WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第三章

第114話 ヤったにしろヤってないにしろ、ケジメはつけろ②

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 アマトと最後の別れを済ませ、サブロウ一家はワームホールを抜け、天界へ。
 リリスとリリンが先導する道中、またもサブロウは後方で一人、大局を見据える。

 どうやら覚悟が決まったようだな、サブロウ?

「親父にあそこまで言わせちゃったからね。ウジウジ悩むのはもうやめだ」

 そうか……。だが、どうやってやる? 戻すにしても、もう一度カオスコードというのは……

「その必要はない。だって、やったのは僕たちじゃないんだから」

 我々じゃない……? ということは、他に黒幕が……⁉

「『まやかしに騙されるな。真実は意外なところに、眠ってるもの……』ってね。原点に立ち返ったら分かったよ。冷静に考えればなんてことなかった」

 サブロウは自嘲気味にそう話す。
 どうやら父親との再会は、思った以上に功を奏したようだ。

 じゃあ、本当にやるんだな? 未練はないか?

「ああ。戻すよ……元の世界に――」



 天界から帰還したサブロウは、ワームホールを抜けるなり、足を止める。

「……どうしたの? あなた?」

 振り返るリリスとリリン。

「リリン。先に戻って手を洗ってきなさい」

 サブロウがそう告げると、リリンは素直に「はーい」と、家の中に入っていく。

 見つめ合う夫と妻……。
 サブロウは真っ直ぐ見据え、リリスは小首を傾げている。

「あなた……?」

 リリスが再度問うと、サブロウは意を決したように口を開く。

「最初に疑問に思ったのはそう……の性格だった」
「え……?」
「子供が居るってのも大層な疑問だけど、あの子は巻き込まれた側だから、今回の件からは外していい」
「何を言ってるの……?」

 理解できぬリリスを措き、サブロウは淡々と続ける。

「僕は今回、色んな人と出会った。でもね……状況が変わって悲しむ者はおれど、性格まで変わる者はいなかったんだよ。――君以外はね?」
「………………」
「君がやったんだろ……今回の茶番はさ?」

 リリスが黒幕……? そうか! こいつには……!

「話しについていけないんだけど……?」

 だがリリスは尚も、お淑やかな態度を崩さない。

「それに今回の件で一番得をしているのも君だ。天界の長という地位と結婚、おまけに子供まで儲けてる。まさに理想の世界だ」
「別に不思議じゃないでしょう? 幸せは人を変えるの。それで私が世界を変えた理由には――」
「アウト。僕は世界を変えたなんて一言も言ってない。それを知ってるのは僕と……世界を変えた張本人だけだ」

 その瞬間、鉄壁と思われた偽りの仮面にヒビが入り始める。

「……ち、違うわよっ! 私には【場面転換】がある……。疑われたから、そう表現したまでで……!」
「君は世界を変えてしまったのは自分だと直ぐに気付いた。【場面転換】という最強の力を持つ、自分にしかできないと思い込んでね。カオスコードのことを知ってれば僕の所為にできただろうけど、生憎そこまで教えてない」

 リリスは額に汗を滲ませ、「カオスコード……?」と呟いている。

「だから君はバレぬようにと巻き込まれた側を演じた。でも、ちょっとやり過ぎたね。今の君は大分目立ってるよ」

 リリスは暫し悔し気な面持ちを浮かべていたが、すぐに仮面の修正をし、一心にサブロウ……いや、夫を見つめる。

「私はあなたの妻よ? それを疑うなんて……。そこまで言うからには、何か証拠があるんでしょうね?」

 お前は二時間サスペンスの犯人か。やってる奴の常套句だぞ、それ?

「証拠は親父に会いに行くことになった時の君の台詞だ」
「台詞……?」
「君、確か言ってたよね? ……親父と会うのはだって」
「それが何? 何の証拠にもなってないわ」

 リリスは余裕綽々と腕を組み、鼻で笑ってみせる。

「自分で作った設定忘れたの? この世界がだっていう」
「…………あ」

 やっとこさ気付いたポンコツ堕天使リリス。
 組まれていた腕はへなへなに解かれ、一瞬にして青ざめるなり、額からは大量の冷や汗が滴り落ちる。

「七歳で売られた僕も、この世界じゃ四十四歳。つまり正確には――だ。君が三十二年ぶりと言ってしまったのは、この世界に順応できてないという何よりの証拠。改変した者にしか間違えようのない事実だ」
「ぐっ……!」
「さあ、もう茶番は終わりだ。白状しなよ。……怒らないから」

 めっちゃ怒ってるやん……。なんか後ろに『ゴゴゴ……』って文字見えるし。

 しかし、おバカなリリスには、それが伝わらないようで……

「いやぁ、なんつーか、そのぉ~……へへっ……やっちった☆」
「執行――【永獄拷子えいごくごうす】」

 ガチャコーン!

「うっそでぇえぇぇええぇえぇぇえすッ‼ ほんとすいやせんしたああぁぁああぁあッッ‼」

 結果、阿鼻叫喚の中、拷問椅子へと拘束されるのであった。
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