WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

文字の大きさ
上 下
107 / 117
第三章

第106話 ヤっちまったもんはしょうがない。問題はその後どうするかだ③

しおりを挟む
「僕たちが……」

 黒幕だと……?

「ああ。お主らは疑似カオスコードが使える。ブリッツが居ない今、お主らが最有力候補と考えるのが自然じゃろう?」

 ソフィアが告げた信じ難い事実は、我々を沈黙させる材料として、充分な効力を発揮していた。当然だ……この世界でカオスコードが使えるのは、もう我々しかいないのだから。そして、やる動機も――

「いや、ちょっと待て。確かに僕たちは疑似カオスコードを使えるけど、世界改変できるほどの魔法は習得していない。仮にできたとしても執行した覚えが……」
「そう。仮にお主らが世界改変級の魔法を習得していたとしても、執行までするとは到底思えない。であれば、『不可抗力にもそうなってしまった』と仮定する他なかろう」

 不可抗力というワードに暫し思考を巡らせると、我々は一つの結論に辿り着く。

「まさか……【六合王】の代償……?」

 【六合王・法界如来りくごうおう・ほっかいにょらい】。『ZERO計画』をめぐってブリッツと喧嘩した際に執行した六合魔術で、。無くはない話だ……

「でも、力は使ってない! あくまで呼び出しただけで……!」

 思わず声を荒げるサブロウに、ソフィアは諭すような口調で語りかける。

「六合王は九つの宇宙を引っ提げ、顕現する神の如き力。呼び出しただけでも絶大な影響を及ぼす可能性がある。おまけにサブは『淵源中毒』に侵された際、魔天籠の時間流を用いてその命を留めた。あの……」

 六合王のマルチバースと魔天籠の時間流……この二つが絡み合ったことで、不可抗力にも今回の件が引き起こされてしまった。……そういうことか?

「あくまで手持ちの情報で一番可能性のある話をしただけじゃ。他に憂慮すべき点があるのなら、そちらを疑った方が良いだろう。それだけ突飛出た話というわけじゃ」

 ソフィアは言い終わるや否や、裏社会の掃討の為と玄関口へ向かう。

「師匠、僕はどうしたら……?」

 サブロウがその背に問いかけるとソフィアは足を止め、

「好きにせい。戻すも戻さんも。だが、よく考えることじゃ。あの馬鹿弟子がおって損することはあっても――得することはないとな」

 振り返ることなく、そう答えた。



 師であるソフィアとの邂逅後、重い足取りで帰路に就くサブロウ。

「………………」

 深い森の中、すっかり日も暮れ、辺りにはどんよりした空気が流れていた。

「………………」

 サブロウもさっきから、この調子。まるで魂が抜けたかのような見事な落ち込みっぷりで……非常に話しかけづらい。

「………………」

 なあ、サブロウ? 元気出せって。生きてればそういうこともあるさ。

「……いや、ないだろ……」

 そもそも我々が疑似カオスコードを生み出したのは、あのブリッツに対抗する為だろう? つまり図らずも今回、目的は達成されたというわけだ。何を落ち込むことがある?

「確かにそうかもしれないけど……僕はこんな終わり方、望んでなかった……。兄貴とはもっとこう、真正面から決着をつけたかったっていうか……」

 真正面からやったって、どうせ勝てないだろう? これでいいんだよ、これで。きっとアイツも、お前にやられて本望さ。

「そうかなぁ……。なんか引っかかるんだよなぁ……」

 どこか煮え切らない様子のサブロウ。しかし、そうこう言ってる内に、気付けばもう我が家の玄関前へと到着していた。そろそろ切り替え時だろう。

 悩むのは結構なことだが、家の中に持ち込むのはオススメしない。お前はもう一人じゃないんだ。温かき家庭ってやつが待ってる。

「温かき家庭ね……」

 そう呟いたサブロウは複雑な心境のまま、我が家へと帰還を果たした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...