理解して欲しいわ。
「帆賀先生。こちらの王女、いや先輩が先に私が読んでいた本を渡せと言ってきたんだ」
「その先輩王女はそもそもどこにいるの? 」
「……」
「あなたは1年生だけど、既に多くの先生や生徒があなたの妄想癖はヤバいって噂になってるのよ」
先生や生徒に私が妄想ティストとであることが知られている? それって悪いこと、良いこと、どっちなんだろう。
「噂に違わず、本当にスゴイ妄想癖ね。でも今日は騒いだ罰として出入り禁止よ」
問答無用で私は図書室を追い出された。
「男に執着し過ぎた女の辿り着く場所」をまたしても読み終えることなく図書室を後にする事になった。借りればいいじゃないかと思うだろうけど、借りてまで読んでいると思われるのが恥ずかしいので無理。
残りの時間は仕方なく教室で過ごすとしよう。
廊下をとぼとぼ歩いていると、背後から視線を感じた。またも背後を取られてしまったか。私は背後を振り返ると十佳の双子の妹である村主湖乃佳と目が合う……しまった、私はうっかりしていた。メドゥーサの妹も当然メドゥーサだ。目を見てしまったので石化するかもしれないな。
「藤ヶ谷さんって面白いですよね~」
「マジで? ありがとう」
特に会話もしていないのにいきなり面白い人って言われても困りますがな。
「お姉ちゃんと友達なんだよね? 」
「ああ、私はそのつもりだよ」
十佳に比べれば口調は優しいが、何分この女は私のことを痴女と言っていたらしいからな……だが、待てよ。そもそも痴女と言っているのは十佳が勝手に行っている可能性も否定できない。
「もし良かったらなんですけど……私とも友達になってくれませんか? 」
私と友達になりたいと言う物珍しいタイプを発見。と言うか、姉妹揃って私の何に興味を持つのだろうか不思議だ。正直、多くの先生や生徒に妄想ティストであることを知られているのにも関わらず友達になりたいとは実は同類とか……。
「まあ、断る理由も無いし、あなたが良ければいいわよ」
「ありがとう」
余程嬉しかったのか、湖乃佳は満面の笑みで手を振って去って行った。
新しく友達が出来たからと言って、妄想ティストとしての生活には何の変化もないが、嬉しいことには変わりは無い。
図書室での失態の後でテンションは少し落ちていたが、湖乃佳と友達になるというイベントのおかげでテンションを僅かに上げることが出来た。おかげで教室までの足取りも自然と軽くなった。
教室に戻ると私の机の上に置かれた一冊の本を目にする。
多くの生徒の視線を受け続ける本の名前は「男に執着し過ぎた女の辿り着く場所」だった。
そりゃあ私の机の上に置いてあるんだから、クラスのみんなが私が借りたものと理解している事でしょう。誰だ? 私に恥をかかせようとしている奴は。
「あんた、そんな本を読んでるの? 」
十佳が笑いを堪えながら話しかけてきた。実際に読んではいるが、多勢の目の前でこのような笑いものになるのを恐れ借りてこなかったというのに。
「十佳よ、私名義で本を借りて机の上に置いた犯人はひょっとして貴様か?」
「違うわよ。図書室を出入り禁止になったらしいじゃない? それで湖乃佳があんたのためっていってたけど」
「湖乃佳……善意が仇となっておるよ」
クラスメイトの笑いものにされながら私は石化していった。
まさかメドゥーサの効果が時間差とはな……。
さて、今日は前回読み損ねた本の続きでも読むとするか。前回私が読み損ねた本……それは「男に執着し過ぎた女の辿り着く場所」だ。
一体何をもってこの本を図書室に置こうとしなのかは私には分からない。読んでいる人間はいるのかと心配してしまうが、実際に私が読んでいるのだから読んでいる人は案外いるかもしれない。
男に執着し過ぎると周りが見えなくなり、気付いた時には時すでに遅しという展開が多いのねということを学んだ。
「男には気をつけるべし」
集中して本を読み進めていると、背後から声を掛けられた。せっかく妄想以外で集中してたのにと少々不満を見せた表情で振り返る。
「ごめんなさいね。その本は私が読む予定だったものなので今すぐ渡してくれる」
自信満々な表情で立つ女子生徒は左腕の腕章の色で三年の先輩と認識できた……が、自分の読む予定の本だからって早く渡せって、普通こんなこと言う人間いますか? 先に読んだもの勝ちだろ普通。あんた何様、校長か? 総理か? 偉い博士か?
