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第三章
第100話 そりゃヤることヤったら、まあ……そうなるわな?①
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「あさだよー! おきておきて!」
早朝――布団に包まるサブロウを一生懸命に揺する小さき手……。
どうせ、なんぞまたリリスが襲撃でもしに来てるんだろうと、呻りながら更に布団に包まるサブロウ。
「おーきてーおーきて! ママにおこられちゃうよ~!」
と、たどたどしく幼さを感じさせる声の主は、揺する力を強くする。
「も~う……毎回毎回、何で君は朝から……って、ママ……?」
惰眠を貪っていたサブロウは、その珍妙なワードに身体を起こす。
すると、そこには――
「あ、やっとおきた! おはよう……パパ!」
サブロウに満開の笑みを見せる一人の少女が立っていた。
年は四~五歳といったところか。純白のワンピースドレスに、所々黒の混じった白のロングヘアー。背には小さい白と黒の翼が生えており、まん丸の蒼い瞳と整った顔立ちは誰かさんを彷彿とさせ――って、パパっ⁉
「パパって……え? 誰? 君……?」
「どうしたのパパ? まだ、ねぼすけさんなの?」
しかし、見知らぬ少女は小首を傾げ、尚もサブロウを父と呼ぶ。
「『N』、早急な解説を要求する……。一体、何が起きてるんだ……?」
いや……私にも分からん。強いて言うなら、お前とリリスがイチャついてたからその~……そういうことなんじゃね?
「だからって、いきなり娘ができるわけないだろ……⁉ よしんば出来たとしても赤ん坊だよ……!」
「だれとおはなししてるの、パパ?」
当然の疑問を呈す少女……というか娘(仮)。傍から見れば謎の行動だわな。
「え? あぁ、えっとぉ……お嬢ちゃん、どこから来たの?」
「どこからぁ? うーんとね……1かいから!」
そう言いながら娘(仮)は、人差し指をピンと立たせる。
「いや、そういうことじゃなくて……。もしかして迷子? お父さんやお母さんは?」
「ん? パパはここにいるよ? ママは1かい!」
娘(仮)は又もや人差し指を楽し気にご主張なさる。
「一階……? ――まさか⁉」
嫌な予感ほど当たってしまうもの。跳ね上がる鼓動と共に寝室を飛び出したサブロウは、学校に遅刻した少女漫画の主人公が如く、どたどたと階段を降りていく。
肩で息をしつつ居間に到達したサブロウ。定まらぬ視線で見つめた先には――
「あら? そんなに慌ててどうしたの――あなた?」
どこか違和感を感じさせるエプロン姿のリリスが立っていた。
「あなた……? 何言ってんの……? っていうか、なんなのコレ? 何かのドッキリ?」
「あらあら、まだ寝坊助さんみたいね。ほら、顔洗って。朝食にしましょ?」
リリスはエプロンを外し、椅子の背もたれに掛けては腰かける。
テーブルの上にはリリスが用意したのだろうか……ブレッドとベーコンサラダ、目玉焼きに色とりどりのフルーツと、見事なザ・朝食が並べられていた。
「ママー、リリンもたべるー!」
すると、娘(仮)もやっとこさ居間に到着。どうやらリリンという名前らしい。
「はいはい、慌てなくても朝食は逃げないわよ~」
リリスはリリンを持ち上げ、子供用の椅子に座らせる。
サブロウはというと、その光景を死んだような目で見つめていた。
……大丈夫か、サブロウ?
「ははっ……大丈夫大丈夫……きっと悪い夢だ……もしくはドッキリ」
サブロウは徐に樽のコックを開き、言われた通り顔を洗う。念入りに。
そののち、エアータオル型の【昇華】で顔を乾かし、悪夢を綺麗さっぱり消し飛ばして、いざご照覧あれぃ!
