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第一章
第46話 可愛いは作れるって言うし、きっと魔法も覚えられる④
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セイターンの街 北東部 演習場――
自然が生い茂る街の一角。かつて、なんちゃって魔王軍がピクニック気分でレジャーシートを広げていたのもこの場所。
本来は滑遁会戦闘員の為に用意された演習場なのだが……知っての通り、奴らは仕事よりも可愛い女の子優先なので、今はほとんど使われていない。
なので『TBA』の三人……と変態一名は、魔法の練習には打って付けと、この演習場へ赴いていた。
「よーし! それじゃ、さっそく魔法の練習するわよ! 準備はいい?」
腰に手を当て、ぺったんこの胸を張るエミリア。
何故、一番魔法が使えなさそうな子が仕切っているのか……などというツッコミはしてはいけない。
「はい、先生! よろしくお願いしまーす! 頑張りまーす!」
明芽はビシッと姿勢を正すと共に元気よく手を上げ、
「私も足を引っ張らぬよう、精一杯やらせていただきます。先生」
ハルフリーダは対照的に胸元の下で手を組み、礼儀正しくお辞儀していた。
二人は終身名誉大天使な為、エミリアが仕切ることに対して全く気にする様子もなく、とにかく楽しければいいといった感じ。平和とは、つまりまったくそれでよいのだ。
「このレベッカ・ビスマルク・ダ・レイドルーム。ビスマルク家の騎士団長として、どんな魔法でも覚えてみせましょう! 先生!」
あと参加しなくてもいい馬鹿が約一名。こいつは、どうしたら帰ってくれるんだろう?
ボウ・アンド・スクレープでキメるレベッカなど当然スルー。
気を良くしたエミリアは「フッフ~ンっ!」と、ご機嫌に鼻息を放出しながら魔導書をぺらりとめくり始める。
「いい心がけね! それじゃあ、エミィが読んであげるから、ちゃーんと聞いてなさい! どれどれ……『これを読んでる方たちっていうのは、まあ十中八九魔法初心者ってことで、恐らく頭の悪い方たちだと思うんですけど、そういう理解の乏しい低能な方たちにも分かり易く教えてあげるのが、この魔導書の役目だってことを理解していただかないと、多分話し進まないと思うんですよね? で! もし、そこら辺を理解できないというのであれば、こんな本さっさと捨てて生活保護でも受給しながら、魔法のこと忘れて慎ましく生活してればいいんじゃないかなーって思いまーす』……」
パタン……と、静かに閉じられる魔導書。
「なんだろう……凄くムカつくわ。この魔導書……」
怒涛の捲くし立てに目が据わったエミリアは、開幕から身体をプルプル震わせ、今にも爆発しそうな勢いだ。
「あはははは……いきなり論破されちゃったね……」
天使である明芽も思わず眉が八の字になり、それでも笑みは絶やさんと乾いた声だけは上げる。
「ですが、今の私たちには、その魔導書しか頼る先がありません。ここは我慢して読み進めていくしかないのでは……?」
穏やかさがチャームポイントのハルフリーダも、初めて浴びせられた罵声に幾分か悲しげな表情を浮かべていた。
「フッ……このレベッカ・ビスマルク・ダ・レイドルームに向かって、頭が悪いとは……笑止!」
いや、お前はバカだ。そして早く帰れ。
キリっとした顔でキメるレベッカなど当然スルー。
宥められたエミリアは、「そ、そうね……」と承諾しつつ、魔導書を今一度めくる。
「えーっと……『まず魔法っていうのはレベルが六段階まであるんすよ? まあ、六段階っていうのは、あくまで初心者用の魔導書だから、そういう明記をしてるだけであって、それ以上知りたいって言うのであれば、魔術学院なり何なり受ければいいと思うんですけど、多分これを読まれてる頭の悪い方たちって、それすらも受けられない社会的に負け組――』」
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッッ‼
「うがあああぁぁあああぁぁあああああぁあああ‼‼‼」
とうとうエミリアの堪忍袋の緒は完全に切れ、怒号と共に魔導書が真っ二つに引き裂かれる音が、演習場の木々を揺らすようにこだまする。
「落ち着いて、エミィちゃん⁉ これ以上破ったら読めなくなっちゃうよっ⁈」
「そうです、エミィ様! お気を確かに! COOL COOL COOL!」
明芽とハルフリーダは二人してエミリアを羽交い絞めし、
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッッ‼
「うがあああぁぁあああぁぁあああああぁあああ‼‼‼」
