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第一章
第51話 おじさんだって可愛いって言われたいんじゃボケェッ!①
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ハルフリーダが断腸の思いで手を差し出そうとしたその時――まるで主人公の如きナイスタイミングで現れたのは、なんと珍しい……。あのイベント事に消極的なサブロウだった。
「止まれ。何者だ、貴様は?」
レベッカはハルフリーダの盾となり、警戒心を強めながらサブロウを制止する。
『TBA』も急に見知らぬおじさんが割り込んできたため、『誰やねん、こいつ?』的な視線を向けていた。
「僕の名はサブロウ。多分、その子たちが探してるであろう人物……だと思う」
出てきた割には自信なさげに三人娘へと指を差すサブロウ。
長い付き合いだから分かるが、もう出てきたことを後悔し始めてるね、こりゃ。
「うそ……あの人がサブロウ……さん?」
「だとしても、何で此処に……?」
「まるで、私たちのことを、ずっと見守っていたかのような……」
さて、そうなってくると勇者チームにも不安が伝染。
明芽、エミリア、ハルフリーダの順で怪訝さを口にする始末。
そんな怯えつつある三人の意見にレベッカは、
「なるほど。つまり、貴様は――変態という訳だな?」
あろうことかサブロウを変態認定した。
まさに屈辱。さっきまで変態だった女に変態呼ばわりされるのは憐れというほかなく、ただでさえ死んだような目が今や腐乱死体の如き様相で……もう見てらんない!
おじさんが話しかけただけで、この扱いだ。今頃、学区内で不審者の声掛け事案が発生したとかアナウンスされてるに違いない。やはり、どの世界でもおじさんの肩身は狭いようだ。
「いや、違うんだけど……。あ……やっぱ、もういいや……帰ります……」
あーっと、ここでサブロウ選手! 完全にメンタルをやられてしまったようだ! さっきまでの主人公っぷりは何処へ行ったのか! もはや目の前でピンチの女の子を救う気も失せたといったところ! 悲哀に満ちた背を向けて、敢え無く退場だー!
「帰っちゃった……」
そう明芽が呟き、全員が呆然とする中、暫くしたのち……
「なーにしてんのよ、サブロウくん! 一回出るって決めたなら最後まで貫きなさいよ! 格好つかないでしょうが⁉」
リリスがサブロウの首根っこを捕まえ、木々の裏手から一緒に戻ってきた。
「貴女様は……」
いの一番にリリスに気付いたのはハルフリーダ。そういえば顔見知りだったな。
「あら? ご無沙汰ね、お姫様。この冴えないおじさんが、残念ながらサブロウくんよ。ちゃんと言われた通り来なきゃダメじゃない?」
二人のやり取りに他三人が一斉に視線を移し、それに気づいたハルフリーダは慌てたように説明する。
「あ、この方が私にサブロウ様をご紹介してくださった……えーっとぉ……?」
「リリスよ」
「そう。リリス様です」
明芽とエミリアは漸く合点がいったようで……
「ああ! あの⁉」
「騙されてたんじゃなかったのね……」
取りあえず勇者チームの誤解は解けたみたいだ。
しかし、レベッカには当然伝わっておらず、さらに猜疑心を抱かせてしまう。
「貴方がサブロウという御仁なのは分かった。だが、何故止めた? その理由をお聞かせ願いたい」
未だしょんぼりしているサブロウに、リリスは「ほら! シャキッとしなさい!」とケツを引っ叩き、前へ押し出す。
「いや……十七歳って青春ド真ん中じゃない? そんなときに切り離すのは、何か可哀想っていうかなんていうか……」
「そんな感情論で認めるわけにはいかない」
「もちろん分かってる。だから僕が魔法を教えるよ。彼女たちがまだ望むならね」
突如もたらされたサブロウの提案に、勇者チームは光明を見出したかのように顔を見合わせる。
「はいはい! 私、魔法を覚えたいです!」
「エ、エミィだって……! どうしてもって言うなら、教わってあげてもいいんだからね!」
「私も、この三人で教わりたいです! 一緒に!」
明芽は元気よく何度も手を上げ、エミリアは恥ずかし気にそっぽを向き、ハルフリーダは祈るかのように手を組む。三者三葉のアプローチだが、その想いだけは三人揃って同じ希望へと向いていた。
「いきなり現れた得体の知れない男に、お嬢様を預けろと? 馬鹿馬鹿しい……」
それでもレベッカは認めない。騎士として……いや、姉として当然の反応と言えよう。
「なら、試せばいい。さっきみたいにさ?」
だが、サブロウも引き下がらない。例え挑発することになっても、彼女たちの努力を無にしないために。
「フッ、良かろう。ならば試してやるッ! 貴殿に決闘を申し込むことでなッ!」
はい、出ました。異世界特有のすぐ決闘。サブロウはこういうことしないと思ってたけど、やっぱり男の子だねぇ~。ま、大体こういうのは言い出しっぺが負けるので、生暖かく見守りましょう。
「止まれ。何者だ、貴様は?」
レベッカはハルフリーダの盾となり、警戒心を強めながらサブロウを制止する。
『TBA』も急に見知らぬおじさんが割り込んできたため、『誰やねん、こいつ?』的な視線を向けていた。
「僕の名はサブロウ。多分、その子たちが探してるであろう人物……だと思う」
出てきた割には自信なさげに三人娘へと指を差すサブロウ。
長い付き合いだから分かるが、もう出てきたことを後悔し始めてるね、こりゃ。
「うそ……あの人がサブロウ……さん?」
「だとしても、何で此処に……?」
「まるで、私たちのことを、ずっと見守っていたかのような……」
さて、そうなってくると勇者チームにも不安が伝染。
明芽、エミリア、ハルフリーダの順で怪訝さを口にする始末。
そんな怯えつつある三人の意見にレベッカは、
「なるほど。つまり、貴様は――変態という訳だな?」
あろうことかサブロウを変態認定した。
まさに屈辱。さっきまで変態だった女に変態呼ばわりされるのは憐れというほかなく、ただでさえ死んだような目が今や腐乱死体の如き様相で……もう見てらんない!
