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第三章
最終話 そして、ストップライフは動き出す
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さて、なぜ今回このような事態が引き起こされたのか、その説明をしなければならない。といっても、説明するようなほどのものでもなく、ただ単にリリスの【場面転換】が暴発しただけという話。
世界改変前、サブロウとくんずほぐれつしたリリスは、久方ぶりの男と悦ってしまう。
その際、アヘ顔になってしまったことで【場面転換】が暴発、世界を作り変えることになってしまった……リリスの話を要約すると、大体こんな感じである。
そんなアホみたいな理由を聞かされたサブロウは大層呆れつつも、元の状態へ戻さんと今一度ポンコツ堕天使と手を組む。
『全ては世界を元に戻すため』……と言いたいところだが、残念ながらブリッツの世界に喧嘩を売った以上、戻すもの、戻さないものを選択しなければならない。それが折衷案。
だから、これは世界の為じゃない。
全てはそう……大事な者を守る為に――
◆
「ママ?」
「………………」
「ママ!」
「………………」
「マーマ!」
「――ッ! ど、どうしたのリリン?」
「ごはん、さめちゃうよ……?」
「あ……」
ただ今、母と子は自宅で朝食中。されどリリスは先程から手が止まったまま。リリンはその姿を心配気に見ていた。
「おなかいたいのー?」
「んーん、違うよ。ちょっとボーっとしてただけ」
リリスはスープを口に運び、無理くり笑ってみせる。
ちなみに先に訂正しておくが、この世界は既に――『元の世界』だ。
「ふ~ん……ねえ、ママ。――パパは?」
娘の純粋な質問に、リリスの背筋がピンと伸びる。
「パパは……お仕事に行ってるの」
リリスはぎこちない笑みで、そう答える。
「おやさいをとりにー?」
「いいえ……。もっと別の……外のお仕事よ」
「そとの、おしごとー?」
そしてリリスは、娘の小さな手を握り締める。
「うん。ちょっと遅くなるかもしれないけど、できるだけ早く帰るって言ってたわ。ちゃんと、お留守番できる?」
リリンはそう聞かれ、一拍置くも、
「うん! できるー!」
母の想いに応えるよう、満面の笑みで握られた手を天高く上げた。
◆
裏代興業のシマ――
「本当にいいんだな、サブ?」
「仕方ありませんよ。折衷案ですから」
ブリッツにそう問われたサブロウは、共にワームホール前へと立ちながら、言葉を返す。
「弟子たちはいいのか? そいつらの面倒を見るとか、大層なこと息巻いてたが?」
「そこは三代目『鴉羽の暗殺者』に話を通してあるので。逐一報告するよう言ってあります」
「フン、そうか……。しかし、まさかお前が――『蹂躙ルート』を選ぶとはなぁ? そうまでして家族を守りたいか?」
そう。ブリッツが述べた通り、サブロウは『蹂躙ルート』を選択した。何故、その道を選んだのか? それは【場面転換】で世界を戻す際、リリンをこちら側に連れてきてしまったからに他ならない。
『そんなのアリか?』と思うかもしれないが、実際できてしまったのだから仕方がない。しかし、そのままでは『幸せな状況』とやらに甘んじることになる為、サブロウはケジメとして家族と離れ、ブリッツと共に他世界へと旅に出ることになった……というのが、今回の幕引き。
これこそがサブロウの言っていた折衷案。
己の『止まった人生』よりも、リリンという『新たな命』を選んだのだ。
結局、最後までリリスに引っ掻き回されっぱなしだったが、新たに生まれた命に罪はない。サブロウが行く理由は、それだけで十分なのだろう。
「ハッ、僕が言いたいこと全部言っちゃってるし……。兄貴の方はいいんですか? 裏代興業、留守にして?」
「もうこの世界に興味はない。後のことは、あの葵咲って小娘に任せた」
「葵咲? あの子、本当に来たんですか?」
「ああ。代行稼業の奴らが連れてきてな。面白そうだからくれてやった」
「そんな簡単に……。まさか、改変後みたく魔王軍を復活させる気じゃ?」
「かもな。だが、どうなろうが知ったこっちゃない。もう俺らには関係ないんだから……」
兄貴分は後腐れなく、そう述べる。
しかし、弟分には守るものがある。そう簡単に割り切ることはできない。
「でも、何かあったら直ぐに戻りますからね? あと月一でも戻ります。子供がいるので」
「わかってるよ。俺もそこまで鬼じゃない。お前が譲歩した分、俺も譲歩してやるよ。折衷案だからな?」
素直な兄貴分に少々面食らいつつも、サブロウは眼前のワームホールを見つめ直す。
「じゃあ……そろそろ行きますか?」
「おう!」
そう言って二人は、ワームホールの中へと足を踏み入れていく。
サブロウは気を引き締めんと神妙な顔つきに。
対するブリッツは乱舞する狂気を、その面持ちに宿して。
こうして『サブロウくんのストップライフ』は幕を閉じる。
まさか予告通り、『他世界おじさん蹂躙ズ!』がスタートすることになるとは、露ほどにも思っていなかった。
だが、それはまた別のお話。語るかどうかも分からない。おっさん三人旅なんぞ、なんの需要もないからな。
