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第二章
第65話 現主人公少女、メイドに調教される②
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「良いお返事です。では、これからお嬢様方には私と随時、手合わせをしていただきます」
そう言うとメイド一号は、己が胸に手を当て、綺麗なお辞儀をしてみせる。
対して三人は暫し固まり、その真意を問わんと明芽が真っ先に口を開く。
「手合わせ? まず魔法を覚えたりするんじゃ……」
タメ口に対してメイド一号は、少々ばかりの抵抗と再び咳払いをし、ツッコミもせず淡々と述べ始める。
「ええ。ですから随時と仰いました。どうせ魔法を覚えるにしても『基本タスク』を埋めなければなりませんので、私はそのお手伝いをさせていただきます」
基本タスクとは――
先日、サブロウが『人の指紋と同じで請け負うタスクと習得難度は千差万別』と述べていたが、実はその中には必ずと言っていいほど『一定の戦闘経験を得よ』という項目がある。それが基本タスクだ。
要は、どんな勇者であろうと魔法を覚えるためには、スライムと戦って伸し上がれということなのだろう。まあ、今回の相手はスライムじゃなく、ガチの魔王軍幹部レベルなのは内緒だがな。解説終了――
「というわけで、明芽お嬢様とハルフリーダお嬢様には、サブロウ様から託されたこの魔導書をお渡しいたします」
メイド一号に手渡された魔導書に、明芽は「これは……?」と問う。
「明芽お嬢様には『召喚魔術』が記された魔導書を。ハルフリーダお嬢様には『付与魔術』が記された魔導書をお渡しします」
「付与魔術……ですか?」
意外な魔術を指定され、ハルフリーダは魔導書越しにメイド一号を見つめる。
「はい。サブロウ様曰く、ハルフリーダお嬢様は回復魔術が得意なタイプだと仰っていました。ですが、『供応魔術』を既にお持ちのようですので、そちらに新たな魔術を付与して利用した方が戦略の幅が広がると考え、こちらの魔導書をお選びになったそうです」
「これが私が覚えるべき力……!」
己が進むべき道を示され、喜びに打ち震えるハルフリーダ。
「えっと……エミィはどうすれば……?」
そんな中で一人、置いてけぼりを喰らっていたエミリア。
居た堪れない気持ちのまま立ち上がると、メイド一号へ助言を求める。
「エミリアお嬢様は魔法が使えないとのことなので、特別メニューの【黙令眼】コースがご用意されています」
「【黙令眼】……って何?」
「己が目を定められし方向、且つ順番に、そして一定の速度以上で動かすことによって、魔天籠への申請と魔術の執行を省略できる技です。聞くところによると、エミリアお嬢様は大変目が宜しいとか。習得できれば例えレベル0であっても、充分な戦力となりうるでしょう」
エミリアが己の指し示された道をポカンと聞いていると……
「あ! そういえば師匠がハルちゃんのお義姉さんと一緒に消えた時、申請や執行をしてなかったよね? きっとその【黙令眼】っていうのを使ったんだよ! 凄いよ、エミィちゃん! 師匠と同じ技を覚えられるなんて!」
明芽はまるで自分のことのように喜び、
「確か私たちの中でエミィ様だけが、お師匠様の目が高速で動いていたことに気付いておられました。まさに天賦の才……。さすがです!」
ハルフリーダも自慢の友達と鼻高々にしていた。
(そっか……エミィにもできることがあるんだ……!)
