WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第一章

第48話 おどれ可愛いだけで生き残れる思うたら、大間違いじゃボケェッ!②

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 突如鳴り響く、金属同士のぶつかり合う音。
 レベッカの急降下からの刺突――その一撃を受け止めたのは『代行者のつるぎ』を抜く明芽だった。

「ほう……私の一撃を受け止めるとは中々やるね。何か習っていたのかな?」
「剣道を少々……!」

 宙を漂うレベッカに対し、明芽は真剣な眼差しのまま、口元だけ笑ってみせる。

「ちょっと何なのよぉ~、この展開ィ⁉」

 エミリアは唐突に始まったバトル展開に、窮地に追い込まれた猫型ロボットの如き慌てっぷりを見せる。

「おやめください、お姉さまッ! わたくしたちは、まだ魔法を覚えていないのですよ⁉ そんな状態で一体何を試すのです⁉」

 当然、ハルフリーダは止めに入ろうとする。
 しかし、レベッカの羽ばたきにより、その行動は阻害されてしまう。

「魔法を覚えていない? そんな理由で見逃してもらえるほど、外の世界は優しくありませんよ……お嬢様?」
「それは……そうですが……」

 ハルフリーダは言い淀み、ばつが悪そうに視線を外す。レベッカの言い分が理解できるからであろう。

 セイターンの街とは比較的、治安が良い方だ。だが、ひとたび外を出れば言い訳など通用しない世界が未だに蔓延っていることも事実。それがお姫様ともなれば、危険度が更に増すことなど想像に難くない。

「だから、私は見定めねばならないのです。この方たちが旅のお供に相応しいかどうかを。執行――【単槍匹馬たんそうひつば】!」

 執行と共に切っ先から生み出されたのは金色に輝くユニコーン。
 その螺旋角から放たれる突進により――

「――ッ⁉」

 明芽の身体は意とも容易く破れた魔導書の下まで弾き飛ばされてしまう。

「明芽様っ⁉」

 ハルフリーダは倒れた明芽に直ぐさま駆け寄り、抱き起すも……意識がない。

「明芽様……? 明芽様っ⁉ 明芽様っ⁉」

 揺すりながら何度も呼び掛けるハルフリーダに、レベッカは宙に浮いたまま冷静に告げる。

「気を失っているだけですからご安心を、お嬢様。さて、次は君の番だ。ツイフィンテールよ?」

 レベッカはランスをエミリアに向けたのち、緩やかに視線を標的へと移していく。

「ツイフィンテールって……エミィのこと⁉ 何よそれ⁉ エミィにはエミリアっていう可愛い名前があるのよ⁉ っていうか、ツイフィンテールって何⁉」
「マイナスポイントを与えるのは、グリフィ――ツイフィンテールと相場が決まってるのだ。執行――【単槍匹馬たんそうひつば】!」

 再び切っ先から放たれ、高速で突進していくユニコーン。
 速さもそうだが、その体躯も凄まじく、エミリアの身を優に超えるほど。

 魔法の一つも覚えていない普通の少女なら卒倒ものの光景だが……

「あっぶなぁああっ! いきなり何すんのよっ⁉ 当たったら絶対、死んじゃうやつじゃない‼」

 エミリアは頭を抱えながら間一髪ダイブ。転倒しながらも何とか回避に至る。

「エミィさ――」

 エミリアを心配し、呼びかけようとするハルフリーダ。
 しかし、それを遮るようにドレスの裾を掴む手にハルフリーダは気付く。

「ほう、アレを回避するとは……。君も存外やるじゃないか。だが、いつまで持つかな?」

 レベッカはエミリアの後方を指差し、方向転換したユニコーンの存在を示す。
 再度突き付けられる螺旋角――それを見たエミリアは即座に立ち上がり、これまたダイブ気味に避ける。

 その後もユニコーンは幾度も方向転換。猛攻を続けていくが、一向にエミリアを捉えることができない。むしろエミリアの目が慣れてきたのか、いつの間にか闘牛士の如き軽やかささえ見せていた。

「勇者の方に期待していたのだが……こちらはこちらで随分、曲者のようだね」

 エミリアの軽業にレベッカが感嘆とする一方、木々の裏手には身を潜める二人の男女が一組。興味深そうに、その奮闘ぶりを覗いていた。

「しぶっといわね~、あの小娘! も~う、さっさとやられちゃいなさいよ! 勇者チームなんて!」
「酷い奴だね君は。普通、勇者チーム応援するでしょ……」

 っていうか、リリスとサブロウだった。
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