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第二章
第64話 現主人公少女、メイドに調教される①
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さて、ダブルチェックまで時間があるので、再び勇者チームの下へ戻ってきた私。一応言っておくが、サボりたいから逃げてきたとかではない。……決して。
「あれ……ここは……?」
そう言ったのは明芽。
何故か三人共、キョロキョロと辺りを見回している。
確か明芽たちも逃げるようにサブロウ宅へ入室したはず。しかし、その場所は昨日見た部屋ではなく、箱型の空間が広がる一面真っ白な光景であった。
そう。ここは御存じ、【至純の演舞場】。
つい先日、サブロウとレベッカが決闘した場所であり、実戦型の戦闘訓練が行える施設だった。
「お待ちしておりました、お嬢様方。どうぞこちらへ」
部屋の中央には礼儀正しく頭を下げる褐色のメイドが一人。
『TBA』は促されるまま、そう語るメイドの下へ足を運んでいく。
「アンタがあの男の代わり?」
エミリアが三人を代表してそう問うと、メイドは「あの男……?」と柔和だった口元に怒りを宿す。
しかし、それは一瞬のこと。
すぐに笑みを取り戻すと、メイドは顔を上げて自己紹介へと移る。
「私は【常世の居城】率いるソフィア様のメイドが一人、メイド一号と申します。今回、サブロウ様のご用命に従い、お嬢様方を――『調教』しに参りました」
メイドからは到底出てこないであろうワードに、当然三人は「「「調教⁉」」」と一手に聞き返す。
「あ、こちらのお話ですので、お気になさらず。おほほほほ……」
メイド一号は口元を手で隠し、わざとらしく誤魔化している。
まあ大方、サブロウから初めて頼み事されたとウキウキして来たら、小娘たちの御守で内心ピクついてるといったところであろう。サブロウはそういうところ、気ぃ遣わないからな。
「さて、お三方とも揃ったことですし、まずはお嬢様方の魔力保有量を教えていただけますか?」
話を切り替えるメイド一号に三人は顔を見合わせたのち、
「え~っと~……128です……」
「152です……」
「……5」
明芽、ハルフリーダ、エミリアの順で渋々答える。
「ありがとうございます。この時点でお嬢様方の負けが、八割方確定いたしました。残念! お帰りください♪」
まったく残念がってる素振りを見せず、笑顔で退出を願うメイド一号。
当然、明芽は納得いかず、異議申立てを行う。
「え⁉ 負けが確定したってどういうことですか、メイちゃん⁉」
「さらっとメイちゃんと呼ぶのはおやめください」
急にあだ名で呼ばれ、真顔で戸惑うメイド一号。
「ここで帰っては修業が……せめて理由をお聞かせください、メイちゃん様!」
「距離の詰め方がエグぅございますね、お嬢様方は……」
ハルフリーダも反論の手を緩めず、メイド一号に詰め寄る。
「ハハハ……きっとエミィのせいね……。だってエミィ5だもん……ハハ……」
「と思ったら、こちらは凄い勢いで落ち込んでいらっしゃる……。なんか、ごめんなさい……」
三角座りで落ち込むエミリアに、メイド一号も流石に帰れとは言えず、コホンと咳払いしつつ理由を語る。
「お嬢様方は昨日、サブロウ様から教わったはずです。魔力保有量はプライバシーと」
「あ、そういえば……」
明芽は瞳を右往左往に迷わせつつ、その場面を思い出す。
「よろしいですか、お嬢様方? まず何より覚えることは相手が誰であろうと、魔力保有量を悟らせてはならないということです。何故なら魔力保有量とは、魔術師としての力量を否応なく露わにしてしまうものなのですから」
諭すように問いかけるメイド一号の話を、三人は真剣な眼差しで聞き続ける。
「勿論それが全てではありません。ですが、上級魔術師ともなると相手の魔力保有量と魔術タイプさえ分かれば、あと何回その魔術が執行できて、いつ沈黙するかを瞬時に計算するなど容易なこと。つまり、魔力保有量を知られる――それ即ち手の内を明かすことと同義なのです。お分かりいただけましたでしょうか?」
