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第二章
第80話 前作主人公おじさん、ショタになる④
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【常世の居城】門前へと到着したサブロウとブリッツ。
相変わらず空は暗闇に包まれており、辺りはどんよりとした空気が立ち込めていた。
「また、戻ってきちゃったなぁ……」
居城を見上げながら、億劫そうに呟くサブロウ。
「突っ立ってても始まらねえ。おら、行くぞ」
ブリッツはそう言うと愚痴を零す弟子の頭を軽く叩き、立ち塞がる門番の下へ足を運ぶ。
「オ、オヒサシブリデス……ブリッツサマ……」
筋肉モリモリマッチョマンの門番はサブロウの時とは違い、額に汗を滲ませながら、あからさまに怯えた様子を見せる。
「退け。ババアに用がある」
しかし、ブリッツはそれを優に上回るほどの巨体。
恐らく素人目に見ても、どちらが強いか一目瞭然であろう。
「マスタートノ、アポイントメントハ、キイテオリマセンガ……」
「なんだ? 俺が間違ってるとでも言いたいのか?」
「イ、イエ……ソンナツモリハ……」
しどろもどろで視線を外す憐れな門番。
ブリッツはそんな子犬の肩にポンと手を置く。
「門番ご苦労だったな。下がっていいぞ?」
「ハ、ハイ……アリガトウゴザイマス……」
門番が退くや否や柵がひとりでに開き、ブリッツは【常世の居城】の領地へと足を踏み入れる。
申し訳なさそうにその後へ続くサブロウは、ブリッツへと良心を説く。
「あんまり威圧ばっかしてると友達なくしますよ、兄貴?」
「余計な世話だ。黙って付いて来い」
嫌味を飛ばせどブリッツには届かず。
こいつに何を言っても無駄だろう。最強とは得てして、どこかネジがぶっ飛んでるもの。オーガ然り、どこぞの四代目然りな。
ブリッツは扉を開け、サブロウと共に入城する。
すると、談笑していた傭兵たちは異様な空気を察知し、一斉に立ち上がる。
緊張が走り始める城内……
「フン……」
当のブリッツは満更でもないようで、笑み浮かべながら受付へと歩を進める。
その姿を視線に捉え、警戒しながら武器を構える傭兵たち。
七歳のガキには目も呉れずといった空気だが、一人の少女だけは違ったようだ。
「ハーイ、サブロウ。また会えたね」
そう声をかけてきたのは、うさぎのぬいぐるみを抱きしめているマイだった。
「マイ……僕が分かるの?」
「うん。なんで?」
小首を傾げる可憐な少女。
彼女にとっては当たり前のことゆえ、この反応なのだろう。
すると、周りの傭兵たちの視線が漸くサブロウへと移る。
「え? あれ、サブロウさんなの?」
「まっさか~。どう見ても子供じゃねえか」
「でも、マイちゃんがそう言ってるし……」
それを皮切りに老兵ウィリアムがサブロウの前に腰を落とす。
「本当に……サブロウ殿ですか……?」
「う、うん……色々あって小さい頃に戻っちゃってね……」
「そうだったのですか……。わかり申した! この不肖ウィリアム! 必ずや坊ちゃんを立派に育ててみせましょう!」
ウィリアムは唐突に、孫を溺愛するお爺ちゃんが如く目を煌めかせ、サブロウを抱き上げた。
「はあぁ⁉ いやいやいや! なんでそうなるの⁉ 誰も頼んでっ――」
すると、宙を舞う一つの影が持ち上げられたサブロウを奪取する。
「――なっ⁉ 我が坊ちゃんに何をするカミラ!」
ウィリアムは孫を誘拐したセクシー女スパイのカミラに向け、声を荒げる。
「なーにが坊ちゃんよ。草臥れたお爺ちゃんに育てられちゃ、サブロウが可哀想でしょ? ここはアタシに任せなさい。ちゃーんと淫らに育ててあげるから」
「いやぁ……だからなんで育てるっていう流れにぃ……」
サブロウ少年はカミラに抱き寄せられ、豊満な胸に顔を埋めながら頭を撫でられる。
いいよ~、サブロウ! ラブコメの主人公みたいになってるよ! ヒュゥー!
