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第三章
第102話 そりゃヤることヤったら、まあ……そうなるわな?③
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さて、道中何かが巻き起こると無駄に警戒していた我々は、難なくブリッツの待ち構えているであろう『裏代興業』のシマへと到着、したのだが……
「なんなんだよ……コレ……?」
そこで待っていたのは『裏代興業』ではなく、真上に魔天籠を構える禍々しくも禍々しい、この世の禍々しさを詰め込んだ禍々しい灰色の居城。これはまるで……
「魔王城……?」
そう。恐らく素人が見ても一番最初に出る感想がソレ。辺りはどんよりしてるし、蝙蝠も舞ってるし、あとなんか全体的に刺々してる。
「今までこんなものなかったのに……どうして……」
「あ! サブロウなのだ! おーい!」
呼びかけられたサブロウが目線を下げると、魔王軍代行稼業有限会社の魔王(社長)である、ロリエル・コンクェスターがトコトコ走ってきた。
「社長……?」
ついていけず、呆けるサブロウ。
その膝にロリエルは思いっ切り抱きつき、キラキラした眼で見上げてくる。
「久しぶりなのだ、サブロウ! 会えて嬉しいのだ!」
「なんでここに……?」
「なんでってそりゃ、ここに魔王城があるからに決まってるのだ。あと今は勇退して、会長になったのだ!」
「えぇ……何それ……? バーバリアン将軍にでも譲ったんですか?」
「そんなわけないのだ! あいつに譲るくらいなら、勇退なんぞせんのだ! ……そうだ! せっかくだから新社長を紹介するのだ! ついてくるのだ!」
そう言うとロリエルは手を取り、サブロウを魔王城へと招き入れた。
◆
ここは元々『裏代興業』のシマ。順当に行けば、新社長は奴しか居ない。
果たして諸悪の根源であるブリッツはいるのか? そんな一縷の望みをロリエルに託し、サブロウは足を踏み入れた、のだが……
「あら。あなたがサブロウって人? はじめまして。私はここの城主である魔王の――葵咲よ。よろしくね」
謁見の間に居たのは先日こちらの世界に来たはずの魔剣士、葵咲。確かにロリエルと共にブリッツのところへ行くと言っていたが……どうなってるんだ?
「君が魔王……なのは別にいいとして、何故わざわざこの場所に魔王城を建てる? 意味が分からない……」
葵咲は足を組み、人差し指で髪をくるくる巻きながらこう答える。
「え? 今更そんなこと聞くの? う~ん……別に大した理由はないけど、強いて言うなら――見せしめかな?」
「見せしめ……? 何に対して?」
「他の裏社会の連中? まあ、私は見たことないから知らないんだけど、ロリちゃんがそうした方がいいって言うから」
首を傾げる葵咲にサブロウは、隣のロリエルへ催促するように視線を移す。
「ブリッツのシマに魔王城を建てれば、裏社会の連中に知らしめることができるのだ。我々、魔王軍が復活したとな?」
「そんなこと兄貴がよく許したな……。って、そうだ! その兄貴は何処に居るんですか? 会いに来たんですけど……」
そのサブロウの言葉に、葵咲とロリエルは見事なキョトン顔を見せる。……『こいつ何言ってんねん』的な具合に。
「サブロウ……知らんのか……? ブリッツのこと……」
ロリエルは悲しい奴を見るような目でサブロウを見つめる。
「な、なんですか、その言い方……? なんでそんな目で見るんです……?」
俯くロリエルを察してか、代わりに葵咲が口を開く。
「サブロウって言ったわよね、あなた? 確かブリッツの弟子だって聞いたけど?」
「ああ……そうだが……」
「本当に何も知らないんだ。ブリッツはね……もう居ないのよ」
『ブリッツが居ない』……サブロウは一瞬何を言ってるのか理解できなかった。だが、一瞬だけだ。すぐに最悪のケースを想定する。その有り得ないケースを……。こういう時、変に冷静だと損した気分になる。……私も含めてな。
