WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第二章

第62話 前作主人公おじさん、ちょっと頑張ってみる④

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 次の日――

 『TBA』トリプルガールズ・ビー・アンビシャスは指示通り、昨日と同じ時間にサブロウ宅へと赴いていた。
 今日も今日とて教えを請う為、三人は石畳を歩いていると、隣の畑にしゃがみ込む一人の影が目に入る。

「あ! 師匠! おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」

 気付いた明芽はいの一番に駆け寄り、元気よく頭を下げる。
 しかし、畑仕事に勤しんでいたのはサブロウではなく――

「だーれが師匠よ! こんな可愛い私と、あんなおっさんを見間違えるんじゃないわよ! ったく!」

 農作業用のオーバーオールを着た若干キレ気味のリリスだった。

「あ、ごめんなさい……。同じ格好してたから、てっきり師匠かと……」
「ふん! サブロウくんなら、とっくの昔に魔天籠に行ったわよ。『ZERO計画』実現のために暫く籠ると言い残してね」

 吐き捨てるように語るリリスに、エミリアの眉間が皺ばむ。

「魔天籠に行ったって……エミィたちの修行はどうするのよ?」
「なんか代わりの子が来てたわよ~。その子に教えてもらえば?」

 リリスはあしらったつもりで家の方を指差すが、礼儀が身体に染みついているハルフリーダには届かない。

「ご丁寧に教えていただき感謝いたします。リリス様には、いつもお世話になってばかり……。いつか腰を据えて、お話したいものです」
「へえ~、そんなに腰据えたいなら今する? 畑仕事も一緒に」

 リリスが嫌味ったらしく提案すると――

「よーし! 修行頑張るぞー!」

 明芽は両手を掲げ、

「ふん! 腕が鳴るわね!」

 エミリアは肩をぶん回し、

「無駄話をしてる暇はありません! 行きましょう!」

 ハルフリーダは一切振り返らず、三人揃ってそそくさとサブロウ宅へと消えていった。

「無駄話って……社交辞令なら最初っから――言うなぁあああああああ‼」

 さて、リリスのシャウトも堪能したことだし、そろそろ向こうの様子でも見に行ってみるとしますか。



「また、戻ってきちゃったなぁ……」

 さて、こちらはこちらで天高く浮かぶ魔天籠を眼前に捉えているサブロウ。
 相変わらずブリッツのシマだということで、気乗りしていないことが表情から窺える。

「向こうはどうだった?」

 ん? あぁ、ちゃんと来てたよ。リリスも嫌々ながら畑に向き合ってた。

「そっか……じゃ、僕も行くとするかな」

 手足を柔軟するサブロウが踏み締めるこの場所……ここは前回来た巨大な花びらの上ではなく、ジャングル生い茂る地上であった。

 魔天籠までの距離は、およそ一万メートルほど。
 そんな天空に浮かぶ球体を見上げながら、サブロウは何故か身を屈め、の構えを取る。

 いわゆるこれは儀式のようなもの。魔天籠に到達する為には、その者が持つの力でなければならない。それがブリッツの教えだ。

「そんじゃ、行ってきまああああああぁぁぁぁ――」

 地面を蹴ったサブロウは大空へと飛び立つ。
 辺りの木々は跳躍した風圧により、ドミノ倒しが如く反り返り、数多の深緑の葉が宙へと舞い上がっていた。

 天を真っ直ぐ翔けていったサブロウは意外や意外。ギリギリで魔天籠外縁部の手摺を掴んでは、片手の力のみでバルコニーへと乗り上げた。

「あっぶなぁ~……大分なまってるな、こりゃ。ギリギリだったよ……」

 いや、充分すごいけどな。お前もいいおっさんになってしまったってことか。

「もう僕らの時代じゃないのかもね……。ま、ちょうどいいか」

 サブロウがノスタルジックに決め込んでいると、その若き世代筆頭の……男? が走ってくる。

「ハァ――ハァ――あれっ――サブロウおじさんっ⁉ なんで、ここに……?」

 現れたのは魔天籠ダッシュ中だった執事一号くん。
 ずっと走ってた彼は急な来客に足を止め、恥ずかし気に汗を拭っていた。その仕草が妙に艶っぽく、そして……ちょっとエロかった。

「その説明要るか?」

 呆れたサブロウが小声でツッコんでいると、勘違いした一号くんが更に問いかけてくる。

「もしかして……ボクに会いに――」
「違うよ」
「否定速いね……。じゃあ、何しに?」

 一号くんはしょんぼりしつつ、若干距離を離す。
 恐らく汗の臭いを嗅がれたくないのだろう。聞きしに勝る女子力よ。

「あぁ……ちょっと兄貴と――喧嘩しにね?」
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