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4・秘密を知っているかもしれない
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白い花が咲いていた。青い空を背景に咲き乱れる花。とてもキレイな花だった。その花は夏の代表的な花だと彼は教えてくれた。
僕は何も知らない子供のように、彼にいろんな事を教わった。花の名前。鳥の名前。夜空の星座。そして世の中の事。
僕達の通う学校には寮がある。その中には問題を抱えた子供も多いのだと彼は教えてくれた。
「なんだい? 問題を抱えてる子供って……」
聞くと彼はそっと目を細めた。その表情は穏やかで、怒っているのでも笑っているのでもない。ただなんとなく眩しそうに目を細めた。そんな感じだった。
「君がこの寮に入った理由は自立だったっけ?」
僕は頭の後ろで手を組みながら答える。
「自立っていうか……家に居ると干渉されてうるさいから。だから両親にうるさく言われない寮に来たかったんだ。それに同い年の友達と、ずっと一緒に居られるなんて楽しくていいじゃないか?」
僕の言葉を彼はテーブルで頬杖つきながら聞いていた。
黒く美しい目でじっと僕を見た後で言った。
「寮に入る子はたいがい実家が遠い。それが一番の理由だよ。でもたまに君みたいな子もいる。でも休みの間に帰省しない子は珍しいよ」
「珍しい?」
「ああ、そうだよ。みんな休みになれば実家に帰る。寮にいてもご飯は出ないからね。自炊できないなら帰るしかない。それでも寮に残る子がいるのはね、それはワケありの子しかいないよ。家に帰っても居場所がない。それ所か家自体がないとかね」
家自体がない。その言葉は胸に刺さった。
「……君もそうなの?」
「え?」
「君も帰る家がないの? だからここに……?」
緊張しながら聞いた。けれど彼はそっと微笑んだ。
「ああ、僕は違うよ。僕は君と同じ。干渉されたくないからさ」
その言葉とやさしい笑みに安堵した。その言葉を丸ごと信じて、嘘だなんて疑いもしなかったんだ……。
彼はその花の下に、今も眠っている……。
綾人はその日、寮の中にある小さな図書室に向かった。
寮は正面入ってすぐに中庭があり、その中心にシンボルのように楠の木が植えられている。
木の横には赴きのあるガス灯が立ち、暗くなるとふわりと寮を照らした。正面から入るとその木の左側に本館があり、木の陰に当たる中央に小さな図書室としての別館があった。綾人はその図書室に続く廊下を進んだ。
図書室の鍵は普段は寮の管理人が持っている。けれど休みの間だけは、管理人室前のカウンターの上の壁にかかっている。綾人はその鍵を持つと図書室のドアを開けた。
図書室の中に入ると独特の匂いがする。綾人はこの匂いが好きだった。
何故か懐かしいようなそんな匂いだと思う。狭い図書室の中を歩く。
見たい本があったわけではない。なんとなくさまよい、目に着いた写真集に手を伸ばしてみた。厚みのあるズッシリとした本を手に取ると椅子に座る。
綾人は屋久島の写真集を手にとっていた。開くと緑の森が現れる。霧のかかった空気と緑の木々。その写真を見ただけで、その場所がこの図書室の中に現れたような気がした。綾人は次々とページをめくる。深い森が自分を誘う。
綾人は暫くページをめくって本の世界に浸っていた。屋久島の写真集には木の写真しかなかった。他にはあっても水と木と岩の写真ばかりだった。綾人はふいに花が見たくなった。鮮やかな赤。白。紫。ピンク。色彩が恋しくなった。
「林に行こうかな……」
綾人は呟くと写真集をしまった。
寮のシンボルの楠の木の横を歩きながら見上げてみた。緑の枝が大きく広がっている。写真集を見るまでもなく、巨木はすぐ近くにあったのだと思い出す。
綾人は脇道から林へと向った。蓮池までは林の中を通っていく。その時、先日夜彦が描いていた百日紅が目に入った。
百日紅は赤、白、ピンクとそれぞれの木で咲き誇っていた。
綾人は百日紅の下まで歩くと、花を見上げた。急に去年の記憶が甦った。
ピンクの花が咲いていた。それは小さな花だったが、たくさん集まって枝をしならせているように見えた。
「これは何の花?」
そう聞く綾人に望森は答える。
「ああ、これはサルスベリだよ」
「サルスベリ?」
「ああ、夏の暑い百日間に咲き続けるから百日紅って書くんだ。猿が滑るって意味もあるけどね」
望森は木の幹をなでた。その木の幹はつるつると滑らかだった。
「へー、流石に物知りだね。ミモリは」
綾人はニッコリと笑った。望森もそれに応えるように黒い瞳を細め、やさしく笑った。
それはそう、まだ真実に気づく、ほんの数日前の事だった。
綾人はあの時と同じように幹に触れた。すべすべとしたその幹に、綾人は額をつける。目を閉じると望森の顔が浮かんだ。
「う……」
ふいに涙が零れそうになる。それを慌てて腕でこする。
「悲しくなんかない。後悔なんかない」
そう呟いたが自問の声が聞こえる。本当に? 本当に後悔してないの? 今からでも遅くないんじゃない? 許してあげれば? 彼はそれを望んでいたんじゃないのか?