何故かレベッカは自分が羽織っていたクロークを引き裂いた。
いや、どういうこと⁉
自然が生い茂る街の一角。かつて、なんちゃって魔王軍がピクニック気分でレジャーシートを広げていたのもこの場所。
本来は滑遁会戦闘員の為に用意された演習場なのだが……知っての通り、奴らは仕事よりも可愛い女の子優先なので、今はほとんど使われていない。
なので『TBA』の三人……と変態一名は、魔法の練習には打って付けと、この演習場へ赴いていた。
「よーし! それじゃ、さっそく魔法の練習するわよ! 準備はいい?」
腰に手を当て、ぺったんこの胸を張るエミリア。
何故、一番魔法が使えなさそうな子が仕切っているのか……などというツッコミはしてはいけない。
「はい、先生! よろしくお願いしまーす! 頑張りまーす!」
明芽はビシッと姿勢を正すと共に元気よく手を上げ、
「私も足を引っ張らぬよう、精一杯やらせていただきます。先生」
ハルフリーダは対照的に胸元の下で手を組み、礼儀正しくお辞儀していた。
二人は終身名誉大天使な為、エミリアが仕切ることに対して全く気にする様子もなく、とにかく楽しければいいといった感じ。平和とは、つまりまったくそれでよいのだ。
「このレベッカ・ビスマルク・ダ・レイドルーム。ビスマルク家の騎士団長として、どんな魔法でも覚えてみせましょう! 先生!」
あと参加しなくてもいい馬鹿が約一名。こいつは、どうしたら帰ってくれるんだろう?
ボウ・アンド・スクレープでキメるレベッカなど当然スルー。
気を良くしたエミリアは「フッフ~ンっ!」と、ご機嫌に鼻息を放出しながら魔導書をぺらりとめくり始める。
「いい心がけね! それじゃあ、エミィが読んであげるから、ちゃーんと聞いてなさい! どれどれ……『これを読んでる方たちっていうのは、まあ十中八九魔法初心者ってことで、恐らく頭の悪い方たちだと思うんですけど、そういう理解の乏しい低能な方たちにも分かり易く教えてあげるのが、この魔導書の役目だってことを理解していただかないと、多分話し進まないと思うんですよね? で! もし、そこら辺を理解できないというのであれば、こんな本さっさと捨てて生活保護でも受給しながら、魔法のこと忘れて慎ましく生活してればいいんじゃないかなーって思いまーす』……」
パタン……と、静かに閉じられる魔導書。
「なんだろう……凄くムカつくわ。この魔導書……」
怒涛の捲くし立てに目が据わったエミリアは、開幕から身体をプルプル震わせ、今にも爆発しそうな勢いだ。
「あはははは……いきなり論破されちゃったね……」
天使である明芽も思わず眉が八の字になり、それでも笑みは絶やさんと乾いた声だけは上げる。
「ですが、今の私たちには、その魔導書しか頼る先がありません。ここは我慢して読み進めていくしかないのでは……?」
穏やかさがチャームポイントのハルフリーダも、初めて浴びせられた罵声に幾分か悲しげな表情を浮かべていた。
「フッ……このレベッカ・ビスマルク・ダ・レイドルームに向かって、頭が悪いとは……笑止!」
いや、お前はバカだ。そして早く帰れ。
キリっとした顔でキメるレベッカなど当然スルー。
宥められたエミリアは、「そ、そうね……」と承諾しつつ、魔導書を今一度めくる。
「えーっと……『まず魔法っていうのはレベルが六段階まであるんすよ? まあ、六段階っていうのは、あくまで初心者用の魔導書だから、そういう明記をしてるだけであって、それ以上知りたいって言うのであれば、魔術学院なり何なり受ければいいと思うんですけど、多分これを読まれてる頭の悪い方たちって、それすらも受けられない社会的に負け組――』」
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッッ‼
「うがあああぁぁあああぁぁあああああぁあああ‼‼‼」
とうとうエミリアの堪忍袋の緒は完全に切れ、怒号と共に魔導書が真っ二つに引き裂かれる音が、演習場の木々を揺らすようにこだまする。
「落ち着いて、エミィちゃん⁉ これ以上破ったら読めなくなっちゃうよっ⁈」
「そうです、エミィ様! お気を確かに! COOL COOL COOL!」
明芽とハルフリーダは二人してエミリアを羽交い絞めし、
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッッ‼
「うがあああぁぁあああぁぁあああああぁあああ‼‼‼」
何故かレベッカは自分が羽織っていたクロークを引き裂いた。
いや、どういうこと⁉
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