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第三章

第90話 巷で暗殺者が話題になってるらしいけど、誰も殺してない②

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「そう! あの法では裁けない悪を断罪するダークヒーローこと、『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』よ! さすがにサブロウくんも聞いたことくらいはあるようね?」

 いつもと違い、会話がスムーズに進んでリリスもご満悦。
 しかし、サブロウの方は何故か頭を抱えていらっしゃる。あれあれ? なんでだろうねぇ?

「そりゃ、聞いたことはあるけど……でも、『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』って確か、十年くらい前のその……アレだよね? 何で今さらになって……」
「実は聞くところによると、『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』って代替わりしてるみたいなのよ。初代は誰かれ構わず殺してたらしいけど、二代目は悪人だけ裁いてたりとかね。で、今は誰も殺してないから三代目ってわけ。あ、ちなみにこれもヤスモトさん情報ね」

 まるで五臓六腑が大リバースするかの如き勢いで溜息をつくサブロウ。どうやら、まだ休むわけにはいかなさそう。

「三代目ね……。で、何でいきなりそんな話を? まさか、とっ捕まえろとでも言う気?」
「それはサブロウくんに任せるわ。煮るなり焼くなり――愛を育んだりね!」

 その意味深な一言が出当た辺りで、もうサブロウからは諦めムードが漂っていた。

「愛……とは?」
「実はこれも聞いた話なんだけど、その三代目ってのがどうやら――女の子らしいの! 捨てる神あれば拾う神ありよねー! こうも次から次へと舞い込んでくるんだから、やっぱり主人公の名の下に生まれてるのよ、サブロウくんは!」
「はぁ……そうっすか……」
「というわけで、早速、行っちゃいましょう! あ、【場面転換】~……は一日一回までだから、普通に歩いて行くわよー! 付いて来なさい!」
「めんどくさぁ……」

 そんなこんなでリリス御一行は、『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』と接触する為、セイターンの街へと足を運んだ。……徒歩で。



 セイターンの街――

「あ~あ……気乗りしないなぁ……」
「シャキッとしなさい、サブロウくん。これから『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』と会うのよ? お見合いだと思いなさい、お見合いだと」

 とぼとぼと歩くサブロウの横で、そう発破をかけるリリス。
 セイターンの街は相変わらず賑わっているようで、男女がそこらかしこで盛り合っていた。勇者が街のために頑張っている証拠だな。

「何がお見合いだよ……。第一、相手は暗殺者でしょ? どうやって探すのさ?」
「探す必要なんてないわよ。巷じゃ三代目は、エンカウント率が序盤のスライム並みだって言われてるんだから。なーんもしなくたって、向こうの方から来たぜぬるりとよ!」

 白をツモってみせるリリスに、サブロウは又も大きな溜息をつく。

「要はノープランってことね……。だからって暗殺者ナメすぎでしょ? そんな都合よく出会うわけ――」

「けーっへっへっ! おめえか⁉ 最近、話題になってる暗殺者ってのは⁉」
「おいおい、嘘だろ? こんなちんちくりんの小娘が『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』たぁ、興ざめってなもんだぜ!」
「黙れっ! オレは……オレは『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』だ! 小娘なんかじゃない!」

 ……出会った。

 二人のチンピラに絡まれていたのは紛れもなく『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』……っぽい格好をしていた少女。
 全身黒のアーマー……というよりかは、特撮っぽいレオタードに身を包んでおり、所々スポンジ素材のものを鎧として纏っているようだった。

 顔の上半分には鴉を模したメットを被っており、一見すると性別の判定が困難かに思われるが、なんていうかその……ぴっちぴちなレオタードのせいで、体のラインがハッキリとご主張なさってる。そりゃもう、余裕でバレるだろってくらいに。

 さすがのリリスも違和感を感じ始めたようで……

「あれが『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー』? なんか想像してた感じと違うわね……。もしかして……ガセネタ?」
「今さら気付いたんかい……。さ、もう帰ろうか」

 こうして始まった『鴉羽の暗殺者ナイトウォーカー編』。
 果たしてこの邂逅がサブロウにとって、どんな影響を――って、言ってるそばから帰らないでくれる? 話し終わっちゃうでしょうが。
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