綾人は手の平を握り締める。強く痛い位に。
「許してなんかあげないよ。絶対に……」
呟いたが気持ちはすっきりしなかった。ただ苦しさだけが虚しさだけが広がった。
綾人は蓮池に向かった。蓮は今日も美しく咲いている。
「キレイだな」
綾人は呟いた。何度も何度も見た蓮。けれどいつ見ても蓮は美しく、日々新たに感動する。
今日の花は少し閉じかけていた。綾人は時計を見る。時刻は15時。もう花は閉じてしまう。けれどその様子を見るのも悪くないかとその場に座り込む。
蓮は午後には閉じてしまう。だから花を見るのは早朝が良い。けれど花がゆっくりと閉じていく様子を見るのも良いと綾人は思う。
近くの木の幹に寄りかかって、半ば眠るように目を閉じかけた時、蓮池を見つめる夜彦の姿に気づいた。
「夜彦?」
つい呟くと、夜彦は声が聞こえたのか振り向いた。
「綾人か」
夜彦はクロッキーを片手に綾人に近づいた。
「どうしてここに?」
綾人は緊張しながら聞いた。ドクドクと心臓が鳴る。どうしてここに、この場所に? 何故望森との思い出の場所にばかり夜彦は居るのだろう? 先日の百日紅もそうだし、今日の蓮池も、みんなみんな望森と去年過ごした場所だ。そこにばかり何故夜彦は現れるのだろう? もしかしてすべて知っているのか? そう思うと綾人の喉は渇いた。
「どうしてここにって……」
夜彦は首をかしげた。そして呟くように言う。
「だって、絵を描くモチーフに良いだろう? こんなにキレイに花が咲いてるんだからさ」
「あ……」
綾人は声をもらす。
「えっと、じゃあ、こないだ百日紅を描いてたのは……?」
「え? だから、どうせなら花とか描きたいじゃん」
「……」
言われてみればもっともだった。
「そっか、花……花を描いてたんだね……」
安堵するように言う綾人に、夜彦は目を細める。
「何をそんなに安心してるんだ?」
「え?」
夜彦の顔が、さっきまでと変わったように感じた。
真剣な鋭い視線で綾人を見ている。
「綾人、今、すっげー怖い顔で俺を見てたよ。ここ、なんか特別な場所なの?」
ドクドクと心臓が鳴る。おかしい。心臓って喉にあるのか? そう思える位喉で脈打っているように感じた。
夜彦はクロッキーを掴んだまま、両手を広げた。
「ここキレイだよな。キレイで静かで、誰もこない」
ドクン。痛い位に心臓が鳴る。
夜彦はまるで鷹が獲物を狙うような鋭い目で綾人を見る。
「誰もこないから、秘密をしゃべったり、作ったりするのに良いかもな」
綾人は走り出したい衝動に駆られた。走って逃げてしまいたい。けれど綾人は堪えた。逃げ出したらそれこそバレてしまう。心を勇気づけて綾人は夜彦を見つめた。
「夜彦は何を知ってるの?」
夜彦は黙りこんだ。真剣な瞳で、けれどさっきのような鋭さはなく、ただじっと綾人を見つめる。
「俺がどこまで知ってるのか、俺がお前に聞きたい」
ドクン!