おじさんが話しかけただけで、この扱いだ。今頃、学区内で不審者の声掛け事案が発生したとかアナウンスされてるに違いない。やはり、どの世界でもおじさんの肩身は狭いようだ。
「いや、違うんだけど……。あ……やっぱ、もういいや……帰ります……」
あーっと、ここでサブロウ選手! 完全にメンタルをやられてしまったようだ! さっきまでの主人公っぷりは何処へ行ったのか! もはや目の前でピンチの女の子を救う気も失せたといったところ! 悲哀に満ちた背を向けて、敢え無く退場だー!
「帰っちゃった……」
そう明芽が呟き、全員が呆然とする中、暫くしたのち……
「なーにしてんのよ、サブロウくん! 一回出るって決めたなら最後まで貫きなさいよ! 格好つかないでしょうが⁉」
リリスがサブロウの首根っこを捕まえ、木々の裏手から一緒に戻ってきた。
「貴女様は……」
いの一番にリリスに気付いたのはハルフリーダ。そういえば顔見知りだったな。
「あら? ご無沙汰ね、お姫様。この冴えないおじさんが、残念ながらサブロウくんよ。ちゃんと言われた通り来なきゃダメじゃない?」
二人のやり取りに他三人が一斉に視線を移し、それに気づいたハルフリーダは慌てたように説明する。
「あ、この方が私にサブロウ様をご紹介してくださった……えーっとぉ……?」
「リリスよ」
「そう。リリス様です」
明芽とエミリアは漸く合点がいったようで……
「ああ! あの⁉」
「騙されてたんじゃなかったのね……」
取りあえず勇者チームの誤解は解けたみたいだ。
しかし、レベッカには当然伝わっておらず、さらに猜疑心を抱かせてしまう。
「貴方がサブロウという御仁なのは分かった。だが、何故止めた? その理由をお聞かせ願いたい」
未だしょんぼりしているサブロウに、リリスは「ほら! シャキッとしなさい!」とケツを引っ叩き、前へ押し出す。
「いや……十七歳って青春ド真ん中じゃない? そんなときに切り離すのは、何か可哀想っていうかなんていうか……」
「そんな感情論で認めるわけにはいかない」
「もちろん分かってる。だから僕が魔法を教えるよ。彼女たちがまだ望むならね」
突如もたらされたサブロウの提案に、勇者チームは光明を見出したかのように顔を見合わせる。
「はいはい! 私、魔法を覚えたいです!」
「エ、エミィだって……! どうしてもって言うなら、教わってあげてもいいんだからね!」
「私も、この三人で教わりたいです! 一緒に!」
明芽は元気よく何度も手を上げ、エミリアは恥ずかし気にそっぽを向き、ハルフリーダは祈るかのように手を組む。三者三葉のアプローチだが、その想いだけは三人揃って同じ希望へと向いていた。
「いきなり現れた得体の知れない男に、お嬢様を預けろと? 馬鹿馬鹿しい……」
それでもレベッカは認めない。騎士として……いや、姉として当然の反応と言えよう。
「なら、試せばいい。さっきみたいにさ?」
だが、サブロウも引き下がらない。例え挑発することになっても、彼女たちの努力を無にしないために。
「フッ、良かろう。ならば試してやるッ! 貴殿に決闘を申し込むことでなッ!」
はい、出ました。異世界特有のすぐ決闘。サブロウはこういうことしないと思ってたけど、やっぱり男の子だねぇ~。ま、大体こういうのは言い出しっぺが負けるので、生暖かく見守りましょう。
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