WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第一章

第52話 おじさんだって可愛いって言われたいんじゃボケェッ!②

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「じゃあ、場所を変えるよ? ここじゃ戦い辛いからさ」

 開幕、サブロウは眼球を高速で動作させる。

(これは……⁉ 【黙令眼】ッ――)

 レベッカに驚く暇さえも与えないサブロウは、瞳は真白く輝かせるや否や、瞬く間に自分とレベッカを異空間へと転移させた。

 突如、消えた二人……それにより、先程まで張り詰めていた空気が漸く薄れてくる。

「消えちゃった……。今のも魔法なのかな?」

 明芽はエミリアに支えてもらいつつ、ゆっくり立ち上がりながら、そう問う。

「申請や執行もなしに? まさか……。なんか目が凄い速さで動いてたのだけは見えたけどね」

 相変わらず目敏いエミリアに、ハルフリーダも支えに回りながら答える。

「そうだったのですか? わたくしには何が何やら、さっぱり……」

 そんな困惑する一同に、リリスだけは鼻高々と、正妻気取りで頷いていた。

「まあ、待ってなさい。どうせ、すぐ終わるだろうから」

 軽く言い放つリリスにハルフリーダが疑問を呈す。

「すぐ終わる……? ですが、お姉さまはレベル5の魔法を習得している上級魔導騎士です。流石に、それは難しいのでは……?」
「大丈夫よ。なんたってサブロウくんは……面倒くさがり屋だからね」

 これは信頼とは少し違う。ただ事実ゆえ、そう述べてるだけ。
 さ、私もそろそろ行こうかな。早く行かないと終わっちゃうからね。



 到着すると視界には真白い空間が広がっており、その中心で睨み合う二人の姿が目に入る。どうやら、間に合ったようだ。

「どういうつもりだ……? 【至純の演舞場】とは……!」

 レベッカの言う【至純の演舞場】とは――

 白を基調とした実戦型戦闘訓練用施設であり、一言で言ってしまえば、だだっ広く用意されただけの大きな箱の空間だ。
 実際のところ何もないように見えるが、実はあらゆる武器を生成、使用可能となっている。

 さらに、この施設では訓練用とあってか――

 先ほど私は『サブロウはこういうことしないと思ってた』と発言したが、その考えはどうも間違っていなかったらしい。騎士相手に決闘で絶対死なない場所を選ぶ……。それが、どれほどの侮辱行為に当たるか、もはや言うまでもないだろう。解説終了――

「これから預かる子のお姉さんを殺すわけにはいかないからね。念のためさ」
「ハッ……【黙令眼】が使えるのは驚きだが、随分と舐められたものだな。もう私に勝つ気でいる。これほどの屈辱は生まれて初めてだッ‼」

 怒りに支配されたレベッカは即座に宙へと羽ばたき、ランスの切っ先をサブロウへ突き刺すように高速で突進する。

「それは違う。強い相手だからこそ――」

 バリイイイイィィィンッ……!

「こちらも万全を期してるだけさ」

 しかし、レベッカの突きつけたランスは呆気なく散る。サブロウの人差し指が触れたことによって。

「馬鹿……なッ……⁉」

 それだけでなく、レベッカ自慢の装甲までもが、たった一撃で剥がされ、天使は敢え無く地へ落ちてしまう。

《承認を一時破棄。クールダウンを開始します》

 天から無慈悲に告げられる承認破棄の知らせ。
 それ即ち、多大なるダメージによって敗北が決定したと同義であった。

「暫く魔法は使えないだろう。これで認めてくれるかな?」

 作業的に見下ろしてくるサブロウに対し、堕天したレベッカは理解が追い付いていない様子。

(そんな……この装甲が剥がされるなんて……⁉ ということは、今の魔法は――レベル6⁉ 馬鹿なっ……! 最上級クラスなんて見たことが……)

 そう。今の魔法はレベル6の崩壊魔術【ジャガンナートの行進】。この能力以下の武器、装甲を問答無用で破棄し、その性能に応じたダメージを使用者に与える。破棄したものが強力であればあるほど、与えるダメージは高くなる……だったかな? 容赦がないのは結構だが、今度から自分の口で言ってくれ。説明が面倒だ。

「善処するよ」

 サブロウが此方を見上げたその時――隙を突くようにレベッカが施設のシステムを行使。

「まだ、終わってはいないッ‼」

 剣を生成すると同時にサブロウの土手っ腹目掛け、その刃を突き刺そうと最後の攻勢に転じる、が――

「――ッ⁉」

 そもそも隙なんてものは最初からなく、最小限の動きで避けたサブロウは手刀で刃を叩き折り、レベッカの足を払っては顔面を鷲掴みする。

「その心意気や潔し。だからこそ、こちらも全力で戦えるというもの。ブリッツ流蹂躙術――」

 そのままサブロウは宙に浮いたレベッカの後頭部を――

「【大地惨衝だいちさんしょう】」

 全力で地面へと叩きつけた。
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