今までで一番大きく心臓が鳴った。
鳥が羽ばたく。まるで自分の心臓の音が聞こえて驚いたかのように。
「俺……お前とミモリの秘密を、知ってるかもしれない」
今度は心臓の音は聞こえなかった。頭がボーっとする。世界が白く変わっていく。世界が急に霧に包まれた。さっき見た屋久島の写真集のように。
「綾人……?」
霧の中から夜彦の手が伸びてきた。それを綾人は振り払う。
「夜彦は何も知らないよ! 秘密なんか何も、何も知らないよ!」
綾人はそう言うと走り出した。これ以上ここにいると、全部話してしまいそうだと思った。これ以上何か聞かれる前に逃げないといけない。綾人は必死に走っていた。
部屋に帰って日が暮れるまで、綾人は一人でベッドに蹲っていた。夜彦が怖かった。彼はいったいどこまで知っているのだろう? 考えてみても分からなかった。
ドアがノックされた。一瞬心臓がキュっと軋んだが、次の瞬間に声が聞こえた。
「綾ちゃん居る? そろそろ夕飯作ろうよ」
一意だ。
「うん、わかったよ」
綾人は部屋から出た。
今日の夕食は一意と綾人の二人が当番だった。
「俺、野菜洗うから、綾ちゃん切ってよ」
「いいけど、僕は結構不器用だからね」
「うん、でも俺よりは上手そうだと思うもん」
綾人は洗われた野菜をどんどん切っていった。二人の今日の献立はカレーだった。たくさん作っておけば、明日も作らなくて良いという理由で選んだ。
綾人は夜彦のことを考えながら野菜を切っていた。これからどうするべきか。嫌でも夕飯になれば顔を合わせないといけない。
「わー、じゃがいも小さ!」
一意が叫んだ。
「だから不器用だって言ったじゃんか……」
「だってまさか、ジャガイモの皮がこんな厚く切られるなんて思わなかったんだもん」
綾人は身まで厚く剥いていた。
「去年はミモリが居たから楽だったよね」
胸が詰まった。望森は料理も得意で、ほとんど一人で料理をしてみんなに食べさせてくれていた。
「俺たちってミモリがいないと、ぜんぜんダメダメだよね」
そう言いながらも一意は楽しそうだった。口ではそう言うが不器用なりに頑張ってみんなで作るのを、一意は楽しいと感じているのだと思った。
「去年、俺達もミモリを手伝ってあげたら良かったかもね」
「え?」
綾人は驚いて一意を見つめた。すると一意は微笑む。
「何でも出来るからってミモリに押し付けないで、みんなで分担したらよかったんだ。そしたらもっと楽しかったんだと思うよ。そりゃミモリが作ったみたいに上手くはいかなかったかもしれないけど、でもきっと楽しかったと思う」
その言葉は綾人の胸に刺さった。
「そうだね……」
「うん、きっと何でも出来るからって、一人でやりたいってワケじゃないと思うよ。たぶん勉強とかもさ、一人でも出来るけどみんなでやった方が楽しいじゃん? だから優等生だからって仲間はずれにしないで、一緒にやった方が楽しかったんだと思うよ」
そのセリフを綾人はデジャブのように聞いていた。それと同じような事を去年望森に言われた。責められた。いや、そう言い訳された。それが事実だからと言っても、自分は望森を許せない。今だって許さない。
「綾ちゃん?」
呼びかけられて綾人は一意を見た。
「野菜かき混ぜないと焦げちゃうよ?」
「あ、ごめん」
綾人は慌てて鍋の中の野菜をかき混ぜた。
出来上がったカレーを食堂に運んだ。みんなが揃って食事という時だった。
「お、今日はカレーか? いい日に来ちゃったな」
「先生!」
川瀬裕也がニコリと笑いながら食堂に現れた。
「なんだよ、カレー食べたくてこんな時間に来たの?」
そう聞く夜彦の隣の椅子に、川瀬は座る。
「いやいや、ちゃんと仕事だぞ。お前らがいい子にしてるか、餓死してないか、乱闘してないか、不純同性交友してないか、こうやって確認にきたんだからな」
「夕飯時じゃなくても良いんじゃないですか?」
冷たく聞く清春に川瀬は言う。
「イヤイヤ、先生別にカレーが食べたいなんて言ってないぞ」
「カレー、食べますか?」
綾人が聞くと川瀬は笑顔で頷いた。
「ああ、ありがとう! さすが斉藤はやさしいな!」
「俺もやさしいよ!」
そう言うと一意は皿を取りに行った。結局、川瀬も混ざり五人での食事になった。
「それにしてもタイミングが良いですね」
そう言う夜彦に笑顔で川瀬は答える。
「そうか? たまたまだよ」
「盗聴器でも仕掛けてあるんじゃないですか?」
清春が言うと、その発言を信じたのか、一意はテーブルの下を覗き込んだ。
「あはは、ないよないよ。そんなの」
まだ探している一意に清春が言う。
「あのさ、イチイ、昔の映画と違うんだからテーブルの下なんて場所にはないよ。あってもコンセントの中とかあっち」
「あ、なるほど!」
一意はコンセントまで見に行く気はないのか、再びカレーの皿に向かう。
川瀬はカレーを口に運ぶと感心したように呟く。
「なかなかカレー美味しいよ。みんなで作ったのか?」
「はーい! 俺と綾ちゃんです」
「そうか、先生が家庭科の先生だったら成績表に10をつけてあげたのになー」
清春が眉を顰める。
「相変わらず調子が良いな、川瀬先生は。俺がどんなにいい点取っても自分の受け持ちの数学じゃ、絶対に10つけてくれないくせに」
「えーそうなの? 川瀬ちゃん厳しいー」
川瀬はクスクスと笑った。綾人はそんな川瀬を見ながら不思議な感じがした。教師だというのに、この場に混ざってもなんの違和感もない川瀬。普通、生徒の中に教師が混ざると違和感があると思うのに、川瀬はそれがない。まるで自分達の友人のように、同級生のように感じる。それは川瀬がこの学園の卒業生のせいだろうか? だから一緒に過ごすと空気が馴染むのだろうか?
