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第二章
第79話 前作主人公おじさん、ショタになる③
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「申し訳ないんですが兄貴……他の手はないんでしょうか?」
「はぁ?」
わざわざ代替案を出してくれたのに、却下されてしまう哀れなブリッツくん。
普通、こんな口を利けば余裕で抹殺されること請け合いだが、そこは一番弟子とあってか割かし甘めの判定である。
「いやぁ、実はかくかくしかじかで……」
「かくかくしかじかで伝わる訳ねえだろ。ちゃんと説明しろ」
「……N、頼む」
私をかくかくしかじかに利用するな……と言いたいところだが、話が進まないので仕方なくソフィアとの確執を掻い摘んで説明してやった。
「……要は合わす顔がねえってことか。ったく、お前って奴は俺だけじゃなく、ババアにまで喧嘩売りやがって……」
「面目ないです……」
ブリッツは呆れ交じりに溜息をつくと、心底面倒そうに口を開く。
「しょうがねえなぁ……。じゃあ、俺が一緒に行ってやるよ」
「え、兄貴がっ⁉」
「なんだよ、その反応は? 俺と行くのが嫌だとでも言うのか?」
「いや、だって兄貴……師匠とあんまり仲良くないですよね? いいんですか?」
「俺がいいっつったらいいんだよ! さっさと行くぞ!」
まどろっこしいのが嫌いなブリッツは土足で窓から侵入、一号くんのベッドを問答無用で踏み荒らし、サブロウの襟首を掴んでは【昇華】の前に立つ。
そうなれば当然、一号くんもプンプンだ。
「ちょっと、ボスッ‼ 結局、入ってるじゃないですか⁉ 入るんならドアから入ってくださいよ、ドアからっ‼」
「俺の通り道にドアを設けないのが悪い。何か間違ったこと言ってるか?」
「だから、間違ってるって言ってるでしょ、さっきからッ‼ それにサブロウおじさんはボクが一生育てるって決めたんですから‼ 勝手に連れてかないでくださいよ‼」
一号くん。君も大分、間違ってるぞ。
「お前はまだ魔天籠ダッシュが残ってんだろうが。サボってんじゃねえよ」
「はいぃ⁉ 【罪背磔刑】まで喰らって、まだやらなきゃいけないんですか⁉ それはあんまりだぁ!」
「お前が走る分は三億だった。【罪背磔刑】と走った分を差し引いて残り五千。だが、一ヶ月サブロウにつきっきりでサボった分の利子が上乗せられて――今、三億だ」
お前は闇金か。碌な死に方しないぞ。
「三億ぅ⁉ いやいや、それはおかし――」
「待った、一号くん!」
その反論を既のところで止めたのは、フル〇ン状態で宙ぶらりんになっていたサブロウだった。
「止めないでサブロウおじさん! ボクたちの生活が脅かされようとしてるんだよ⁉」
「僕たちにしないでくれる? それより、これ以上は逆らわない方がいい。兄貴の前では、時に抑えることも必要だよ? どんなに理不尽でもね……」
経験者は語るというやつだろうか。
サブロウは、あの辛き修行の日々を思い出し、目が死んでいた。
一号くんもサブロウの言葉ならと、なんとか憤慨する気持ちを抑え、フン! とブリッツから視線を逸らす。
「それでいい。俺に言うこと聞かせたいなら、俺より強くなれ。サブみたいにな」
ブリッツはそう言うと、花開いた【昇華】にサブロウを放り投げ、自分もその巨体をすっぽり入れる。
「イーッ!」
少しばかりの抵抗と悔しそうに歯を向ける一号くん。
――ニョキっ。
直後、ブリッツが見計らったように顔だけ出し、意地の悪い微笑みを浮かべる。
あ、悪い。私がナレーションした所為だ。
「なっ……⁉ ボ、ボス……」
「………………」
「な、何か……?」
ブリッツの瞼と口角が徐々に上がっていくと、キラリと光る歯がお目見えし、
「……四億な?」
無慈悲な審判が下される。
「ああああぁぁぁあぁぁああああああぁぁぁああああぁああッッ‼」