というわけで、これでお終い。
結果、サブロウは返り咲かんと、新たな道を歩むことを決意する。
そう。『No.1』になる為の道を――
WATARI~サブロウくんのストップライフ~ 完
世界改変前、サブロウとくんずほぐれつしたリリスは、久方ぶりの男と悦ってしまう。
その際、アヘ顔になってしまったことで【場面転換】が暴発、世界を作り変えることになってしまった……リリスの話を要約すると、大体こんな感じである。
そんなアホみたいな理由を聞かされたサブロウは大層呆れつつも、元の状態へ戻さんと今一度ポンコツ堕天使と手を組む。
『全ては世界を元に戻すため』……と言いたいところだが、残念ながらブリッツの世界に喧嘩を売った以上、戻すもの、戻さないものを選択しなければならない。それが折衷案。
だから、これは世界の為じゃない。
全てはそう……大事な者を守る為に――
◆
「ママ?」
「………………」
「ママ!」
「………………」
「マーマ!」
「――ッ! ど、どうしたのリリン?」
「ごはん、さめちゃうよ……?」
「あ……」
ただ今、母と子は自宅で朝食中。されどリリスは先程から手が止まったまま。リリンはその姿を心配気に見ていた。
「おなかいたいのー?」
「んーん、違うよ。ちょっとボーっとしてただけ」
リリスはスープを口に運び、無理くり笑ってみせる。
ちなみに先に訂正しておくが、この世界は既に――『元の世界』だ。
「ふ~ん……ねえ、ママ。――パパは?」
娘の純粋な質問に、リリスの背筋がピンと伸びる。
「パパは……お仕事に行ってるの」
リリスはぎこちない笑みで、そう答える。
「おやさいをとりにー?」
「いいえ……。もっと別の……外のお仕事よ」
「そとの、おしごとー?」
そしてリリスは、娘の小さな手を握り締める。
「うん。ちょっと遅くなるかもしれないけど、できるだけ早く帰るって言ってたわ。ちゃんと、お留守番できる?」
リリンはそう聞かれ、一拍置くも、
「うん! できるー!」
母の想いに応えるよう、満面の笑みで握られた手を天高く上げた。
◆
裏代興業のシマ――
「本当にいいんだな、サブ?」
「仕方ありませんよ。折衷案ですから」
ブリッツにそう問われたサブロウは、共にワームホール前へと立ちながら、言葉を返す。
「弟子たちはいいのか? そいつらの面倒を見るとか、大層なこと息巻いてたが?」
「そこは三代目『鴉羽の暗殺者』に話を通してあるので。逐一報告するよう言ってあります」
「フン、そうか……。しかし、まさかお前が――『蹂躙ルート』を選ぶとはなぁ? そうまでして家族を守りたいか?」
そう。ブリッツが述べた通り、サブロウは『蹂躙ルート』を選択した。何故、その道を選んだのか? それは【場面転換】で世界を戻す際、リリンをこちら側に連れてきてしまったからに他ならない。
『そんなのアリか?』と思うかもしれないが、実際できてしまったのだから仕方がない。しかし、そのままでは『幸せな状況』とやらに甘んじることになる為、サブロウはケジメとして家族と離れ、ブリッツと共に他世界へと旅に出ることになった……というのが、今回の幕引き。
これこそがサブロウの言っていた折衷案。
己の『止まった人生』よりも、リリンという『新たな命』を選んだのだ。
結局、最後までリリスに引っ掻き回されっぱなしだったが、新たに生まれた命に罪はない。サブロウが行く理由は、それだけで十分なのだろう。
「ハッ、僕が言いたいこと全部言っちゃってるし……。兄貴の方はいいんですか? 裏代興業、留守にして?」
「もうこの世界に興味はない。後のことは、あの葵咲って小娘に任せた」
「葵咲? あの子、本当に来たんですか?」
「ああ。代行稼業の奴らが連れてきてな。面白そうだからくれてやった」
「そんな簡単に……。まさか、改変後みたく魔王軍を復活させる気じゃ?」
「かもな。だが、どうなろうが知ったこっちゃない。もう俺らには関係ないんだから……」
兄貴分は後腐れなく、そう述べる。
しかし、弟分には守るものがある。そう簡単に割り切ることはできない。
「でも、何かあったら直ぐに戻りますからね? あと月一でも戻ります。子供がいるので」
「わかってるよ。俺もそこまで鬼じゃない。お前が譲歩した分、俺も譲歩してやるよ。折衷案だからな?」
素直な兄貴分に少々面食らいつつも、サブロウは眼前のワームホールを見つめ直す。
「じゃあ……そろそろ行きますか?」
「おう!」
そう言って二人は、ワームホールの中へと足を踏み入れていく。
サブロウは気を引き締めんと神妙な顔つきに。
対するブリッツは乱舞する狂気を、その面持ちに宿して。
こうして『サブロウくんのストップライフ』は幕を閉じる。
まさか予告通り、『他世界おじさん蹂躙ズ!』がスタートすることになるとは、露ほどにも思っていなかった。
だが、それはまた別のお話。語るかどうかも分からない。おっさん三人旅なんぞ、なんの需要もないからな。
というわけで、これでお終い。
結果、サブロウは返り咲かんと、新たな道を歩むことを決意する。
そう。『No.1』になる為の道を――
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