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第二章
第78話 前作主人公おじさん、ショタになる②
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「そんなことよりサブロウおじさん、お腹空いたでしょ? 結局、お弁当作ってあげられなかったし、代わりに朝ごはん作ってあげるよ!」
一号くんはベッドを降りると、ルンルン気分でエプロンをつけ、キッチンへと向かう。
「そんなことよりで済まさないでくれる……? そっち方面、信用ないのよ、キミ……」
そう一号くんの背に力なく語りかけるサブロウ。
【虚蝉】を執行していないのにもかかわらず、抜け殻のようになってしまったサブロウは、取りあえずシャツをたくし上げ、死んだ目で己が息子を確認する。
「ヨシ……トリアエズ、パンツハ、ハイテナイナ……」
自棄になるな、サブロウ。見識が広がったと考えよう。
「そういった角度のフォローは要らない……」
まあまあ、そう言うな。ほら、見てみろ。一号くんの後ろ姿を。
「朝ごはん~♪ 朝ごはん~♪」
ざっくりと開いた背から見えるセクシーな肩甲骨、エプロンをつけたことでよりキュッとしまった腰、白く透き通る嫋やかな足……。どうだ? 見事なものだろう?
「君は何でいつも一号くんをエロく描写するんだ……?」
そりゃあ、するだろ。いいか、サブロウ? 可愛い女の子ってのは数いれど、可愛い男の娘はそうはいない。それだけ希少ということさ。だからこそ我々は彼……いや、彼女たちの存在を大事に大事に――
パリィィイイイインッ‼
突如、室内に響き渡る窓を叩き割る音。
ビックリした一号くんは鍋をひっくり返し、悲痛な叫びと沸騰する音がこだまする。
こんな無粋なことする奴なんぞ、一人しか心当たりがない。そう。ブリッツであった。
「……朝からうるせえなぁ、おい。こっちまで聞こえてきてんぞ?」
いや、絶対お前の方がうるさいだろ。心臓ないのにビクッとしたわ。
「近くにいた、お前が悪い」
その凶暴性は、まさしく王者の如し。
当然、そんな奴には我らが一号くんが黙ってないぞ。よーし、言ってやれ。
「ちょっとボス‼ なんで毎回、窓叩き割るんですかっ! ドアから入ってきてって、いつも言ってますよねっ⁉」
「入る必要がないから叩き割ったんだ。それとも俺の行動が間違ってるとでも言いたいのか?」
「間違ってるでしょ、普通にっ⁉ せっかく、シャロレー牛の赤ワイン煮込み作ろうとしたのにっ‼」
いや、朝から凝りすぎだろ。フレンチシェフか君は。
やいやいと言い争うブリッツと一号くん。
そんな中でサブロウ少年は、子供らしからぬ神妙な面持ちでブリッツの名を呼ぶ。
「兄貴……」
「おう、サブ。やっと起きたようだな」
「はい。あの……すみませんでした。色々、ご迷惑をおかけして……」
そう言って頭を下げるサブロウ。
サラサラの髪が重力の影響をよく受けること。
「まったくだぜ、この馬鹿弟子が。今ある命に感謝することだな」
「それはもう、本当に兄貴には感謝してもしきれないんですが……」
「ですが?」
まるで『次に何を言うか分かり切ってます』と言わんばかりの顔で見下ろすブリッツ。
「僕はその……元の状態に戻れるんでしょうか?」
若干ピリつく室内……
一号くんもそれを感じ取ったのか、視線が二人の間を彷徨う。
「俺はたった今、言ったはずだぜ。今ある命に感謝することだってな。なのにそれ以上を望もうなんざ、おこがましいにも程がある。そうは思わねえか、サブ?」
「わかってます。おこがましいのも承知しています。でも、このまま戻ったら、あの子たちに要らない重荷を背負わせてしまうかもしれない。それだけはどうしても避けたいんです。あの子たちには何の憂いもなく冒険に出てほしい……。だから僕は、何事も無かったかのように戻らないといけないんです」
弟子から浴びせられる真っ直ぐな眼差し。
さすがのブリッツも、その熱き想いを前に飲まざるを得なかったようで……
「いや、ようで……じゃねえんだよ。俺はまだ何も言ってねえぞ。勝手に解釈するな」
いいじゃないか。どうせ飲むつもりなんだろ? このこの~!
