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第三章

第115話 ヤったにしろヤってないにしろ、ケジメはつけろ③

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「あの~……サブロウきゅん? もしかして……怒ってる……?」
「うん。割と」

 拷問椅子に座らされたリリスは神妙な顔で機嫌を窺い、対するサブロウは吐瀉物でも見るような目で見下している。そんないつもの光景を前に、安堵を覚えるのは私だけではないだろう。

「な、なんでよ⁉ さっき怒らないって言ったじゃない! 騙すなんて酷いわ……」
「そういうとこだよ、そういうとこ。毎回、自分の非が頭にない。僕を別世界に飛ばした時から、まるで成長してないね」

 サブロウも今回ばかりは逃がさんと、いつもより目元が鋭くなっている。こう見るとやはり、アマトの子なんだな。

「お生憎様! この世界じゃ私は天界の長なの! あのブリッツだって消すほどの力を持ってるのよ? そりゃ、成長しないわよ~! だって初めからカンスト済み――ぶへらぁっ⁉」

 さすがのサブロウも堪忍袋の緒が切れ、リリスの顔面を右ストレートでぶっとばす。

「いっだぁぁあああぁぁぁ……‼ え? ウソでしょ? 拘束してる女の子の顔面殴ったんだけど? ありえないんですけどッ‼」

 鼻っ柱を真っ赤に染め、涙目で訴えるリリス。

「僕も驚いたよ……。嘗て捨てたはずの君への復讐心が、まだ残ってたことに」

 こりゃ、完全にキレてるな……。父親といい感じ風になった今、復讐心の行く先はリリス以外に他ない。ま、自業自得だな。言うなればコイツは諸悪の根源であり、サブロウにとっての――ラスボスなのだ。

「だからって殴るのはおかしいでしょ⁉ 普通、女の子を拘束したらエッチなことをするって相場が決まってるでしょうが⁉」
「決まってねえよ。僕は悪いことしたら、それ相応の罰を受けるってのを言いたいのさ。そこに男も女も関係ない」
「でも、この状況……そんなに悪くなくない? 私たちは夫婦になって子供まで出来たのよ? サブロウくんだって言ってたじゃない! 『こんなに幸せでいいのかな……』って?」

 うむ。確かに一理ある。全部が全部悪いとは言い切れない。

「それに兄貴分のブリッツだって消えたのよ? あの人はサブロウくんにとって、目の上のたんこぶじゃない?」

 さらにリリスは、そう説得を試みる。
 だが、サブロウは盛大な溜息でそれを跳ね除けた。

「勘違いしてるようだから言っとくけど――兄貴は消えてなんかいないよ?」
「……え?」

 ……え? そうなの?

「君も聞いてたんじゃないかな……ブリッツの兄貴が『天界の住人を遠隔洗脳して支配下に置いてる』って」
「あぁー……聞いたような?」
「さっき案内役を務めてくれた、あのガブリエルって子……あれは兄貴だ」
「――なッ⁉」

 ――なッ⁉

「なんですってぇぇえええええええええええええ⁉」

 なんだってぇぇええええええええええええええ⁉

 それはリリスと私、最初で最後のシンクロであった。

「僕も親父の言葉を聞いて、さっき思い出したところさ。恐らく兄貴は世界改変前に意識を潜らせていたんだろう。明らかに放ってる気が違ったからね」

 あの時感じた違和感はそれだったのか……。漸く謎が解けた。

「ってことは、最初っから見てたってこと……? ずーっと……?」
「ああ。今回の件、兄貴なら防ごうと思えば防げたはず。それをしなかったのは、この状況を利用できると思ったからに他ならない。僕が君、もしくは親父に復讐したら世界蹂躙ルートへ。僕たちがこの状況に甘んじたら、君とリリンは消されて、怒った僕は兄貴と殺し合いって筋書きかな?」

 それを聞いたリリスはトラウマを刺激され、「あばばばば……」と泡を吹きながら、久方ぶりのおしっ……ではなく聖水を御覧に入れる。

「さあ、もう分かっただろ? 僕たちが生き残るには、もう一度手を組むしかないって」
「ゔぅ……手を組むぅ……?」

 サブロウは目線を合わせんと膝をつ……こうとするが、聖水が滴ってたので即断念。寧ろ、ちょっと距離を取る。

「僕は復讐心を捨てる。君は世界を元に戻す。これで全て丸く収まる。みんな幸せ、万々歳だ」
「でも……それじゃリリンが……」

 腐っても母親か……。この期に及んで嘘はないだろうしな。

「それに関しては……折衷案を考えてる」
「折衷……案……?」
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