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第二章
第75話 前作主人公おじさん、さすがに死ぬ①
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身体に巻き付いていた紫文字はサブロウの周囲を渦巻くように転輪。
それが大きく広がるにつれ、後方の大地からは巨大な如来像が木々を薙ぎ倒しつつ顕現し、宙へ浮かんでいく。
座禅を組み、法界定印を結びながら燃え盛る二重円光を背に宿す神々しき姿。
背後には巨大な球体型の宇宙と、それを取り囲むように配置された、小さな八つの宇宙を引き連れており、森羅万象が如き並々ならぬ存在感を世界に知らしめていた。
「わざわざ喧嘩吹っ掛けてくるから、どんな隠し玉持ってるかと思ったら……まさか、『カオスコード』とはなぁ、サブ?」
ブリッツは天を見上げながら、内から溢れる喜びを面持ちに宿している。
「【六合王・法界如来】……。煩悩に塗れし者を瞑想状態に移行させ、心を静め、無に誘う六合魔術。この力は、あらゆるマルチバースに適応される。この意味、分かりますよね……兄貴?」
「この世界のみならず、別世界の思考まで作り変えようってんだろ? ったく……そんなことしたら、どうなるか分かってんのか?」
その反応に笑みを浮かべるサブロウ。
だが、かなり無理をしている様子だ。目が据わり始めている。
「皆、無になり……争いが無くなって……平和になる……。天下泰平の到来ですね……」
「ハァ……あのなぁ、サブ。人ってのは争うことで進化してきたんだ。それをお前は、ただの弟子の為に今、奪おうとしてんだぞ? そりゃあ、つまり世界を滅ぼすのと同じこ――ッ⁉」
そこまで言って、ブリッツは漸く気付いた。
結果はどうあれ、図らずも自分の思い通りに事が進んでしまっていたことに。
「そう……僕は兄貴の言う通り、世界を蹂躙してるだけなんですよ。これでみんな戦わずに済む……。兄貴も引退ですね?」
「違う! 俺が言ってるのは、そうじゃなくてだな……!」
「なら、認めてください。『ZERO計画』を……――ゔッ⁉」
しかし、サブロウの祈りを捧げる手は震え、体表が所々、紫に変色し始めていく。
サブロウっ! 『淵源中毒』だ! これ以上はマズイ! 死ぬぞっ⁉
「Nの言う通りだ、サブ! お前の命を懸けるほどの価値が、その弟子たちにあるとは思えん! 今すぐやめろ!」
烈風舞う中、ブリッツも些か焦燥感を見せながら立ち上がる。
「価値があるとかないとか、そんなんじゃないです。ただ……」
「ただ……?」
サブロウは襲い来る中毒症状に顔を歪ませつつ一拍置き、
「僕まで『子』を見捨てちゃ……お終いでしょうよ?」
自嘲気味に、そう告げた。
「サブ……」
サブロウ……
嘗て親に売られたからこそ出る強き言葉に、思わず立ちつくすブリッツ。
今ならこの私にも分かる。こいつの頑固な信念に綻びが生じているのを。
「ヴg――ギfsギmhビpアrグゥj――ガgアdkッッ⁉」
だが、それを待つよりも先に、サブロウの身体からブロックノイズが走り始める。
目の焦点は合わず、動作がカクつき、紫斑した皮膚が剥がれては宙に浮いていく。
ブリッツ‼ もう限界だッ‼
「わかった、わかったッ! 俺の負けだ! だから、もうやめろ! サブ!」
「ZZZ――ZERO計――けけけ――KEイ画――を――認メ――マスカ――?」
「ッ…………!」
ブリッツッ‼
「ッ……わかったよ! 他次元まで人質に取られちゃあ、しょうがねえ。認めてやるよ……『ZERO計画』を」
「Aリ――ガgガ――トウゴZAI――m――ス――……」
サブロウは最後にフッと笑みを零す。
天を支配していた如来像は光の柱となって空に消え、雨を降らせていた雲を退かすように掻き消していく。