「ウザっ……変な絡み方すんじゃねえよ、ったく……。ハァ……しょうがねえなぁ……わかったよ!」
「兄貴……!」
サブロウ少年の表情がパッと華やぐ。あらやだ……ちょっと可愛いじゃない。
「ただし、やるのは俺じゃねえ。この手の繊細な事案は魔天籠に次ぐ圧倒的な知識量が必要だ。となれば……打って付けの奴が居るだろう?」
「それって、まさか……?」
「そう。俺らの師であり、【常世の居城】の城主……ババアだ!」
いや、そこだけはソフィアって言ってやれよ。なんだよ、『ババアだ!』って……
一号くんはベッドを降りると、ルンルン気分でエプロンをつけ、キッチンへと向かう。
「そんなことよりで済まさないでくれる……? そっち方面、信用ないのよ、キミ……」
そう一号くんの背に力なく語りかけるサブロウ。
【虚蝉】を執行していないのにもかかわらず、抜け殻のようになってしまったサブロウは、取りあえずシャツをたくし上げ、死んだ目で己が息子を確認する。
「ヨシ……トリアエズ、パンツハ、ハイテナイナ……」
自棄になるな、サブロウ。見識が広がったと考えよう。
「そういった角度のフォローは要らない……」
まあまあ、そう言うな。ほら、見てみろ。一号くんの後ろ姿を。
「朝ごはん~♪ 朝ごはん~♪」
ざっくりと開いた背から見えるセクシーな肩甲骨、エプロンをつけたことでよりキュッとしまった腰、白く透き通る嫋やかな足……。どうだ? 見事なものだろう?
「君は何でいつも一号くんをエロく描写するんだ……?」
そりゃあ、するだろ。いいか、サブロウ? 可愛い女の子ってのは数いれど、可愛い男の娘はそうはいない。それだけ希少ということさ。だからこそ我々は彼……いや、彼女たちの存在を大事に大事に――
パリィィイイイインッ‼
突如、室内に響き渡る窓を叩き割る音。
ビックリした一号くんは鍋をひっくり返し、悲痛な叫びと沸騰する音がこだまする。
こんな無粋なことする奴なんぞ、一人しか心当たりがない。そう。ブリッツであった。
「……朝からうるせえなぁ、おい。こっちまで聞こえてきてんぞ?」
いや、絶対お前の方がうるさいだろ。心臓ないのにビクッとしたわ。
「近くにいた、お前が悪い」
その凶暴性は、まさしく王者の如し。
当然、そんな奴には我らが一号くんが黙ってないぞ。よーし、言ってやれ。
「ちょっとボス‼ なんで毎回、窓叩き割るんですかっ! ドアから入ってきてって、いつも言ってますよねっ⁉」
「入る必要がないから叩き割ったんだ。それとも俺の行動が間違ってるとでも言いたいのか?」
「間違ってるでしょ、普通にっ⁉ せっかく、シャロレー牛の赤ワイン煮込み作ろうとしたのにっ‼」
いや、朝から凝りすぎだろ。フレンチシェフか君は。
やいやいと言い争うブリッツと一号くん。
そんな中でサブロウ少年は、子供らしからぬ神妙な面持ちでブリッツの名を呼ぶ。
「兄貴……」
「おう、サブ。やっと起きたようだな」
「はい。あの……すみませんでした。色々、ご迷惑をおかけして……」
そう言って頭を下げるサブロウ。
サラサラの髪が重力の影響をよく受けること。
「まったくだぜ、この馬鹿弟子が。今ある命に感謝することだな」
「それはもう、本当に兄貴には感謝してもしきれないんですが……」
「ですが?」
まるで『次に何を言うか分かり切ってます』と言わんばかりの顔で見下ろすブリッツ。
「僕はその……元の状態に戻れるんでしょうか?」
若干ピリつく室内……
一号くんもそれを感じ取ったのか、視線が二人の間を彷徨う。
「俺はたった今、言ったはずだぜ。今ある命に感謝することだってな。なのにそれ以上を望もうなんざ、おこがましいにも程がある。そうは思わねえか、サブ?」
「わかってます。おこがましいのも承知しています。でも、このまま戻ったら、あの子たちに要らない重荷を背負わせてしまうかもしれない。それだけはどうしても避けたいんです。あの子たちには何の憂いもなく冒険に出てほしい……。だから僕は、何事も無かったかのように戻らないといけないんです」
弟子から浴びせられる真っ直ぐな眼差し。
さすがのブリッツも、その熱き想いを前に飲まざるを得なかったようで……
「いや、ようで……じゃねえんだよ。俺はまだ何も言ってねえぞ。勝手に解釈するな」
いいじゃないか。どうせ飲むつもりなんだろ? このこの~!
「ウザっ……変な絡み方すんじゃねえよ、ったく……。ハァ……しょうがねえなぁ……わかったよ!」
「兄貴……!」
サブロウ少年の表情がパッと華やぐ。あらやだ……ちょっと可愛いじゃない。
「ただし、やるのは俺じゃねえ。この手の繊細な事案は魔天籠に次ぐ圧倒的な知識量が必要だ。となれば……打って付けの奴が居るだろう?」
「それって、まさか……?」
「そう。俺らの師であり、【常世の居城】の城主……ババアだ!」
いや、そこだけはソフィアって言ってやれよ。なんだよ、『ババアだ!』って……
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