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第二章
第59話 前作主人公おじさん、ちょっと頑張ってみる①
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エミリアが粗方落ち着いたところで、二人はサブロウハウスへと帰還。
しかし、扉の前まで来たところでエミリアは立ち往生してしまう。
「戻りづらいかい?」
と、サブロウが問う。
「うん……ちょっと……」
まだサブロウは少しの時間しか接してないが、エミリアが意地っ張りであることをもう理解していた。なので……
「フッ、執行――【天理眼・投影】」
【黙令眼】を用いて瞳を金色に輝かせると、扉の前で手を水平になぞり、家の中の様子をエミリアに透かして見せた。
『いやぁ~、エミィちゃん遅いなぁ~。ま、まあ、絶対戻ってくるだろうけどねっ! それよりも勉強だよ、勉強ぉ……!』
そう言いつつも明芽は家の中をソワソワ。
『明芽様、それではお勉強が捗りませんよ? エミィ様の意を汲む為にも落ち着きませんと』
そう言いつつもハルフリーダは目がギンギラギン。
『いやいや……ハルちゃんこそ、なんだか目がさりげないことになってるよ? どうしたのそれ?』
『あぁ、これですか? これは私の魔法、【滅我邪気】によるものです。これを飲めば眠気スッキリ! たちまち集中力の鬼になれますわ!』
ハルフリーダは、また謎の瓶……というか、何処かで見たことのあるよーな栄養ドリンクを所持していた。
『う~ん、だからって飲みすぎは良くないと思うよ? もう五本目だし……。本当はハルちゃん、心配なんじゃないの~?』
『あらあら、そういう明芽様こそ先程からソワソワなさって……。本当は追いかけたかったんじゃありませんか?』
『………………』
『………………』
お互い、無理くり作った笑顔で暫し見つめ合っていると、徐々にその仮面が剥がれていき……
『どどど、どうしようっ⁉ やっぱり追いかけた方がよかったかな⁉ いや、今からでも追いかけるべき⁉ 冬の戦士、追いかけるみたいに!』
明芽はキッチンから勝手に鍋の蓋を拝借し、アメリカのケツが如く盾にしてみせ、
『おおお、落ち着いてください明芽様っ――ゴクゴク! エミィ様は必ず――ゴクゴク! 帰ってきますから――ぷはぁ~!』
ハルフリーダもテンパっているのか、【滅我邪気】の六本目を飲み干し、目を真っ赤にしていた。
「ふん……ばか……」
その光景を見たエミリアは、喜びの通う口元を必死に押さえる。
もうその横顔に迷いはなく、自ら扉を開けて中へと入場を果たしていた。
「あ……エミィちゃん……」
「エミィ様……」
気付いた明芽とハルフリーダは、もはや取り繕う余裕もなく、魔導書を手放す。
「ごめん……ちょっとトイレ行ってた……」
エミリアは十八番でもある、腕組みからの顔プイッ。今はこれが精一杯。
(言い訳するにしても女の子が外にトイレ行ってたは……どうなんだろう?)
と、サブロウは思ったが口には出さなかった。出したらその時点でまた、事案発生だからだ。
「うわぁぁああぁん、エミィちゃぁぁああぁんっ‼」
「エミィしゃまぁああぁっ‼」
明芽とハルフリーダは我慢していた想いがはち切れ、泣き、叫び、そして――帰ってきたエミリアへと抱きついた。
「ちょ、ちょっと二人とも……!」
エミリアは、それはそれは真っ赤に顔を火照らせ、
「よがっだぁぁああぁ、エビィちゃん無事でぇぇええぇ……!」
「心配じだのですよぉぉおおぉお、エビィ様ぁああぁあ……!」
明芽とハルフリーダは体裁など気にせず、鼻水をやっぱりターザンさせていた。
「ごめん……ごめんってば……」
エミリアは困り顔で、抱きつく二人の頭を撫でている。
まさに大団円。この展開に行きつくことができたのは、先ほどサブロウが教えていた『プロセス』があっての物種だろう。
ぶっちゃけ二人が行っても結果は変わらなかった。だが、ひとたび離れたことで生まれる絆は、より強固なものとなって青春の一ページへと刻まれる。それこそがサブロウの狙いだった。
(青春か……。ま、僕には縁遠いものだけど、守るくらいのことはできる……かな? そうと決まれば、頓挫していた『ZERO計画』の方を押し進めるしかなさそうだね)