「川瀬ちゃんは、いつから先生になろうと思ったの?」
そう聞く一意に、川瀬は肘をつきながら考える。
「うーん、高校の時かな。もともと就職はこっちでしたいって考えてたんだけどね、進路を決める時に友達の事を思い出しちゃってね」
「友達?」
一意の問いかけに頷きながら答える。
「ああ、高校の時の友達に教師になりたいって奴がいたんだけど、結局そいつは教師になれなかったんだ。だから代わりに俺が教師になってあげようかとか、ちょっと考えちゃってさ」
「へー先生に友達とか、高校時代があったってなんか不思議」
そう言う一意に清春は冷たく言う。
「そりゃ人間なんだから、若い頃もあるに決まってんだろう」
「はは、それは良いけど、友達も居ないように先生って見えるか?」
川瀬の言葉に夜彦は意地悪に言う。
「友達はともかく、彼女はいなそうですね」
「うわ、失礼だな。先生はそんなにモテないように見えるか?」
夜彦はサラリと言う。
「逆ですよ。モテすぎて特定の彼女がいなそうって意味です」
「うわ、更にヒドイ発言だな。先生悲しいぞ」
綾人達は笑った。
川瀬は後片付けまで手伝ってくれた。綾人は川瀬と並んで立つと、川瀬が洗った食器をふきんで拭いていた。
「そういえば、さっき話してた友達とは今も会ってるんですか?」
「え?」
「ほら、さっき教師になれなかったって」
「ああ、うん、彼はね、死んでしまったんだ」
「え?」
意外な言葉に綾人は顔をあげた。すると川瀬は綾人を見ないで、遠くを見るような顔で正面を見つめていた。まるで思い出の中の友達と会話しているように見えた。やがて川瀬は綾人に向き直った。
「友達は大事にした方がいいよ」
「……」
「今日、ここに残ったメンバー、きっと全員、君にとって忘れられない友達になると思うよ」
川瀬は最後に笑顔でそう言った。綾人は何も言葉を返さなかった。今日ここにいる友人たち。確かにそうだろう。きっと綾人は忘れない。そして去年居た望森の事も。
綾人が片づけを終えて部屋に戻ろうとすると、廊下に夜彦が立っていた。
「話さないか?」
夜彦の前を綾人は急ぎ足で通りすぎた。
「待てよ! 話させてくれよ!」
「話すことなんかない!」
綾人は言い放つと急いで部屋の中に閉じこもった。暫くドアの外で夜彦は呼びかけていた。けれど綾人はそれを耳を塞いで無視した。
暫くすると静かになった。綾人はゆっくりと机に向かう。
「ノート……」
早くノートを見て落ち着きたいと思った。けれど引き出しを開けてもノートがなかった。
「あ、持ち歩いちゃってたっけ……?」
言いながらポケットを探る。けれどそこにもノートがない。
「え?」
急に心臓が冷えた。ノートがない。机にもポケットにも。
「じゃあ、どこに……?」
綾人は呟いた後で、必死に探した。机の上、引き出し、ベッド、床。自分の服も脱いで確認する。何度も何度も探す。けれどノートは見当たらない。さっきまで心臓が早鐘を打っていた。けれど今は心臓が止まったように感じた。綾人は頭を抱えて蹲った。
「落とした?」
それは一番恐ろしい想像だった。
僕は何も知らない子供のように、彼にいろんな事を教わった。花の名前。鳥の名前。夜空の星座。そして世の中の事。
僕達の通う学校には寮がある。その中には問題を抱えた子供も多いのだと彼は教えてくれた。
「なんだい? 問題を抱えてる子供って……」
聞くと彼はそっと目を細めた。その表情は穏やかで、怒っているのでも笑っているのでもない。ただなんとなく眩しそうに目を細めた。そんな感じだった。
「君がこの寮に入った理由は自立だったっけ?」
僕は頭の後ろで手を組みながら答える。
「自立っていうか……家に居ると干渉されてうるさいから。だから両親にうるさく言われない寮に来たかったんだ。それに同い年の友達と、ずっと一緒に居られるなんて楽しくていいじゃないか?」
僕の言葉を彼はテーブルで頬杖つきながら聞いていた。