「どうしたの? はやくだべよ――パパ!」
「さあ、冷めないうちにこっち来て――あなた?」
だが現実は、かくも残酷であった。
妻と娘が一家団欒と手招きする愛しき姿は、誰もが羨む温かき家庭を彷彿とさせたのだ。
普通の暮らし、普通の家庭、普通普通……だが、その普通が一番難しい。それをサブロウは手にした。これには流石のサブロウも、心動かさざるを得ないだろう。
「あばばばばば……」
……良くない方向に。
サブロウは白目をむきながら唐突に外へと飛び出し、
「ちょっと、あなた⁉」
「パパ、どこいくの⁉」
妻と娘の制止を振り切って家の真横に設置してあった井戸の中へと――
バッシャァアアアアアンッッ‼
……飛び込んだ。
早朝――布団に包まるサブロウを一生懸命に揺する小さき手……。
どうせ、なんぞまたリリスが襲撃でもしに来てるんだろうと、呻りながら更に布団に包まるサブロウ。
「おーきてーおーきて! ママにおこられちゃうよ~!」
と、たどたどしく幼さを感じさせる声の主は、揺する力を強くする。
「も~う……毎回毎回、何で君は朝から……って、ママ……?」
惰眠を貪っていたサブロウは、その珍妙なワードに身体を起こす。
すると、そこには――
「あ、やっとおきた! おはよう……パパ!」
サブロウに満開の笑みを見せる一人の少女が立っていた。
年は四~五歳といったところか。純白のワンピースドレスに、所々黒の混じった白のロングヘアー。背には小さい白と黒の翼が生えており、まん丸の蒼い瞳と整った顔立ちは誰かさんを彷彿とさせ――って、パパっ⁉
「パパって……え? 誰? 君……?」
「どうしたのパパ? まだ、ねぼすけさんなの?」
しかし、見知らぬ少女は小首を傾げ、尚もサブロウを父と呼ぶ。
「『N』、早急な解説を要求する……。一体、何が起きてるんだ……?」
いや……私にも分からん。強いて言うなら、お前とリリスがイチャついてたからその~……そういうことなんじゃね?
「だからって、いきなり娘ができるわけないだろ……⁉ よしんば出来たとしても赤ん坊だよ……!」
「だれとおはなししてるの、パパ?」
当然の疑問を呈す少女……というか娘(仮)。傍から見れば謎の行動だわな。
「え? あぁ、えっとぉ……お嬢ちゃん、どこから来たの?」
「どこからぁ? うーんとね……1かいから!」
そう言いながら娘(仮)は、人差し指をピンと立たせる。
「いや、そういうことじゃなくて……。もしかして迷子? お父さんやお母さんは?」
「ん? パパはここにいるよ? ママは1かい!」
娘(仮)は又もや人差し指を楽し気にご主張なさる。
「一階……? ――まさか⁉」
嫌な予感ほど当たってしまうもの。跳ね上がる鼓動と共に寝室を飛び出したサブロウは、学校に遅刻した少女漫画の主人公が如く、どたどたと階段を降りていく。
肩で息をしつつ居間に到達したサブロウ。定まらぬ視線で見つめた先には――
「あら? そんなに慌ててどうしたの――あなた?」
どこか違和感を感じさせるエプロン姿のリリスが立っていた。
「あなた……? 何言ってんの……? っていうか、なんなのコレ? 何かのドッキリ?」
「あらあら、まだ寝坊助さんみたいね。ほら、顔洗って。朝食にしましょ?」
リリスはエプロンを外し、椅子の背もたれに掛けては腰かける。
テーブルの上にはリリスが用意したのだろうか……ブレッドとベーコンサラダ、目玉焼きに色とりどりのフルーツと、見事なザ・朝食が並べられていた。
「ママー、リリンもたべるー!」
すると、娘(仮)もやっとこさ居間に到着。どうやらリリンという名前らしい。
「はいはい、慌てなくても朝食は逃げないわよ~」
リリスはリリンを持ち上げ、子供用の椅子に座らせる。
サブロウはというと、その光景を死んだような目で見つめていた。
……大丈夫か、サブロウ?
「ははっ……大丈夫大丈夫……きっと悪い夢だ……もしくはドッキリ」
サブロウは徐に樽のコックを開き、言われた通り顔を洗う。念入りに。
そののち、エアータオル型の【昇華】で顔を乾かし、悪夢を綺麗さっぱり消し飛ばして、いざご照覧あれぃ!
「どうしたの? はやくだべよ――パパ!」
「さあ、冷めないうちにこっち来て――あなた?」
だが現実は、かくも残酷であった。
妻と娘が一家団欒と手招きする愛しき姿は、誰もが羨む温かき家庭を彷彿とさせたのだ。
普通の暮らし、普通の家庭、普通普通……だが、その普通が一番難しい。それをサブロウは手にした。これには流石のサブロウも、心動かさざるを得ないだろう。
「あばばばばば……」
……良くない方向に。
サブロウは白目をむきながら唐突に外へと飛び出し、
「ちょっと、あなた⁉」
「パパ、どこいくの⁉」
妻と娘の制止を振り切って家の真横に設置してあった井戸の中へと――
バッシャァアアアアアンッッ‼
……飛び込んだ。
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