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第二章

第66話 前作主人公おじさん、めっちゃ頑張る①

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 さて、サブロウから連絡が入ったので、嫌々ながらも戻ってきた私。随分、早いじゃないかとツッコんでやろうと思っていたのだが……

「やあ、N……久しぶり……」

 今のサブロウには口が裂けても、そんなことは言えなかった。

 癖っ毛のある短髪はどこぞのキングオブデュエリストの如く伸びきっており、無精髭だった口元も美髯公とまでは言わないが、将来的に赤兎馬に乗ってても何らおかしくないポテンシャルを秘めていた。

 あの……大丈夫か? サブロウ……?

「……大丈夫そうに見える?」

 いや、今にもライディングデュエルをアクセラレーションしそうな勢いだ。乗ってるのは馬だけど……。あれからどれくらい経った?

「半年……くらいかな?」

 半年っ⁉ 一瞬、離れてただけだぞ⁉

「え、そうなの? どうも時間の流れが一定じゃなさそうだね……。ちなみに途中で誕生日を迎えて四十歳になったんだけど、これはカウントした方がいいのかな?」

 そんな悲しいこと聞かないでくれ……。なら尚更、早く済まそう。向こうも修行パートに入ったから見に行きたいんだ。

「行くだけ無駄さ。修行パートなんて大抵どこも面白くないんだから」

 おっさんが一人で選別作業してる光景よりマシだろ。

「一人じゃない。ここからは二人だ」

 ……え?

「選別はもう終わった。あとは最後の工程まで突っ走るだけ。だから半分、力貸せよ……相棒?」

 あの……相棒って言えば済むと思ってるでしょ? 違うからね? 免罪符じゃないからね?

「アクセスコード006の権限を執行。外界との接続を遮断」

《承認完了。外界との接続を遮断いたします。以降、同一のアクセスコード、又は代行者権限二議席以上により、解除コードを承認いたします。ご了承ください》

 おおおおおいッッ‼ 何、勝手に閉めてんのッ⁉ これじゃあ、私が出られないじゃないかッ⁉ 嫌だあああああああッッ‼ 出してえええええええッッ‼

「さ、もうひと踏ん張りだ……」



 あれから、どれくらいの時間が経っただろうか……

 正面に拡大表示されたホログラムを、おっさん二人で睨めっこしては、その都度話し合いを設けて、また眺める。 こんな光景を永遠に垂れ流しても無駄に発狂ゲージが溜まるだけなので、一部だけ会話を抜粋しよう。

「次、魔術No.3029――【ティッシュ・クラフト】。ティッシュが尽きた瞬間に執行すると、収まっていた対象に元々の枚数分だけ、ティッシュを複製できる魔術だ。これはレベル0でもいいよね?」

 あぁ……まあ、いいんじゃない……

「じゃあ、次……魔術No.3030――【リモート・コントロール】。探してたリモコンが見つからないときに執行すると、生体電流を利用してテレビのチャンネルを変えることができる魔術だ。これもレベル0でいいよね?」

 うん……いいよ……

「OK。次は魔術No.3031――【リターン・オブ・ティッシュ】。ティッシュを取り出す際、最初の一枚目が――」

 いや、一生終わんないわああああああああああッッ‼

「おいおい、どうした急に?」

 急にじゃないわッ‼ もう二千代あたりから、要らない魔術ばっかだろうがッ‼ 何だよ、ティッシュの魔術って⁉ リモコン挟んでまで来る必要ないだろッ‼ 被ってんだよ、能力がッ‼

「いやいや、被ってないよ。【リターン・オブ・ティッシュ】は、最初の一枚目が二枚出ちゃった時に綺麗に戻せるっていう――」

 要らない要らない! 絶対、要らないって‼ こんなことしてるから半年もかかるんだろうがッ‼

「しょうがないだろ? 妥協するわけにはいかないんだから……。それに【ティッシュ・クラフト】なんて結構便利でしょ? ほら? ティッシュってその~……無くなっても、それメインで取りに行くほどのものじゃないじゃん? なんかのついでに取りに行こうっつって結局忘れちゃう、みたいなさ? これがあったら、その心配もいらない! 環境問題にも配慮されている素晴らしい魔法さ!」

 いや、確かに分からんでもないけど! でも、やっぱり要らないって‼ そんぐらい自分でやれよ! 人間なんだからさあッ‼

「でも、こういう汎用魔術の方が、意外とお金稼げたりするんだよねー」

 え……そうなの?

「うん。【ティッシュ・クラフト】作った人なんて、多分もう億くらい稼いでるんじゃないかな?」

 マジでか……。ってことは、新たにレベル0を作った私たちにも⁉

「いや、それは普通に著作権とかあるから……」

 え? じゃあ……一銭も?

「うん。入らない」

 嫌だあああああああッッ‼ 出してえええええええッッ‼
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