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第三章

第106話 ヤっちまったもんはしょうがない。問題はその後どうするかだ③

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「僕たちが……」

 黒幕だと……?

「ああ。お主らは疑似カオスコードが使える。ブリッツが居ない今、お主らが最有力候補と考えるのが自然じゃろう?」

 ソフィアが告げた信じ難い事実は、我々を沈黙させる材料として、充分な効力を発揮していた。当然だ……この世界でカオスコードが使えるのは、もう我々しかいないのだから。そして、やる動機も――

「いや、ちょっと待て。確かに僕たちは疑似カオスコードを使えるけど、世界改変できるほどの魔法は習得していない。仮にできたとしても執行した覚えが……」
「そう。仮にお主らが世界改変級の魔法を習得していたとしても、執行までするとは到底思えない。であれば、『不可抗力にもそうなってしまった』と仮定する他なかろう」

 不可抗力というワードに暫し思考を巡らせると、我々は一つの結論に辿り着く。

「まさか……【六合王】の代償……?」

 【六合王・法界如来りくごうおう・ほっかいにょらい】。『ZERO計画』をめぐってブリッツと喧嘩した際に執行した六合魔術で、。無くはない話だ……

「でも、力は使ってない! あくまで呼び出しただけで……!」

 思わず声を荒げるサブロウに、ソフィアは諭すような口調で語りかける。

「六合王は九つの宇宙を引っ提げ、顕現する神の如き力。呼び出しただけでも絶大な影響を及ぼす可能性がある。おまけにサブは『淵源中毒』に侵された際、魔天籠の時間流を用いてその命を留めた。あの……」

 六合王のマルチバースと魔天籠の時間流……この二つが絡み合ったことで、不可抗力にも今回の件が引き起こされてしまった。……そういうことか?

「あくまで手持ちの情報で一番可能性のある話をしただけじゃ。他に憂慮すべき点があるのなら、そちらを疑った方が良いだろう。それだけ突飛出た話というわけじゃ」

 ソフィアは言い終わるや否や、裏社会の掃討の為と玄関口へ向かう。

「師匠、僕はどうしたら……?」

 サブロウがその背に問いかけるとソフィアは足を止め、

「好きにせい。戻すも戻さんも。だが、よく考えることじゃ。あの馬鹿弟子がおって損することはあっても――得することはないとな」

 振り返ることなく、そう答えた。



 師であるソフィアとの邂逅後、重い足取りで帰路に就くサブロウ。

「………………」

 深い森の中、すっかり日も暮れ、辺りにはどんよりした空気が流れていた。

「………………」

 サブロウもさっきから、この調子。まるで魂が抜けたかのような見事な落ち込みっぷりで……非常に話しかけづらい。

「………………」

 なあ、サブロウ? 元気出せって。生きてればそういうこともあるさ。

「……いや、ないだろ……」

 そもそも我々が疑似カオスコードを生み出したのは、あのブリッツに対抗する為だろう? つまり図らずも今回、目的は達成されたというわけだ。何を落ち込むことがある?

「確かにそうかもしれないけど……僕はこんな終わり方、望んでなかった……。兄貴とはもっとこう、真正面から決着をつけたかったっていうか……」

 真正面からやったって、どうせ勝てないだろう? これでいいんだよ、これで。きっとアイツも、お前にやられて本望さ。

「そうかなぁ……。なんか引っかかるんだよなぁ……」

 どこか煮え切らない様子のサブロウ。しかし、そうこう言ってる内に、気付けばもう我が家の玄関前へと到着していた。そろそろ切り替え時だろう。

 悩むのは結構なことだが、家の中に持ち込むのはオススメしない。お前はもう一人じゃないんだ。温かき家庭ってやつが待ってる。

「温かき家庭ね……」

 そう呟いたサブロウは複雑な心境のまま、我が家へと帰還を果たした。
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