解説が終わると三人は顔を見合わせたのち、
「「「はい!」」」
と真っ直ぐな想いを師へと向けた。
「あれ……ここは……?」
そう言ったのは明芽。
何故か三人共、キョロキョロと辺りを見回している。
確か明芽たちも逃げるようにサブロウ宅へ入室したはず。しかし、その場所は昨日見た部屋ではなく、箱型の空間が広がる一面真っ白な光景であった。
そう。ここは御存じ、【至純の演舞場】。
つい先日、サブロウとレベッカが決闘した場所であり、実戦型の戦闘訓練が行える施設だった。
「お待ちしておりました、お嬢様方。どうぞこちらへ」
部屋の中央には礼儀正しく頭を下げる褐色のメイドが一人。
『TBA』は促されるまま、そう語るメイドの下へ足を運んでいく。
「アンタがあの男の代わり?」
エミリアが三人を代表してそう問うと、メイドは「あの男……?」と柔和だった口元に怒りを宿す。
しかし、それは一瞬のこと。
すぐに笑みを取り戻すと、メイドは顔を上げて自己紹介へと移る。
「私は【常世の居城】率いるソフィア様のメイドが一人、メイド一号と申します。今回、サブロウ様のご用命に従い、お嬢様方を――『調教』しに参りました」
メイドからは到底出てこないであろうワードに、当然三人は「「「調教⁉」」」と一手に聞き返す。
「あ、こちらのお話ですので、お気になさらず。おほほほほ……」
メイド一号は口元を手で隠し、わざとらしく誤魔化している。
まあ大方、サブロウから初めて頼み事されたとウキウキして来たら、小娘たちの御守で内心ピクついてるといったところであろう。サブロウはそういうところ、気ぃ遣わないからな。
「さて、お三方とも揃ったことですし、まずはお嬢様方の魔力保有量を教えていただけますか?」
話を切り替えるメイド一号に三人は顔を見合わせたのち、
「え~っと~……128です……」
「152です……」
「……5」
明芽、ハルフリーダ、エミリアの順で渋々答える。
「ありがとうございます。この時点でお嬢様方の負けが、八割方確定いたしました。残念! お帰りください♪」
まったく残念がってる素振りを見せず、笑顔で退出を願うメイド一号。
当然、明芽は納得いかず、異議申立てを行う。
「え⁉ 負けが確定したってどういうことですか、メイちゃん⁉」
「さらっとメイちゃんと呼ぶのはおやめください」
急にあだ名で呼ばれ、真顔で戸惑うメイド一号。
「ここで帰っては修業が……せめて理由をお聞かせください、メイちゃん様!」
「距離の詰め方がエグぅございますね、お嬢様方は……」
ハルフリーダも反論の手を緩めず、メイド一号に詰め寄る。
「ハハハ……きっとエミィのせいね……。だってエミィ5だもん……ハハ……」
「と思ったら、こちらは凄い勢いで落ち込んでいらっしゃる……。なんか、ごめんなさい……」
三角座りで落ち込むエミリアに、メイド一号も流石に帰れとは言えず、コホンと咳払いしつつ理由を語る。
「お嬢様方は昨日、サブロウ様から教わったはずです。魔力保有量はプライバシーと」
「あ、そういえば……」
明芽は瞳を右往左往に迷わせつつ、その場面を思い出す。
「よろしいですか、お嬢様方? まず何より覚えることは相手が誰であろうと、魔力保有量を悟らせてはならないということです。何故なら魔力保有量とは、魔術師としての力量を否応なく露わにしてしまうものなのですから」
諭すように問いかけるメイド一号の話を、三人は真剣な眼差しで聞き続ける。
「勿論それが全てではありません。ですが、上級魔術師ともなると相手の魔力保有量と魔術タイプさえ分かれば、あと何回その魔術が執行できて、いつ沈黙するかを瞬時に計算するなど容易なこと。つまり、魔力保有量を知られる――それ即ち手の内を明かすことと同義なのです。お分かりいただけましたでしょうか?」
解説が終わると三人は顔を見合わせたのち、
「「「はい!」」」
と真っ直ぐな想いを師へと向けた。
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