黒く美しい目でじっと僕を見た後で言った。
「寮に入る子はたいがい実家が遠い。それが一番の理由だよ。でもたまに君みたいな子もいる。でも休みの間に帰省しない子は珍しいよ」
「珍しい?」
「ああ、そうだよ。みんな休みになれば実家に帰る。寮にいてもご飯は出ないからね。自炊できないなら帰るしかない。それでも寮に残る子がいるのはね、それはワケありの子しかいないよ。家に帰っても居場所がない。それ所か家自体がないとかね」
家自体がない。その言葉は胸に刺さった。
「……君もそうなの?」
「え?」
「君も帰る家がないの? だからここに……?」
緊張しながら聞いた。けれど彼はそっと微笑んだ。
「ああ、僕は違うよ。僕は君と同じ。干渉されたくないからさ」
その言葉とやさしい笑みに安堵した。その言葉を丸ごと信じて、嘘だなんて疑いもしなかったんだ……。
彼はその花の下に、今も眠っている……。
綾人はその日、寮の中にある小さな図書室に向かった。
寮は正面入ってすぐに中庭があり、その中心にシンボルのように楠の木が植えられている。
木の横には赴きのあるガス灯が立ち、暗くなるとふわりと寮を照らした。正面から入るとその木の左側に本館があり、木の陰に当たる中央に小さな図書室としての別館があった。綾人はその図書室に続く廊下を進んだ。
図書室の鍵は普段は寮の管理人が持っている。けれど休みの間だけは、管理人室前のカウンターの上の壁にかかっている。綾人はその鍵を持つと図書室のドアを開けた。
図書室の中に入ると独特の匂いがする。綾人はこの匂いが好きだった。
何故か懐かしいようなそんな匂いだと思う。狭い図書室の中を歩く。
見たい本があったわけではない。なんとなくさまよい、目に着いた写真集に手を伸ばしてみた。厚みのあるズッシリとした本を手に取ると椅子に座る。
綾人は屋久島の写真集を手にとっていた。開くと緑の森が現れる。霧のかかった空気と緑の木々。その写真を見ただけで、その場所がこの図書室の中に現れたような気がした。綾人は次々とページをめくる。深い森が自分を誘う。
綾人は暫くページをめくって本の世界に浸っていた。屋久島の写真集には木の写真しかなかった。他にはあっても水と木と岩の写真ばかりだった。綾人はふいに花が見たくなった。鮮やかな赤。白。紫。ピンク。色彩が恋しくなった。
「林に行こうかな……」
綾人は呟くと写真集をしまった。
寮のシンボルの楠の木の横を歩きながら見上げてみた。緑の枝が大きく広がっている。写真集を見るまでもなく、巨木はすぐ近くにあったのだと思い出す。
綾人は脇道から林へと向った。蓮池までは林の中を通っていく。その時、先日夜彦が描いていた百日紅が目に入った。
百日紅は赤、白、ピンクとそれぞれの木で咲き誇っていた。
綾人は百日紅の下まで歩くと、花を見上げた。急に去年の記憶が甦った。
ピンクの花が咲いていた。それは小さな花だったが、たくさん集まって枝をしならせているように見えた。
「これは何の花?」
そう聞く綾人に望森は答える。
「ああ、これはサルスベリだよ」
「サルスベリ?」
「ああ、夏の暑い百日間に咲き続けるから百日紅って書くんだ。猿が滑るって意味もあるけどね」
望森は木の幹をなでた。その木の幹はつるつると滑らかだった。
「へー、流石に物知りだね。ミモリは」
綾人はニッコリと笑った。望森もそれに応えるように黒い瞳を細め、やさしく笑った。
それはそう、まだ真実に気づく、ほんの数日前の事だった。
綾人はあの時と同じように幹に触れた。すべすべとしたその幹に、綾人は額をつける。目を閉じると望森の顔が浮かんだ。
「う……」
ふいに涙が零れそうになる。それを慌てて腕でこする。
「悲しくなんかない。後悔なんかない」
そう呟いたが自問の声が聞こえる。本当に? 本当に後悔してないの? 今からでも遅くないんじゃない? 許してあげれば? 彼はそれを望んでいたんじゃないのか?
