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第一章
第54話 今日も魔王様(社長)は現実逃避に励む②
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魔王軍直轄地、東部エリア――
オンボロのプレハブ小屋が建ち並ぶ荒れ果てた領地。
その最奥にある一際大きい魔王城(プレハブ)の一室には、魔王軍代行稼業有限会社の魔王(社長)こと、ロリエル・コンクェスターが座していた。
「で? どうだったのだ、バードマン参謀?」
ロリエルが語りかけたのは机を挟んで跪く、鳥人型の魔物ことバードマン参謀。
前回、裏カジノ設営の件で出張していた為、その報告を兼ねた会議が行われていた。
「はい。ロリエル社長が作られた事業計画書を元に先方と話し合った結果、『こんなう〇こみたいな事業計画書で裏カジノ設営とか片腹痛いわ。魔王軍だかなんだか知らないが、アンタらみたいなう〇こに与するくらいなら、う〇こ味のカレーからカレー取って、う〇こで割った方がマシ。せいぜい、う〇こと共に朽ち果てるがいいさ。あとお前ら本当にう〇こ――」
「ちょちょちょ! もういい! 何回、う〇こ投げつけてくるのだ⁉ 幼女に向かって、う〇こ投げちゃダメなのだ‼」
(社長……幼女に限らず、う〇こは投げちゃダメですよ)
ロリエルから見て左斜めの机に座るのはバーバリアン将軍。
バードマン参謀の報告を邪魔しない為と、心の中でツッコミを入れつつ湯呑の茶をすする。
「は、はあ……して、どういたしましょう? このままでは我ら東部エリアの魔王軍は破産……。ここは魔王軍の看板を捨て、地域との共生を主軸とした事業に切り替えることを進言いたします。幸い、従業員は今の仕事スタイルに満足しているようですし」
「それって魔王軍としてどうなのだ⁉ まったく! プライドの欠片もない連中なのだ!」
どうもロリエルは気に入らないようで、頬を膨らませつつプンスカモードで踏ん反り返っていた。
「まあまあ、いいじゃないですか社長。うちの経営を立て直すためにバードマン参謀は来てくれたわけですから。ここは彼の言う通り、さっさと看板下ろしちゃいましょうよ?」
バードマン参謀の新たな提案に賛成の意を示すよう、バーバリアン将軍は湯呑を置き、その意見を後押しし始める。
「う~む……しかし、魔王軍の看板を捨てるわけには……」
「今はもう『魔王軍』なんてマイナスイメージのある看板じゃ好感度上がりませんよ? 世はまさに大コンプライアンス時代! どこぞの海賊王も『あれ? 何か俺が想像してた感じと違うんだけど? この世の全てが便器の底についてんだけど?』って言うレベルですからね。仕方ありませんよ」
そう。まさにここが岐路。将軍と参謀、そして自分に付いて来てくれた従業員たちの為にも、皆が幸せになる選択をしなければならない。
魔王として……いや、一つの会社を営む社長として。
「お前たちの考えは分かったのだ。だが……我は魔王軍の看板は捨てないのだ」
真っ直ぐに語られたロリエルの言葉。
将軍と参謀は静かにその想いを拝聴し続ける。
「代行とはいえ、本家の魔王様から頂戴したもの。最後の瞬間まで我は諦めたくないのだ!」
青いと言われればそれまでだろう。しかし、その純粋無垢な笑みを見せられては、これ以上何も言うことはない。それは将軍や参謀だけでなく、従業員たちも皆、同じ気持ちだった。
いつも緩くて、どこかだらしない。でも、その小さな身体に魔王としての想いが沢山詰め込まれている。人一倍魔王軍としてのプライドを持ち、人一倍諦めないからこそ、未だ魔王軍東部エリアは存続していられるのだ。
だから皆、ついていく……魔王ロリエルに。
「フッ……そうですか。なら、もっと地域との共生を頑張らないといけませんね!」
なんだかんだで嬉しそうに微笑むバーバリアン将軍に、ロリエルは「その心配には及ばないのだ!」と自信満々に手の平を突き出す。
「どういう意味でしょう?」
そう問うたのは未だ律儀に跪いてるバードマン参謀。
「ふふーん! こんなこともあろうかと、去年の忘年会で魔王様から貰った魔剣『執行者の剣』を、予め魔天籠ショッピングに出品しておいたのだ!」
「「……え?」」
将軍と参謀は二人して、真顔でロリエルを見つめる。
「これで当面の資金は工面できるし、もしかしたらこの状況を打破する魔剣士が、転生してきてくれるかもしれないのだ! 勇者みたいに!」
((……いや、魔王軍としてのプライドは⁉))
と、将軍と参謀は思ったが口には出さなかった。プライドなんかよりも、明日の飯だからだ。