「早くしてちょうだい、時間の無駄だから」
「私が先に見てました」
「何、あんた何様よ」
あんた何様と私が我慢して口にしなかった言葉をこの女は口にした。
「あんたこそ何様だつーの、先輩だからって」
「明らかに王女でしょ」
「なぬー王女。そうですか王女様でしたか、これは失礼しましたってなるかー」
私は図書室ではあるが大きな声をあげ、本を脇に抱え席から立ち上がった。
「逃げる気」
「当たり前だ。私が先に読んでたんだから。この本は絶対に渡さん」
私たちは間合いを保ちつつ互いの隙を探しあった。一瞬でも気を抜けば間を詰められ本を奪われる緊張感を感じつつ、相手の動きをよく見て隙ができた瞬間を狙えば図書室から脱出できる。
「きょえぇぇーーー」
「ふしゃあーーーー」
周囲に他の生徒がいるのにも関わらず互いに人としてのプライドを捨てたように奇声をあげあった。
先に動いたのは王女の方だった。腰元の銃を素早く取り出し発砲してきた。予見していたので瞬時に回避することができた。その後も本棚を盾にしながら銃弾を避けていく。
終わりの見えない攻撃に私は思考を巡らせていた。このまま守勢では体力を一方的に奪われるだけ攻守を逆転させねば。
だが、回避した時にバランスを崩し私は床に倒れ込んでしまった。手元から本が落ちると王女は物凄い勢いでダイブしてきた。負けられない場面なので不利な体勢ではあったが諦めず私も本に向かってダイブした。
「藤ヶ谷さん、図書室なんだから静かにしなさーい」
どちらかの勝ち負けが決まる前に図書室の先生である帆賀(ほが)に叱られた。本を取り上げられお説教タイムへ。せっかく妄想して迫力ある展開が待ち受けてたのに……ちょっとは理解して欲しいわ。
「帆賀先生。こちらの王女、いや先輩が先に私が読んでいた本を渡せと言ってきたんだ」
「その先輩王女はそもそもどこにいるの? 」
「……」
「あなたは1年生だけど、既に多くの先生や生徒があなたの妄想癖はヤバいって噂になってるのよ」
先生や生徒に私が妄想ティストとであることが知られている? それって悪いこと、良いこと、どっちなんだろう。
「噂に違わず、本当にスゴイ妄想癖ね。でも今日は騒いだ罰として出入り禁止よ」
問答無用で私は図書室を追い出された。
「男に執着し過ぎた女の辿り着く場所」をまたしても読み終えることなく図書室を後にする事になった。借りればいいじゃないかと思うだろうけど、借りてまで読んでいると思われるのが恥ずかしいので無理。
残りの時間は仕方なく教室で過ごすとしよう。
廊下をとぼとぼ歩いていると、背後から視線を感じた。またも背後を取られてしまったか。私は背後を振り返ると十佳の双子の妹である村主湖乃佳と目が合う……しまった、私はうっかりしていた。メドゥーサの妹も当然メドゥーサだ。目を見てしまったので石化するかもしれないな。
「藤ヶ谷さんって面白いですよね~」
「マジで? ありがとう」
特に会話もしていないのにいきなり面白い人って言われても困りますがな。
「お姉ちゃんと友達なんだよね? 」
「ああ、私はそのつもりだよ」
十佳に比べれば口調は優しいが、何分この女は私のことを痴女と言っていたらしいからな……だが、待てよ。そもそも痴女と言っているのは十佳が勝手に行っている可能性も否定できない。
「もし良かったらなんですけど……私とも友達になってくれませんか? 」
私と友達になりたいと言う物珍しいタイプを発見。と言うか、姉妹揃って私の何に興味を持つのだろうか不思議だ。正直、多くの先生や生徒に妄想ティストであることを知られているのにも関わらず友達になりたいとは実は同類とか……。
「まあ、断る理由も無いし、あなたが良ければいいわよ」
「ありがとう」
余程嬉しかったのか、湖乃佳は満面の笑みで手を振って去って行った。
新しく友達が出来たからと言って、妄想ティストとしての生活には何の変化もないが、嬉しいことには変わりは無い。
図書室での失態の後でテンションは少し落ちていたが、湖乃佳と友達になるというイベントのおかげでテンションを僅かに上げることが出来た。おかげで教室までの足取りも自然と軽くなった。
教室に戻ると私の机の上に置かれた一冊の本を目にする。
多くの生徒の視線を受け続ける本の名前は「男に執着し過ぎた女の辿り着く場所」だった。
そりゃあ私の机の上に置いてあるんだから、クラスのみんなが私が借りたものと理解している事でしょう。誰だ? 私に恥をかかせようとしている奴は。
「あんた、そんな本を読んでるの? 」
十佳が笑いを堪えながら話しかけてきた。実際に読んではいるが、多勢の目の前でこのような笑いものになるのを恐れ借りてこなかったというのに。
「十佳よ、私名義で本を借りて机の上に置いた犯人はひょっとして貴様か?」
「違うわよ。図書室を出入り禁止になったらしいじゃない? それで湖乃佳があんたのためっていってたけど」
「湖乃佳……善意が仇となっておるよ」
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