サブロウは新たにできた弟子たちを見ながら、そう心に誓った。
しかし、扉の前まで来たところでエミリアは立ち往生してしまう。
「戻りづらいかい?」
と、サブロウが問う。
「うん……ちょっと……」
まだサブロウは少しの時間しか接してないが、エミリアが意地っ張りであることをもう理解していた。なので……
「フッ、執行――【天理眼・投影】」
【黙令眼】を用いて瞳を金色に輝かせると、扉の前で手を水平になぞり、家の中の様子をエミリアに透かして見せた。
『いやぁ~、エミィちゃん遅いなぁ~。ま、まあ、絶対戻ってくるだろうけどねっ! それよりも勉強だよ、勉強ぉ……!』
そう言いつつも明芽は家の中をソワソワ。
『明芽様、それではお勉強が捗りませんよ? エミィ様の意を汲む為にも落ち着きませんと』
そう言いつつもハルフリーダは目がギンギラギン。
『いやいや……ハルちゃんこそ、なんだか目がさりげないことになってるよ? どうしたのそれ?』
『あぁ、これですか? これは私の魔法、【滅我邪気】によるものです。これを飲めば眠気スッキリ! たちまち集中力の鬼になれますわ!』
ハルフリーダは、また謎の瓶……というか、何処かで見たことのあるよーな栄養ドリンクを所持していた。
『う~ん、だからって飲みすぎは良くないと思うよ? もう五本目だし……。本当はハルちゃん、心配なんじゃないの~?』
『あらあら、そういう明芽様こそ先程からソワソワなさって……。本当は追いかけたかったんじゃありませんか?』
『………………』
『………………』
お互い、無理くり作った笑顔で暫し見つめ合っていると、徐々にその仮面が剥がれていき……
『どどど、どうしようっ⁉ やっぱり追いかけた方がよかったかな⁉ いや、今からでも追いかけるべき⁉ 冬の戦士、追いかけるみたいに!』
明芽はキッチンから勝手に鍋の蓋を拝借し、アメリカのケツが如く盾にしてみせ、
『おおお、落ち着いてください明芽様っ――ゴクゴク! エミィ様は必ず――ゴクゴク! 帰ってきますから――ぷはぁ~!』
ハルフリーダもテンパっているのか、【滅我邪気】の六本目を飲み干し、目を真っ赤にしていた。
「ふん……ばか……」
その光景を見たエミリアは、喜びの通う口元を必死に押さえる。
もうその横顔に迷いはなく、自ら扉を開けて中へと入場を果たしていた。
「あ……エミィちゃん……」
「エミィ様……」
気付いた明芽とハルフリーダは、もはや取り繕う余裕もなく、魔導書を手放す。
「ごめん……ちょっとトイレ行ってた……」
エミリアは十八番でもある、腕組みからの顔プイッ。今はこれが精一杯。
(言い訳するにしても女の子が外にトイレ行ってたは……どうなんだろう?)
と、サブロウは思ったが口には出さなかった。出したらその時点でまた、事案発生だからだ。
「うわぁぁああぁん、エミィちゃぁぁああぁんっ‼」
「エミィしゃまぁああぁっ‼」
明芽とハルフリーダは我慢していた想いがはち切れ、泣き、叫び、そして――帰ってきたエミリアへと抱きついた。
「ちょ、ちょっと二人とも……!」
エミリアは、それはそれは真っ赤に顔を火照らせ、
「よがっだぁぁああぁ、エビィちゃん無事でぇぇええぇ……!」
「心配じだのですよぉぉおおぉお、エビィ様ぁああぁあ……!」
明芽とハルフリーダは体裁など気にせず、鼻水をやっぱりターザンさせていた。
「ごめん……ごめんってば……」
エミリアは困り顔で、抱きつく二人の頭を撫でている。
まさに大団円。この展開に行きつくことができたのは、先ほどサブロウが教えていた『プロセス』があっての物種だろう。
ぶっちゃけ二人が行っても結果は変わらなかった。だが、ひとたび離れたことで生まれる絆は、より強固なものとなって青春の一ページへと刻まれる。それこそがサブロウの狙いだった。
(青春か……。ま、僕には縁遠いものだけど、守るくらいのことはできる……かな? そうと決まれば、頓挫していた『ZERO計画』の方を押し進めるしかなさそうだね)
サブロウは新たにできた弟子たちを見ながら、そう心に誓った。
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