「Nっ……お前も止めろって……くそッ……スレーイド!」
サブロウがその名を呼ぶと、仮面をつけたピエロ風のスレイドが瞬時に駆け付け、鉤爪を使ってカミラの服を斬り裂く。
「――キャッ⁉ 何すんのよ、スレイド⁉」
全裸となったカミラは思わずサブロウを離し、奪取したスレイドは人差し指についた鉤爪を立て、チッチッチと左右に振る。
「「「「「ウェーイ‼」」」」」
「いいぞー、スレイド!」
「やっぱ、お前はクールな男だぜ!」
己が恥部を隠さんとしゃがみ込むカミラの姿に、男たちのテンションは爆上げ。城内はたちまち笑い声に包まれた。
「はぁ……ありがとう、スレイド。もう下ろしていいよ」
抱きかかえられたサブロウはスレイドを見上げるが……
「………………」
まったくの無反応。
「あれ? 聞いてる? もう下ろしていいって……」
「………………」
「もしかして……キミも育てるとか言いださないよね……?」
そのサブロウの問いにスレイドは、ただ静かに……コクリと頷いた。
お口あんぐりで固まるサブロウ。
ウィリアムとカミラは未だ納得がいかないのかスレイドに詰め寄り、マイはそれを微笑みながら眺めていた。
盛り上がりを見せる【常世の居城】の傭兵たち。
まあ、偶にはこういうのも悪くない。何か忘れているような気もするが……きっと気のせいだろう。
「………………」
相変わらず空は暗闇に包まれており、辺りはどんよりとした空気が立ち込めていた。
「また、戻ってきちゃったなぁ……」
居城を見上げながら、億劫そうに呟くサブロウ。
「突っ立ってても始まらねえ。おら、行くぞ」
ブリッツはそう言うと愚痴を零す弟子の頭を軽く叩き、立ち塞がる門番の下へ足を運ぶ。
「オ、オヒサシブリデス……ブリッツサマ……」
筋肉モリモリマッチョマンの門番はサブロウの時とは違い、額に汗を滲ませながら、あからさまに怯えた様子を見せる。
「退け。ババアに用がある」
しかし、ブリッツはそれを優に上回るほどの巨体。
恐らく素人目に見ても、どちらが強いか一目瞭然であろう。
「マスタートノ、アポイントメントハ、キイテオリマセンガ……」
「なんだ? 俺が間違ってるとでも言いたいのか?」
「イ、イエ……ソンナツモリハ……」
しどろもどろで視線を外す憐れな門番。
ブリッツはそんな子犬の肩にポンと手を置く。
「門番ご苦労だったな。下がっていいぞ?」
「ハ、ハイ……アリガトウゴザイマス……」
門番が退くや否や柵がひとりでに開き、ブリッツは【常世の居城】の領地へと足を踏み入れる。
申し訳なさそうにその後へ続くサブロウは、ブリッツへと良心を説く。
「あんまり威圧ばっかしてると友達なくしますよ、兄貴?」
「余計な世話だ。黙って付いて来い」
嫌味を飛ばせどブリッツには届かず。
こいつに何を言っても無駄だろう。最強とは得てして、どこかネジがぶっ飛んでるもの。オーガ然り、どこぞの四代目然りな。
ブリッツは扉を開け、サブロウと共に入城する。
すると、談笑していた傭兵たちは異様な空気を察知し、一斉に立ち上がる。
緊張が走り始める城内……
「フン……」
当のブリッツは満更でもないようで、笑み浮かべながら受付へと歩を進める。
その姿を視線に捉え、警戒しながら武器を構える傭兵たち。
七歳のガキには目も呉れずといった空気だが、一人の少女だけは違ったようだ。
「ハーイ、サブロウ。また会えたね」
そう声をかけてきたのは、うさぎのぬいぐるみを抱きしめているマイだった。
「マイ……僕が分かるの?」
「うん。なんで?」
小首を傾げる可憐な少女。
彼女にとっては当たり前のことゆえ、この反応なのだろう。
すると、周りの傭兵たちの視線が漸くサブロウへと移る。
「え? あれ、サブロウさんなの?」
「まっさか~。どう見ても子供じゃねえか」
「でも、マイちゃんがそう言ってるし……」
それを皮切りに老兵ウィリアムがサブロウの前に腰を落とす。
「本当に……サブロウ殿ですか……?」
「う、うん……色々あって小さい頃に戻っちゃってね……」
「そうだったのですか……。わかり申した! この不肖ウィリアム! 必ずや坊ちゃんを立派に育ててみせましょう!」
ウィリアムは唐突に、孫を溺愛するお爺ちゃんが如く目を煌めかせ、サブロウを抱き上げた。
「はあぁ⁉ いやいやいや! なんでそうなるの⁉ 誰も頼んでっ――」
すると、宙を舞う一つの影が持ち上げられたサブロウを奪取する。
「――なっ⁉ 我が坊ちゃんに何をするカミラ!」
ウィリアムは孫を誘拐したセクシー女スパイのカミラに向け、声を荒げる。
「なーにが坊ちゃんよ。草臥れたお爺ちゃんに育てられちゃ、サブロウが可哀想でしょ? ここはアタシに任せなさい。ちゃーんと淫らに育ててあげるから」
「いやぁ……だからなんで育てるっていう流れにぃ……」
サブロウ少年はカミラに抱き寄せられ、豊満な胸に顔を埋めながら頭を撫でられる。
いいよ~、サブロウ! ラブコメの主人公みたいになってるよ! ヒュゥー!
「Nっ……お前も止めろって……くそッ……スレーイド!」
サブロウがその名を呼ぶと、仮面をつけたピエロ風のスレイドが瞬時に駆け付け、鉤爪を使ってカミラの服を斬り裂く。
「――キャッ⁉ 何すんのよ、スレイド⁉」
全裸となったカミラは思わずサブロウを離し、奪取したスレイドは人差し指についた鉤爪を立て、チッチッチと左右に振る。
「「「「「ウェーイ‼」」」」」
「いいぞー、スレイド!」
「やっぱ、お前はクールな男だぜ!」
己が恥部を隠さんとしゃがみ込むカミラの姿に、男たちのテンションは爆上げ。城内はたちまち笑い声に包まれた。
「はぁ……ありがとう、スレイド。もう下ろしていいよ」
抱きかかえられたサブロウはスレイドを見上げるが……
「………………」
まったくの無反応。
「あれ? 聞いてる? もう下ろしていいって……」
「………………」
「もしかして……キミも育てるとか言いださないよね……?」
そのサブロウの問いにスレイドは、ただ静かに……コクリと頷いた。
お口あんぐりで固まるサブロウ。
ウィリアムとカミラは未だ納得がいかないのかスレイドに詰め寄り、マイはそれを微笑みながら眺めていた。
盛り上がりを見せる【常世の居城】の傭兵たち。
まあ、偶にはこういうのも悪くない。何か忘れているような気もするが……きっと気のせいだろう。
「………………」
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