綾人は手の平を握り締める。強く痛い位に。
「許してなんかあげないよ。絶対に……」
呟いたが気持ちはすっきりしなかった。ただ苦しさだけが虚しさだけが広がった。
綾人は蓮池に向かった。蓮は今日も美しく咲いている。
「キレイだな」
綾人は呟いた。何度も何度も見た蓮。けれどいつ見ても蓮は美しく、日々新たに感動する。
今日の花は少し閉じかけていた。綾人は時計を見る。時刻は15時。もう花は閉じてしまう。けれどその様子を見るのも悪くないかとその場に座り込む。
蓮は午後には閉じてしまう。だから花を見るのは早朝が良い。けれど花がゆっくりと閉じていく様子を見るのも良いと綾人は思う。
近くの木の幹に寄りかかって、半ば眠るように目を閉じかけた時、蓮池を見つめる夜彦の姿に気づいた。
「夜彦?」
つい呟くと、夜彦は声が聞こえたのか振り向いた。
「綾人か」
夜彦はクロッキーを片手に綾人に近づいた。
「どうしてここに?」
綾人は緊張しながら聞いた。ドクドクと心臓が鳴る。どうしてここに、この場所に? 何故望森との思い出の場所にばかり夜彦は居るのだろう? 先日の百日紅もそうだし、今日の蓮池も、みんなみんな望森と去年過ごした場所だ。そこにばかり何故夜彦は現れるのだろう? もしかしてすべて知っているのか? そう思うと綾人の喉は渇いた。
「どうしてここにって……」
夜彦は首をかしげた。そして呟くように言う。
「だって、絵を描くモチーフに良いだろう? こんなにキレイに花が咲いてるんだからさ」
「あ……」
綾人は声をもらす。
「えっと、じゃあ、こないだ百日紅を描いてたのは……?」
「え? だから、どうせなら花とか描きたいじゃん」
「……」
言われてみればもっともだった。
「そっか、花……花を描いてたんだね……」
安堵するように言う綾人に、夜彦は目を細める。
「何をそんなに安心してるんだ?」
「え?」
夜彦の顔が、さっきまでと変わったように感じた。
真剣な鋭い視線で綾人を見ている。
「綾人、今、すっげー怖い顔で俺を見てたよ。ここ、なんか特別な場所なの?」
ドクドクと心臓が鳴る。おかしい。心臓って喉にあるのか? そう思える位喉で脈打っているように感じた。
夜彦はクロッキーを掴んだまま、両手を広げた。
「ここキレイだよな。キレイで静かで、誰もこない」
ドクン。痛い位に心臓が鳴る。
夜彦はまるで鷹が獲物を狙うような鋭い目で綾人を見る。
「誰もこないから、秘密をしゃべったり、作ったりするのに良いかもな」
綾人は走り出したい衝動に駆られた。走って逃げてしまいたい。けれど綾人は堪えた。逃げ出したらそれこそバレてしまう。心を勇気づけて綾人は夜彦を見つめた。
「夜彦は何を知ってるの?」
夜彦は黙りこんだ。真剣な瞳で、けれどさっきのような鋭さはなく、ただじっと綾人を見つめる。
「俺がどこまで知ってるのか、俺がお前に聞きたい」
ドクン!
