WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第一章

第47話 おどれ可愛いだけで生き残れる思うたら、大間違いじゃボケェッ!①

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 前回までのあらすじ――

 『TBA』トリプルガールズ・ビー・アンビシャスの三人は魔法を覚えるために魔導書を買ったが、その内容がめっちゃムカついたので真っ二つに引き裂いた。
 すると何故か全く関係ない変態も、自分のクロークを引き裂いたのだった!

 引き裂かれたクロークは、はらりと地面に落ちていき、その姿を露にしていく。
 さすがに自分から離れた物まで隠密効果は得られないようで……そうなると当然――

「ん? ちょっ……何あれ……?」

 異変を察知される。

 一番最初に気付いたのはエミリアだった。
 明芽とハルフリーダもエミリアの力が弱まったことで、その異変を感じ取り、後を追うように視線を移していく。

「もしや、あれは……!」

 ハルフリーダはその色合いで直ぐに気付いたのか、エミリアの下から走り出すとクロークの破片を拾い、まじまじと見つめる。

「どうしたの……? ハルちゃん?」

 明芽は緩やかに近づき、恐る恐る覗き込む。

「これはビスマルク家に代々伝わる最高級のクロークなのです。世には出回っていないはずの物が何故ここに……」

 流石はビスマルク家。クロークにも随分こだわっているようだ。これには、あのレベッカも反省していることだろう。

「そんな凄い品だったとは……。なんかいっぱいあったから、気にしたことなかった……」

 ダメダメだな、こいつ。なんで一番近しいのに全然知らねえんだよ。って、そもそも知ってたら引き裂かないか……

「そうとも知らず、思わず引き裂いてしまった。このレベッカ・ビスマルク・ダ・レイドルーム、一生の不覚……!」

 いや、知ってても引き裂きそうだなコイツ。『思わず』とか言っちゃってるし。普通、思わずでも引き裂かないだろ。引き裂くとしたら侠客立ちが似合う喧嘩師くらいだよ、多分。

「こんなことをする人をわたくしは一人しか知りません。そこに居るのでしょう……お姉さま?」

 ハルフリーダは期待するようなの眼差しで虚空を見つめている……っていうか、この言い方だと常習犯っぽいな。

「フッ……さすがは私の妹。どうやら全て、お見通しのようだ……」

 レベッカは観念したように、かつ何処かスッキリとした笑みで魔法を解く。
 こいつは何故、やり切った感のある顔なんだ? 自分のポンコツ具合でバレただけだろ。

 霧が晴れるかのように露わになるレベッカのその姿に、明芽とエミリアは驚愕する。

「この人がハルちゃんのお姉さん……?」
「めちゃくちゃそっくりじゃない! もしかして、双子……?」

 エミリアの言葉通り、レベッカの容姿はなんとハルフリーダに瓜二つだった。
 違うところがあるとすれば、紺青色の鎧ドレスを身に纏っているところと、目つきが若干鋭いくらいだろうか。

「いえ、双子ではありません。お姉さまはビスマルク家で騎士団長をお務めになられている、わたくしより二つ上の義理の姉なんです」
「義理の姉っ⁉ それにしては似すぎでしょ……? もはやドッペルゲンガーの域じゃない!」

 エミリアが再度驚く中、ハルフリーダは一歩前に出て、久方ぶりに再開したレベッカへと対峙する。

「お姉さまが此処にいらっしゃるということは、わたくしを連れ戻しに来たと解釈して宜しいのでしょうか?」
「はい。お嬢様を見つけ次第連れ帰るよう、ビスマルク王から命を授かっていた為、失礼と承知していましたが、動向を監視させていただいておりました。お許しください」

 レベッカはハルフリーダの御前で跪き、そう謝辞を述べた。
 さすがに主の前とあってか、先程のバカさ加減が嘘のように消えている。

「何故、監視を? 連れ帰りたいのであれば、すぐに姿を現せばよろしかったでしょう?」
「そうですね……。バレてしまった以上、もう隠す必要もありません。アクセスコード020を時限申請ッ!」

 突如、唱え始めるレベッカに、

《承認完了》

 天から無機質な声が響き渡る。

「お姉さまっ……⁉ いったい何を⁉」
「執行――【天照套守あまてらすおおかみ】」

 有無を言わさず執行するレベッカ。その身体が金色に包まれるや否や、着ていた鎧は真っ白な装甲へと変貌し、縁の至る所には金色のラインが入っていく。
 瓜二つの顔にはクローズヘルムが装着され、背中には天使の如き白い羽を生やし、宙を舞いながら身の丈以上のランスを生成する。

「お姉……さま……?」

 輝かしきその装甲は本気の証だと、ハルフリーダは知っていた。
 明芽とエミリアも肌でそれを感じ、ハルフリーダを護るように横へ駆け寄ると、もはや天使と形容せざるを得ないレベッカを見上げる。

「では、試させていただきます。ご友人様方が、お嬢様に相応しいかどうかをね?」

 その言葉を口火にレベッカはランスを構え、『TBA』トリプルガールズ・ビー・アンビシャスへと急降下していく――‼
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