エミリアは見つめていた手の平を握り締め、口元に自信に満ちた笑みを宿らせる。
「エミリアお嬢様は特別コースでお相手を。残りのお二方は魔術のインストールをメインに、基本タスクが埋まっていなければ随時お相手いたします。ちなみにこの空間内では死はおろか、傷を負うこともありませんのでご安心ください」
説明を終えたメイド一号は軽く頭を下げ、
「では、質問がなければ始めさせていただきます。予め言っておきますが……私の調教は、結構厳しいですよ?」
Sっ気のある微笑を浮かべつつ、その顔を上げた。
ピ――ピピピ――――――
と、せっかく盛り上がってきたところで、魔天籠を介して通信が入ってきてしまう。
『N、ダブルチェックの時間だ。戻ってきてくれ』
え? あ、すいませ~ん……なんか混線してるみたいで……
『来い。早く』
……はい。
そう言うとメイド一号は、己が胸に手を当て、綺麗なお辞儀をしてみせる。
対して三人は暫し固まり、その真意を問わんと明芽が真っ先に口を開く。
「手合わせ? まず魔法を覚えたりするんじゃ……」
タメ口に対してメイド一号は、少々ばかりの抵抗と再び咳払いをし、ツッコミもせず淡々と述べ始める。
「ええ。ですから随時と仰いました。どうせ魔法を覚えるにしても『基本タスク』を埋めなければなりませんので、私はそのお手伝いをさせていただきます」
基本タスクとは――
先日、サブロウが『人の指紋と同じで請け負うタスクと習得難度は千差万別』と述べていたが、実はその中には必ずと言っていいほど『一定の戦闘経験を得よ』という項目がある。それが基本タスクだ。
要は、どんな勇者であろうと魔法を覚えるためには、スライムと戦って伸し上がれということなのだろう。まあ、今回の相手はスライムじゃなく、ガチの魔王軍幹部レベルなのは内緒だがな。解説終了――
「というわけで、明芽お嬢様とハルフリーダお嬢様には、サブロウ様から託されたこの魔導書をお渡しいたします」
メイド一号に手渡された魔導書に、明芽は「これは……?」と問う。
「明芽お嬢様には『召喚魔術』が記された魔導書を。ハルフリーダお嬢様には『付与魔術』が記された魔導書をお渡しします」
「付与魔術……ですか?」
意外な魔術を指定され、ハルフリーダは魔導書越しにメイド一号を見つめる。
「はい。サブロウ様曰く、ハルフリーダお嬢様は回復魔術が得意なタイプだと仰っていました。ですが、『供応魔術』を既にお持ちのようですので、そちらに新たな魔術を付与して利用した方が戦略の幅が広がると考え、こちらの魔導書をお選びになったそうです」
「これが私が覚えるべき力……!」
己が進むべき道を示され、喜びに打ち震えるハルフリーダ。
「えっと……エミィはどうすれば……?」
そんな中で一人、置いてけぼりを喰らっていたエミリア。
居た堪れない気持ちのまま立ち上がると、メイド一号へ助言を求める。
「エミリアお嬢様は魔法が使えないとのことなので、特別メニューの【黙令眼】コースがご用意されています」
「【黙令眼】……って何?」
「己が目を定められし方向、且つ順番に、そして一定の速度以上で動かすことによって、魔天籠への申請と魔術の執行を省略できる技です。聞くところによると、エミリアお嬢様は大変目が宜しいとか。習得できれば例えレベル0であっても、充分な戦力となりうるでしょう」
エミリアが己の指し示された道をポカンと聞いていると……
「あ! そういえば師匠がハルちゃんのお義姉さんと一緒に消えた時、申請や執行をしてなかったよね? きっとその【黙令眼】っていうのを使ったんだよ! 凄いよ、エミィちゃん! 師匠と同じ技を覚えられるなんて!」
明芽はまるで自分のことのように喜び、
「確か私たちの中でエミィ様だけが、お師匠様の目が高速で動いていたことに気付いておられました。まさに天賦の才……。さすがです!」
ハルフリーダも自慢の友達と鼻高々にしていた。
(そっか……エミィにもできることがあるんだ……!)
エミリアは見つめていた手の平を握り締め、口元に自信に満ちた笑みを宿らせる。
「エミリアお嬢様は特別コースでお相手を。残りのお二方は魔術のインストールをメインに、基本タスクが埋まっていなければ随時お相手いたします。ちなみにこの空間内では死はおろか、傷を負うこともありませんのでご安心ください」
説明を終えたメイド一号は軽く頭を下げ、
「では、質問がなければ始めさせていただきます。予め言っておきますが……私の調教は、結構厳しいですよ?」
Sっ気のある微笑を浮かべつつ、その顔を上げた。
ピ――ピピピ――――――
と、せっかく盛り上がってきたところで、魔天籠を介して通信が入ってきてしまう。
『N、ダブルチェックの時間だ。戻ってきてくれ』
え? あ、すいませ~ん……なんか混線してるみたいで……
『来い。早く』
……はい。
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