今までで一番大きく心臓が鳴った。
鳥が羽ばたく。まるで自分の心臓の音が聞こえて驚いたかのように。
「俺……お前とミモリの秘密を、知ってるかもしれない」
今度は心臓の音は聞こえなかった。頭がボーっとする。世界が白く変わっていく。世界が急に霧に包まれた。さっき見た屋久島の写真集のように。
「綾人……?」
霧の中から夜彦の手が伸びてきた。それを綾人は振り払う。
「夜彦は何も知らないよ! 秘密なんか何も、何も知らないよ!」
綾人はそう言うと走り出した。これ以上ここにいると、全部話してしまいそうだと思った。これ以上何か聞かれる前に逃げないといけない。綾人は必死に走っていた。
部屋に帰って日が暮れるまで、綾人は一人でベッドに蹲っていた。夜彦が怖かった。彼はいったいどこまで知っているのだろう? 考えてみても分からなかった。
ドアがノックされた。一瞬心臓がキュっと軋んだが、次の瞬間に声が聞こえた。
「綾ちゃん居る? そろそろ夕飯作ろうよ」
一意だ。
「うん、わかったよ」
綾人は部屋から出た。
今日の夕食は一意と綾人の二人が当番だった。
「俺、野菜洗うから、綾ちゃん切ってよ」
「いいけど、僕は結構不器用だからね」
「うん、でも俺よりは上手そうだと思うもん」
綾人は洗われた野菜をどんどん切っていった。二人の今日の献立はカレーだった。たくさん作っておけば、明日も作らなくて良いという理由で選んだ。
綾人は夜彦のことを考えながら野菜を切っていた。これからどうするべきか。嫌でも夕飯になれば顔を合わせないといけない。
「わー、じゃがいも小さ!」
一意が叫んだ。
「だから不器用だって言ったじゃんか……」
「だってまさか、ジャガイモの皮がこんな厚く切られるなんて思わなかったんだもん」
綾人は身まで厚く剥いていた。
「去年はミモリが居たから楽だったよね」
胸が詰まった。望森は料理も得意で、ほとんど一人で料理をしてみんなに食べさせてくれていた。
「俺たちってミモリがいないと、ぜんぜんダメダメだよね」
そう言いながらも一意は楽しそうだった。口ではそう言うが不器用なりに頑張ってみんなで作るのを、一意は楽しいと感じているのだと思った。
「去年、俺達もミモリを手伝ってあげたら良かったかもね」
「え?」
綾人は驚いて一意を見つめた。すると一意は微笑む。
「何でも出来るからってミモリに押し付けないで、みんなで分担したらよかったんだ。そしたらもっと楽しかったんだと思うよ。そりゃミモリが作ったみたいに上手くはいかなかったかもしれないけど、でもきっと楽しかったと思う」
その言葉は綾人の胸に刺さった。
「そうだね……」
「うん、きっと何でも出来るからって、一人でやりたいってワケじゃないと思うよ。たぶん勉強とかもさ、一人でも出来るけどみんなでやった方が楽しいじゃん? だから優等生だからって仲間はずれにしないで、一緒にやった方が楽しかったんだと思うよ」
そのセリフを綾人はデジャブのように聞いていた。それと同じような事を去年望森に言われた。責められた。いや、そう言い訳された。それが事実だからと言っても、自分は望森を許せない。今だって許さない。
「綾ちゃん?」
呼びかけられて綾人は一意を見た。
「野菜かき混ぜないと焦げちゃうよ?」
「あ、ごめん」
綾人は慌てて鍋の中の野菜をかき混ぜた。
出来上がったカレーを食堂に運んだ。みんなが揃って食事という時だった。
「お、今日はカレーか? いい日に来ちゃったな」
「先生!」
川瀬裕也がニコリと笑いながら食堂に現れた。
「なんだよ、カレー食べたくてこんな時間に来たの?」
そう聞く夜彦の隣の椅子に、川瀬は座る。
「いやいや、ちゃんと仕事だぞ。お前らがいい子にしてるか、餓死してないか、乱闘してないか、不純同性交友してないか、こうやって確認にきたんだからな」
「夕飯時じゃなくても良いんじゃないですか?」
冷たく聞く清春に川瀬は言う。
「イヤイヤ、先生別にカレーが食べたいなんて言ってないぞ」
「カレー、食べますか?」
綾人が聞くと川瀬は笑顔で頷いた。
「ああ、ありがとう! さすが斉藤はやさしいな!」
「俺もやさしいよ!」
そう言うと一意は皿を取りに行った。結局、川瀬も混ざり五人での食事になった。
「それにしてもタイミングが良いですね」
そう言う夜彦に笑顔で川瀬は答える。
「そうか? たまたまだよ」
「盗聴器でも仕掛けてあるんじゃないですか?」
清春が言うと、その発言を信じたのか、一意はテーブルの下を覗き込んだ。
「あはは、ないよないよ。そんなの」
まだ探している一意に清春が言う。
「あのさ、イチイ、昔の映画と違うんだからテーブルの下なんて場所にはないよ。あってもコンセントの中とかあっち」
「あ、なるほど!」
一意はコンセントまで見に行く気はないのか、再びカレーの皿に向かう。
川瀬はカレーを口に運ぶと感心したように呟く。
「なかなかカレー美味しいよ。みんなで作ったのか?」
「はーい! 俺と綾ちゃんです」
「そうか、先生が家庭科の先生だったら成績表に10をつけてあげたのになー」
清春が眉を顰める。
「相変わらず調子が良いな、川瀬先生は。俺がどんなにいい点取っても自分の受け持ちの数学じゃ、絶対に10つけてくれないくせに」
「えーそうなの? 川瀬ちゃん厳しいー」
川瀬はクスクスと笑った。綾人はそんな川瀬を見ながら不思議な感じがした。教師だというのに、この場に混ざってもなんの違和感もない川瀬。普通、生徒の中に教師が混ざると違和感があると思うのに、川瀬はそれがない。まるで自分達の友人のように、同級生のように感じる。それは川瀬がこの学園の卒業生のせいだろうか? だから一緒に過ごすと空気が馴染むのだろうか?
