WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

文字の大きさ
上 下
82 / 117
第二章

第81話 師匠と兄弟子と、その弟子と①

しおりを挟む
 さて、宴もたけなわと解散した傭兵たち。
 サブロウも嘗ての盟友たちと挨拶を済ませ、今はブリッツと共にソフィアの居室前へと赴いていた、のだが……

「おい――おい――おい――楽し――そうだった――なあ――サブ?」

 一つ一つの語尾と共にサブロウの頭をポムポム叩くブリッツ。

「あの――兄貴――なんか――怒って――ます?」

 ブリッツはグワシっ! と頭を掴むと、目線を合わせるように7歳の少年へガンを飛ばす。

「別に? ……なんで?」

 ブリッツはサブロウの髪を綺麗に七三に分け、直後――フゥッ‼ と息を吹きかけ、髪を乱れさせる。

「ハァ……兄貴は僕が一位を取ってる姿が見たいんですよね? だったら別に、さっきのは何の問題もないんじゃ――」

 ブリッツは又もやグワシっ! と頭を掴み、大人げなく7歳の少年へガンを飛ばす。

「確かにそうだ……でもなッ! 一位はお前でも殿堂入りは俺なんだよ? 俺があっての、お前! そのことを忘れるな……わかったかッ⁉」
「……ハイハイ」

 めちゃくちゃ根に持ってるとこ悪いが、そろそろ行った方がいいと思うぞ? 向こうはもう、とっくに感づいてるみたいだからな。

「チッ……なら、さっさと済ませるぞ。こんな場所で長居してちゃあ――気分が悪いからなッ‼」

 ブリッツはノックもせず、居室の扉を蹴破るや否や、掴んでいたサブロウを――全力で放り投げた。

「なんでそうなるのぉおおー⁉」

 サブロウ少年は宙を舞った。割かし命の危機を感じていたのか周りがスローモーになり、両サイドに並ぶ驚いたメイドたちの顔が目に焼き付く。

 それらに目を奪われた結果、サブロウ少年は敢え無く最奥のベッドまで飛ばされ、直後――ふわりとした感触に包まれた。

(うぅ……息苦しい……。でも、凄くいい香りが……)

 サブロウは最初、布団かと思ったらしい。でも、すぐに違うと気付いた。何故ならこの感触は、あらゆる赤子が触れるであろう、柔らかさに酷似していたからだ。

「ぷはぁ……! はぁはぁ……」

 サブロウは直ぐにそのから顔を離し、自分を見つめる存在へと視線を合わせる。

「サブ……なのか……?」

 目の前に御座すこの方を何方と心得る。恐れ多くも【常世の居城ブラック・パレス】の城主――ソフィア公にあらせられるぞ!

 デ~ン、デレレ~レ~ン……カンカンカンカンカン……。

「お前はBGMも担当するのか……」

 ごほん……えー、呆れ眼で見つめるブリッツはほっといてね。ようやくその姿をお目見えさせたのは、何を隠そうサブロウの師匠、ソフィアであった。

 見た目は完全に花魁のそれ。孔雀の羽が縫われた真っ赤な着物を、うなじから肩、胸元に掛けて大胆に開く、少々刺激的な着こなし。

 白塗りしていないにもかかわらず、紅の似合う白き肌が印象的で、黒く艶のある長髪を花飾りで結っては側頭部で纏めていた。

「し、師匠……お久しぶりです……」

 それはサブロウでさえも思わず見惚れてしまうほどの美貌で、可愛いか綺麗かで言ったら間違いなく綺麗系だ。特にそのシャープな眼差しが、より顕著にそう思わせた。

「サブ……」

 そう語るソフィアは何かに気付き、徐々に視線を落とす。
 サブロウもそれに釣られ、緩やかに視線を落とすと――己が手が、たわわな胸部を鷲掴みしていることに気付いた。

「――なっ⁉ すみません! 師匠! これはその……事故で……」

 すぐさま手を離すラブコメ主人公サブ。
 対するソフィアはわなわなと紅潮し、周りのメイドたちも頬を染めながら、ドキドキと成り行きを見守っていた。

 さて、この後のラブコメ主人公の流れは大体こう。

 ①『何すんのよ、この変態っ‼」

 ②『キャー! サブロウさんのエッチー!』

 ③『強くなりたくば、喰らえ‼』

 ④『オレにはもう乳揉みそれが……よく分からんのよ……!』

 ⑤『それは おじさんの きんのたま! ゆうこうに かつよう してくれ!』

 さあ、サブロウの明日はどっちだ⁉

「楽しんでんな、お前……」

 呆れ交じりのブリッツを余所に、ソフィアは恍惚な表情を浮かべ、着崩していた着物をはらりと落とした。

「手こずっているようだな、手を貸そう……」

 正解は変態ゲドでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...