「死んだのよ、ブリッツは。――私が殺したの」
そして葵咲はそう軽く、言い放ってみせた。
「なんなんだよ……コレ……?」
そこで待っていたのは『裏代興業』ではなく、真上に魔天籠を構える禍々しくも禍々しい、この世の禍々しさを詰め込んだ禍々しい灰色の居城。これはまるで……
「魔王城……?」
そう。恐らく素人が見ても一番最初に出る感想がソレ。辺りはどんよりしてるし、蝙蝠も舞ってるし、あとなんか全体的に刺々してる。
「今までこんなものなかったのに……どうして……」
「あ! サブロウなのだ! おーい!」
呼びかけられたサブロウが目線を下げると、魔王軍代行稼業有限会社の魔王(社長)である、ロリエル・コンクェスターがトコトコ走ってきた。
「社長……?」
ついていけず、呆けるサブロウ。
その膝にロリエルは思いっ切り抱きつき、キラキラした眼で見上げてくる。
「久しぶりなのだ、サブロウ! 会えて嬉しいのだ!」
「なんでここに……?」
「なんでってそりゃ、ここに魔王城があるからに決まってるのだ。あと今は勇退して、会長になったのだ!」
「えぇ……何それ……? バーバリアン将軍にでも譲ったんですか?」
「そんなわけないのだ! あいつに譲るくらいなら、勇退なんぞせんのだ! ……そうだ! せっかくだから新社長を紹介するのだ! ついてくるのだ!」
そう言うとロリエルは手を取り、サブロウを魔王城へと招き入れた。
◆
ここは元々『裏代興業』のシマ。順当に行けば、新社長は奴しか居ない。
果たして諸悪の根源であるブリッツはいるのか? そんな一縷の望みをロリエルに託し、サブロウは足を踏み入れた、のだが……
「あら。あなたがサブロウって人? はじめまして。私はここの城主である魔王の――葵咲よ。よろしくね」
謁見の間に居たのは先日こちらの世界に来たはずの魔剣士、葵咲。確かにロリエルと共にブリッツのところへ行くと言っていたが……どうなってるんだ?
「君が魔王……なのは別にいいとして、何故わざわざこの場所に魔王城を建てる? 意味が分からない……」
葵咲は足を組み、人差し指で髪をくるくる巻きながらこう答える。
「え? 今更そんなこと聞くの? う~ん……別に大した理由はないけど、強いて言うなら――見せしめかな?」
「見せしめ……? 何に対して?」
「他の裏社会の連中? まあ、私は見たことないから知らないんだけど、ロリちゃんがそうした方がいいって言うから」
首を傾げる葵咲にサブロウは、隣のロリエルへ催促するように視線を移す。
「ブリッツのシマに魔王城を建てれば、裏社会の連中に知らしめることができるのだ。我々、魔王軍が復活したとな?」
「そんなこと兄貴がよく許したな……。って、そうだ! その兄貴は何処に居るんですか? 会いに来たんですけど……」
そのサブロウの言葉に、葵咲とロリエルは見事なキョトン顔を見せる。……『こいつ何言ってんねん』的な具合に。
「サブロウ……知らんのか……? ブリッツのこと……」
ロリエルは悲しい奴を見るような目でサブロウを見つめる。
「な、なんですか、その言い方……? なんでそんな目で見るんです……?」
俯くロリエルを察してか、代わりに葵咲が口を開く。
「サブロウって言ったわよね、あなた? 確かブリッツの弟子だって聞いたけど?」
「ああ……そうだが……」
「本当に何も知らないんだ。ブリッツはね……もう居ないのよ」
『ブリッツが居ない』……サブロウは一瞬何を言ってるのか理解できなかった。だが、一瞬だけだ。すぐに最悪のケースを想定する。その有り得ないケースを……。こういう時、変に冷静だと損した気分になる。……私も含めてな。
「死んだのよ、ブリッツは。――私が殺したの」
そして葵咲はそう軽く、言い放ってみせた。
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