頭を抱えながら崩れ落ちる一号くん。
そんな姿にブリッツは満足気な笑みを浮かべたのち、【常世の居城】へと跳んだのであった。
「はぁ?」
わざわざ代替案を出してくれたのに、却下されてしまう哀れなブリッツくん。
普通、こんな口を利けば余裕で抹殺されること請け合いだが、そこは一番弟子とあってか割かし甘めの判定である。
「いやぁ、実はかくかくしかじかで……」
「かくかくしかじかで伝わる訳ねえだろ。ちゃんと説明しろ」
「……N、頼む」
私をかくかくしかじかに利用するな……と言いたいところだが、話が進まないので仕方なくソフィアとの確執を掻い摘んで説明してやった。
「……要は合わす顔がねえってことか。ったく、お前って奴は俺だけじゃなく、ババアにまで喧嘩売りやがって……」
「面目ないです……」
ブリッツは呆れ交じりに溜息をつくと、心底面倒そうに口を開く。
「しょうがねえなぁ……。じゃあ、俺が一緒に行ってやるよ」
「え、兄貴がっ⁉」
「なんだよ、その反応は? 俺と行くのが嫌だとでも言うのか?」
「いや、だって兄貴……師匠とあんまり仲良くないですよね? いいんですか?」
「俺がいいっつったらいいんだよ! さっさと行くぞ!」
まどろっこしいのが嫌いなブリッツは土足で窓から侵入、一号くんのベッドを問答無用で踏み荒らし、サブロウの襟首を掴んでは【昇華】の前に立つ。
そうなれば当然、一号くんもプンプンだ。
「ちょっと、ボスッ‼ 結局、入ってるじゃないですか⁉ 入るんならドアから入ってくださいよ、ドアからっ‼」
「俺の通り道にドアを設けないのが悪い。何か間違ったこと言ってるか?」
「だから、間違ってるって言ってるでしょ、さっきからッ‼ それにサブロウおじさんはボクが一生育てるって決めたんですから‼ 勝手に連れてかないでくださいよ‼」
一号くん。君も大分、間違ってるぞ。
「お前はまだ魔天籠ダッシュが残ってんだろうが。サボってんじゃねえよ」
「はいぃ⁉ 【罪背磔刑】まで喰らって、まだやらなきゃいけないんですか⁉ それはあんまりだぁ!」
「お前が走る分は三億だった。【罪背磔刑】と走った分を差し引いて残り五千。だが、一ヶ月サブロウにつきっきりでサボった分の利子が上乗せられて――今、三億だ」
お前は闇金か。碌な死に方しないぞ。
「三億ぅ⁉ いやいや、それはおかし――」
「待った、一号くん!」
その反論を既のところで止めたのは、フル〇ン状態で宙ぶらりんになっていたサブロウだった。
「止めないでサブロウおじさん! ボクたちの生活が脅かされようとしてるんだよ⁉」
「僕たちにしないでくれる? それより、これ以上は逆らわない方がいい。兄貴の前では、時に抑えることも必要だよ? どんなに理不尽でもね……」
経験者は語るというやつだろうか。
サブロウは、あの辛き修行の日々を思い出し、目が死んでいた。
一号くんもサブロウの言葉ならと、なんとか憤慨する気持ちを抑え、フン! とブリッツから視線を逸らす。
「それでいい。俺に言うこと聞かせたいなら、俺より強くなれ。サブみたいにな」
ブリッツはそう言うと、花開いた【昇華】にサブロウを放り投げ、自分もその巨体をすっぽり入れる。
「イーッ!」
少しばかりの抵抗と悔しそうに歯を向ける一号くん。
――ニョキっ。
直後、ブリッツが見計らったように顔だけ出し、意地の悪い微笑みを浮かべる。
あ、悪い。私がナレーションした所為だ。
「なっ……⁉ ボ、ボス……」
「………………」
「な、何か……?」
ブリッツの瞼と口角が徐々に上がっていくと、キラリと光る歯がお目見えし、
「……四億な?」
無慈悲な審判が下される。
「ああああぁぁぁあぁぁああああああぁぁぁああああぁああッッ‼」
頭を抱えながら崩れ落ちる一号くん。
そんな姿にブリッツは満足気な笑みを浮かべたのち、【常世の居城】へと跳んだのであった。
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