「川瀬ちゃんは、いつから先生になろうと思ったの?」
そう聞く一意に、川瀬は肘をつきながら考える。
「うーん、高校の時かな。もともと就職はこっちでしたいって考えてたんだけどね、進路を決める時に友達の事を思い出しちゃってね」
「友達?」
一意の問いかけに頷きながら答える。
「ああ、高校の時の友達に教師になりたいって奴がいたんだけど、結局そいつは教師になれなかったんだ。だから代わりに俺が教師になってあげようかとか、ちょっと考えちゃってさ」
「へー先生に友達とか、高校時代があったってなんか不思議」
そう言う一意に清春は冷たく言う。
「そりゃ人間なんだから、若い頃もあるに決まってんだろう」
「はは、それは良いけど、友達も居ないように先生って見えるか?」
川瀬の言葉に夜彦は意地悪に言う。
「友達はともかく、彼女はいなそうですね」
「うわ、失礼だな。先生はそんなにモテないように見えるか?」
夜彦はサラリと言う。
「逆ですよ。モテすぎて特定の彼女がいなそうって意味です」
「うわ、更にヒドイ発言だな。先生悲しいぞ」
綾人達は笑った。
川瀬は後片付けまで手伝ってくれた。綾人は川瀬と並んで立つと、川瀬が洗った食器をふきんで拭いていた。
「そういえば、さっき話してた友達とは今も会ってるんですか?」
「え?」
「ほら、さっき教師になれなかったって」
「ああ、うん、彼はね、死んでしまったんだ」
「え?」
意外な言葉に綾人は顔をあげた。すると川瀬は綾人を見ないで、遠くを見るような顔で正面を見つめていた。まるで思い出の中の友達と会話しているように見えた。やがて川瀬は綾人に向き直った。
「友達は大事にした方がいいよ」
「……」
「今日、ここに残ったメンバー、きっと全員、君にとって忘れられない友達になると思うよ」
川瀬は最後に笑顔でそう言った。綾人は何も言葉を返さなかった。今日ここにいる友人たち。確かにそうだろう。きっと綾人は忘れない。そして去年居た望森の事も。
綾人が片づけを終えて部屋に戻ろうとすると、廊下に夜彦が立っていた。
「話さないか?」
夜彦の前を綾人は急ぎ足で通りすぎた。
「待てよ! 話させてくれよ!」
「話すことなんかない!」
綾人は言い放つと急いで部屋の中に閉じこもった。暫くドアの外で夜彦は呼びかけていた。けれど綾人はそれを耳を塞いで無視した。
暫くすると静かになった。綾人はゆっくりと机に向かう。
「ノート……」
早くノートを見て落ち着きたいと思った。けれど引き出しを開けてもノートがなかった。
「あ、持ち歩いちゃってたっけ……?」
言いながらポケットを探る。けれどそこにもノートがない。
「え?」
急に心臓が冷えた。ノートがない。机にもポケットにも。
「じゃあ、どこに……?」
綾人は呟いた後で、必死に探した。机の上、引き出し、ベッド、床。自分の服も脱いで確認する。何度も何度も探す。けれどノートは見当たらない。さっきまで心臓が早鐘を打っていた。けれど今は心臓が止まったように感じた。綾人は頭を抱えて蹲った。
「落とした?」
それは一番恐ろしい想像だった。
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