というわけで、今日も魔王様(社長)は現実逃避に励む。
ちなみに次回へ続くかどうかは今回も分からない……
オンボロのプレハブ小屋が建ち並ぶ荒れ果てた領地。
その最奥にある一際大きい魔王城(プレハブ)の一室には、魔王軍代行稼業有限会社の魔王(社長)こと、ロリエル・コンクェスターが座していた。
「で? どうだったのだ、バードマン参謀?」
ロリエルが語りかけたのは机を挟んで跪く、鳥人型の魔物ことバードマン参謀。
前回、裏カジノ設営の件で出張していた為、その報告を兼ねた会議が行われていた。
「はい。ロリエル社長が作られた事業計画書を元に先方と話し合った結果、『こんなう〇こみたいな事業計画書で裏カジノ設営とか片腹痛いわ。魔王軍だかなんだか知らないが、アンタらみたいなう〇こに与するくらいなら、う〇こ味のカレーからカレー取って、う〇こで割った方がマシ。せいぜい、う〇こと共に朽ち果てるがいいさ。あとお前ら本当にう〇こ――」
「ちょちょちょ! もういい! 何回、う〇こ投げつけてくるのだ⁉ 幼女に向かって、う〇こ投げちゃダメなのだ‼」
(社長……幼女に限らず、う〇こは投げちゃダメですよ)
ロリエルから見て左斜めの机に座るのはバーバリアン将軍。
バードマン参謀の報告を邪魔しない為と、心の中でツッコミを入れつつ湯呑の茶をすする。
「は、はあ……して、どういたしましょう? このままでは我ら東部エリアの魔王軍は破産……。ここは魔王軍の看板を捨て、地域との共生を主軸とした事業に切り替えることを進言いたします。幸い、従業員は今の仕事スタイルに満足しているようですし」
「それって魔王軍としてどうなのだ⁉ まったく! プライドの欠片もない連中なのだ!」
どうもロリエルは気に入らないようで、頬を膨らませつつプンスカモードで踏ん反り返っていた。
「まあまあ、いいじゃないですか社長。うちの経営を立て直すためにバードマン参謀は来てくれたわけですから。ここは彼の言う通り、さっさと看板下ろしちゃいましょうよ?」
バードマン参謀の新たな提案に賛成の意を示すよう、バーバリアン将軍は湯呑を置き、その意見を後押しし始める。
「う~む……しかし、魔王軍の看板を捨てるわけには……」
「今はもう『魔王軍』なんてマイナスイメージのある看板じゃ好感度上がりませんよ? 世はまさに大コンプライアンス時代! どこぞの海賊王も『あれ? 何か俺が想像してた感じと違うんだけど? この世の全てが便器の底についてんだけど?』って言うレベルですからね。仕方ありませんよ」
そう。まさにここが岐路。将軍と参謀、そして自分に付いて来てくれた従業員たちの為にも、皆が幸せになる選択をしなければならない。
魔王として……いや、一つの会社を営む社長として。
「お前たちの考えは分かったのだ。だが……我は魔王軍の看板は捨てないのだ」
真っ直ぐに語られたロリエルの言葉。
将軍と参謀は静かにその想いを拝聴し続ける。
「代行とはいえ、本家の魔王様から頂戴したもの。最後の瞬間まで我は諦めたくないのだ!」
青いと言われればそれまでだろう。しかし、その純粋無垢な笑みを見せられては、これ以上何も言うことはない。それは将軍や参謀だけでなく、従業員たちも皆、同じ気持ちだった。
いつも緩くて、どこかだらしない。でも、その小さな身体に魔王としての想いが沢山詰め込まれている。人一倍魔王軍としてのプライドを持ち、人一倍諦めないからこそ、未だ魔王軍東部エリアは存続していられるのだ。
だから皆、ついていく……魔王ロリエルに。
「フッ……そうですか。なら、もっと地域との共生を頑張らないといけませんね!」
なんだかんだで嬉しそうに微笑むバーバリアン将軍に、ロリエルは「その心配には及ばないのだ!」と自信満々に手の平を突き出す。
「どういう意味でしょう?」
そう問うたのは未だ律儀に跪いてるバードマン参謀。
「ふふーん! こんなこともあろうかと、去年の忘年会で魔王様から貰った魔剣『執行者の剣』を、予め魔天籠ショッピングに出品しておいたのだ!」
「「……え?」」
将軍と参謀は二人して、真顔でロリエルを見つめる。
「これで当面の資金は工面できるし、もしかしたらこの状況を打破する魔剣士が、転生してきてくれるかもしれないのだ! 勇者みたいに!」
((……いや、魔王軍としてのプライドは⁉))
と、将軍と参謀は思ったが口には出さなかった。プライドなんかよりも、明日の飯だからだ。
というわけで、今日も魔王様(社長)は現実逃避に励む。
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