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第一章
第49話 おどれ可愛いだけで生き残れる思うたら、大間違いじゃボケェッ!③
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「何甘いこと言ってるのよ、サブロウくん! そもそもサブロウくんの師匠に言われたから、こんなとこまで尾行してきたんでしょうが! あの鎧天使が勝てば、お姫様は本国に送還! おまけに勇者チームの戦力だって削げる! そうなれば私たちを邪魔する者はいないわ! つまり、主人公街道驀進ってことじゃない!」
勇者チームを指差しながらのリリスのご高説により、もう解説することなどほぼないが……要は師匠であるソフィアの命に従い、ハルフリーダを連れ帰――るかどうかは分からないにしろ、取りあえず現状把握と尾行してたら、なんかキャットファイトが始まった……というのがサブロウたちが今、此処に居る理由である。
「でも、彼女たち頑張ってるじゃない。特にエミリアとかいう子……。あの子はいい目を持ってる。何れ化けるかもしれないね」
「ふん! あんなの鎧天使が手加減してるだけでしょ? 残念だけど化ける前にノックアウトね」
エミリアを興味深そうに見つめるサブロウに、リリスは当てつけの如くジト目で覗き込み、その視線を遮る。
「まあ、もう少しだけ見てようよ。何か策があるみたいだしさ」
しかし、そんな気も知らぬサブロウは、リリスの顔をアイアンクロウで退かし、「痛い痛い痛い……!」との呻き声を聞きながら、『TBA』の成り行きを見守ることにした。
渦中のエミリアはというと、何とかユニコーンの一撃を避け続けていたようだが、その動きにもどうやら陰りが見えてきている様子。
無理もない……相手は魔法で生成されたユニコーンで、対するエミリアは人間だ。当然限界がある。そして、その限界はとうとうエミリアの足を縺れさせ、膝をつかせてしまう。
「どうやら限界のようだね。でも驚いたよ。魔法も使えないのに、ここまでやるとは思わなかった」
レベッカは優雅に宙を舞い、尚も高みから述べてくる。
「はぁはぁ……! じゃあ……認めてくれるってこと……?」
エミリアは下から見上げるだけ。しかし、その闘志は燃え尽きていないようにも見える。
「まさか……決定打を与えられない以上、認めるわけにはいかないな」
だが、レベッカもそう甘くはない。再びランスを構え、エミリアへ最後の審判を告げようとする……『執行――』と。
しかし――
「アクセスコード007を申請……」
《承認完了》
「執行――【ポンポン・ファントム】!」
先に唱えられたのは気の抜けた技名だった。
「何っ⁉ まさか……!」
その驚きようから、当然レベッカの魔法ではない。
執行したのはなんと――ハルフリーダに抱きかかえられていた明芽だった。
転輪する緑文字から生み出されたのは、ずんぐりむっくりの狸のような生物。
その愛玩動物顔負けのマスコット的存在は、辺りをキョロキョロ見回すと顔をくしくしと洗ったのち、トコトコと二足歩行でレベッカまで近寄っていく。
(か、かわいい……)
レベッカがそう思ったのも束の間、その生物は「キュゥーン!」という鳴き声と共に短めの前足で万歳。周囲の空間を歪め始める。
「くっ……! これは……幻惑魔術か……⁉」
額部分に手を当て、ふらふらと宙で揺れ始めるレベッカ。
察しの通り、周囲の空間が歪められているのではなく、レベッカの視覚や脳に直接影響を及ぼすタイプの魔術だ。
ただ訂正しておくと幻惑効果は、あの生物から発せられているので、正しくは召喚魔術なのだが……それでも付け焼刃、且つレベル1の魔法でレベッカがふらつくなどありえないこと。では何故、効果抜群なのか? その理由は至極簡単。
「あぁ……ここは天国か……? お嬢様が……ハルが……いっぱい……」
そう。レベッカの目には愛してやまないハルフリーダが――己が周りを埋め尽くすかのように映し出されていたからだ。
勇者チームを指差しながらのリリスのご高説により、もう解説することなどほぼないが……要は師匠であるソフィアの命に従い、ハルフリーダを連れ帰――るかどうかは分からないにしろ、取りあえず現状把握と尾行してたら、なんかキャットファイトが始まった……というのがサブロウたちが今、此処に居る理由である。
「でも、彼女たち頑張ってるじゃない。特にエミリアとかいう子……。あの子はいい目を持ってる。何れ化けるかもしれないね」
「ふん! あんなの鎧天使が手加減してるだけでしょ? 残念だけど化ける前にノックアウトね」
エミリアを興味深そうに見つめるサブロウに、リリスは当てつけの如くジト目で覗き込み、その視線を遮る。
「まあ、もう少しだけ見てようよ。何か策があるみたいだしさ」
しかし、そんな気も知らぬサブロウは、リリスの顔をアイアンクロウで退かし、「痛い痛い痛い……!」との呻き声を聞きながら、『TBA』の成り行きを見守ることにした。
渦中のエミリアはというと、何とかユニコーンの一撃を避け続けていたようだが、その動きにもどうやら陰りが見えてきている様子。
無理もない……相手は魔法で生成されたユニコーンで、対するエミリアは人間だ。当然限界がある。そして、その限界はとうとうエミリアの足を縺れさせ、膝をつかせてしまう。
「どうやら限界のようだね。でも驚いたよ。魔法も使えないのに、ここまでやるとは思わなかった」
レベッカは優雅に宙を舞い、尚も高みから述べてくる。
「はぁはぁ……! じゃあ……認めてくれるってこと……?」
エミリアは下から見上げるだけ。しかし、その闘志は燃え尽きていないようにも見える。
「まさか……決定打を与えられない以上、認めるわけにはいかないな」
だが、レベッカもそう甘くはない。再びランスを構え、エミリアへ最後の審判を告げようとする……『執行――』と。
しかし――
「アクセスコード007を申請……」
《承認完了》
「執行――【ポンポン・ファントム】!」
先に唱えられたのは気の抜けた技名だった。
「何っ⁉ まさか……!」
その驚きようから、当然レベッカの魔法ではない。
執行したのはなんと――ハルフリーダに抱きかかえられていた明芽だった。
転輪する緑文字から生み出されたのは、ずんぐりむっくりの狸のような生物。
その愛玩動物顔負けのマスコット的存在は、辺りをキョロキョロ見回すと顔をくしくしと洗ったのち、トコトコと二足歩行でレベッカまで近寄っていく。
(か、かわいい……)
レベッカがそう思ったのも束の間、その生物は「キュゥーン!」という鳴き声と共に短めの前足で万歳。周囲の空間を歪め始める。
「くっ……! これは……幻惑魔術か……⁉」
額部分に手を当て、ふらふらと宙で揺れ始めるレベッカ。
察しの通り、周囲の空間が歪められているのではなく、レベッカの視覚や脳に直接影響を及ぼすタイプの魔術だ。
ただ訂正しておくと幻惑効果は、あの生物から発せられているので、正しくは召喚魔術なのだが……それでも付け焼刃、且つレベル1の魔法でレベッカがふらつくなどありえないこと。では何故、効果抜群なのか? その理由は至極簡単。
「あぁ……ここは天国か……? お嬢様が……ハルが……いっぱい……」
そう。レベッカの目には愛してやまないハルフリーダが――己が周りを埋め尽くすかのように映し出されていたからだ。
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