WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

文字の大きさ
上 下
77 / 117
第二章

第76話 前作主人公おじさん、さすがに死ぬ②

しおりを挟む
 ――サブロウ! サブロウ! くそッ……! ブリッツ! このままじゃ、サブロウが……!――

 ――わかってる! ったく、馬鹿弟子が! 手間かけさせやがって……!――

 ――……どうだ? 助かりそうか?――

 ――チッ……思ったより淵源中毒の進行が酷い……。強制シャットダウンが始まってる……――

 ――じゃあ、サブロウは……⁉――

  ――死なせはしない……! 魔天籠へ運ぶぞ! 話はそれからだ!――

 ――あ……ああ!――



 サブロウ……サブロウ……

「ん……うぅ……N……?」

 起きろ、サブロウ……もう充分、寝たはずだ……

「うぅ……ここは……?」

 やっとこさ開眼へと至るサブロウ。
 視界には見覚えのない木造の天井が広がり、自分がベッドに寝ていたことに気付くと、次いで花の香りが鼻腔をくすぐる。

「知らない天上だ……」

 おめでとう、サブロウ。新世紀へようこそ。

「僕は……いったい……」

 そう言いながらサブロウは、辺りを見回す。

 室内は木造で、間取りもサブロウの家によく似ている。せいぜい違うところがあるとすれば、ワンルームかつ家具が少々変わっている事と、生けてある【昇華サブリメーション】の数が少ないことくらいだ。

 小綺麗でどこか女子を感じさせる室内に、違和感を覚え始めるサブロウ。
 ふと眠気眼のまま隣へ視線を移すと――

「スゥ……スゥ……スゥ……」

 そこには可愛らしい寝息を立てている一号くんの姿があった。
 布団から露わになる華奢な肩、そこから伸びる白く細い手が、サブロウの胸元に置かれている。

「え? 何? なんなの、この状況? なんで一号くんが横に……」

 ゆうべはお楽しみでしたね。

「いや……僕、お姫様を宿屋に連れ込んだ憶えないんだけど……。っていうか、大丈夫だよね? 何もされてないよね?」

 ……いや、わからん。

「な、なんだよ……わからないって……」

 一応、邪魔しちゃ悪いかと思って……見てない。

「何、変な気回してんだよ、気持ち悪い! と、取りあえず起きないと……!」

 サブロウは己が手を動かし、一号くんの手を退かそうと試みる……が、何故か妙に重いことに気付く。

 寝すぎていたため、身体が鈍っていた……勿論それも間違いではないだろう。
 だが、それよりも確たる違和感が、サブロウの目には映っていた。

「あれ……なんで僕の手……こんなにんだ……?」

 徐々に緊迫してくる鼓動。
 サブロウはすぐさま両手を使い、一号くんの手を退かす。

「――うわっ⁉」

 しかし、退かした反動からか、サブロウは勢いよく顔面からベッド横に落ちてしまう。

「イテテテテ……って、ん? な、なんだコレ……?」

 起き上がりつつ痛みの走る顔を摩っていると、更なる違和感が妙な感触として手の平に伝ってくる。

「なんで僕の顔……こんなプニプニなんだ……?」

 さすがにサブロウも四十手前。ようやく美容の一つにでも目覚めたか……と言えばそうでもない。信じられるのは素肌だけではないのだ。例えばそう……そこにある姿見とか。

 サブロウはドタドタと視界の隅に入った姿見へ走り出す。
 その時点で恐らく気付いていたことだろう。……自分の背が明らかにことに。

 だが、サブロウはその足を止めなかった。
 せめて自分の目で見るまでは信じない……いや、信じられないと言った方が正しいか。

 さあ、といったところで、そろそろご対面の時間。
 サブロウは姿見の前に立つと、己が姿を漸く確認する。

「な……なんで僕……七歳に戻ってるの……?」

 おめでとう、サブロウ。ニューヒーローの誕生だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...