一面の青空、太陽、そして虹をバックにサブロウは、立ったまま電源が落ちたかのように――沈黙した。
それが大きく広がるにつれ、後方の大地からは巨大な如来像が木々を薙ぎ倒しつつ顕現し、宙へ浮かんでいく。
座禅を組み、法界定印を結びながら燃え盛る二重円光を背に宿す神々しき姿。
背後には巨大な球体型の宇宙と、それを取り囲むように配置された、小さな八つの宇宙を引き連れており、森羅万象が如き並々ならぬ存在感を世界に知らしめていた。
「わざわざ喧嘩吹っ掛けてくるから、どんな隠し玉持ってるかと思ったら……まさか、『カオスコード』とはなぁ、サブ?」
ブリッツは天を見上げながら、内から溢れる喜びを面持ちに宿している。
「【六合王・法界如来】……。煩悩に塗れし者を瞑想状態に移行させ、心を静め、無に誘う六合魔術。この力は、あらゆるマルチバースに適応される。この意味、分かりますよね……兄貴?」
「この世界のみならず、別世界の思考まで作り変えようってんだろ? ったく……そんなことしたら、どうなるか分かってんのか?」
その反応に笑みを浮かべるサブロウ。
だが、かなり無理をしている様子だ。目が据わり始めている。
「皆、無になり……争いが無くなって……平和になる……。天下泰平の到来ですね……」
「ハァ……あのなぁ、サブ。人ってのは争うことで進化してきたんだ。それをお前は、ただの弟子の為に今、奪おうとしてんだぞ? そりゃあ、つまり世界を滅ぼすのと同じこ――ッ⁉」
そこまで言って、ブリッツは漸く気付いた。
結果はどうあれ、図らずも自分の思い通りに事が進んでしまっていたことに。
「そう……僕は兄貴の言う通り、世界を蹂躙してるだけなんですよ。これでみんな戦わずに済む……。兄貴も引退ですね?」
「違う! 俺が言ってるのは、そうじゃなくてだな……!」
「なら、認めてください。『ZERO計画』を……――ゔッ⁉」
しかし、サブロウの祈りを捧げる手は震え、体表が所々、紫に変色し始めていく。
サブロウっ! 『淵源中毒』だ! これ以上はマズイ! 死ぬぞっ⁉
「Nの言う通りだ、サブ! お前の命を懸けるほどの価値が、その弟子たちにあるとは思えん! 今すぐやめろ!」
烈風舞う中、ブリッツも些か焦燥感を見せながら立ち上がる。
「価値があるとかないとか、そんなんじゃないです。ただ……」
「ただ……?」
サブロウは襲い来る中毒症状に顔を歪ませつつ一拍置き、
「僕まで『子』を見捨てちゃ……お終いでしょうよ?」
自嘲気味に、そう告げた。
「サブ……」
サブロウ……
嘗て親に売られたからこそ出る強き言葉に、思わず立ちつくすブリッツ。
今ならこの私にも分かる。こいつの頑固な信念に綻びが生じているのを。
「ヴg――ギfsギmhビpアrグゥj――ガgアdkッッ⁉」
だが、それを待つよりも先に、サブロウの身体からブロックノイズが走り始める。
目の焦点は合わず、動作がカクつき、紫斑した皮膚が剥がれては宙に浮いていく。
ブリッツ‼ もう限界だッ‼
「わかった、わかったッ! 俺の負けだ! だから、もうやめろ! サブ!」
「ZZZ――ZERO計――けけけ――KEイ画――を――認メ――マスカ――?」
「ッ…………!」
ブリッツッ‼
「ッ……わかったよ! 他次元まで人質に取られちゃあ、しょうがねえ。認めてやるよ……『ZERO計画』を」
「Aリ――ガgガ――トウゴZAI――m――ス――……」
サブロウは最後にフッと笑みを零す。
天を支配していた如来像は光の柱となって空に消え、雨を降らせていた雲を退かすように掻き消していく。
一面の青空、太陽、そして虹をバックにサブロウは、立ったまま電源が落ちたかのように――沈黙した。
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