WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第一章

第42話 堕天使の聖水(意味深)

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「というわけで、兄貴。僕らもう帰りますけど、いいですよね?」

 完全勝利を確信したサブロウは拘束されていた手首を摩りつつ、しわっしわのおじいちゃんになったブリッツへと語りかける。

「ちょ……ちょっとまてゃんかい……しゃぶ」

 もはやブリッツは見る影もないほど弱弱しくなり、止めようとする手もプルプルと震えていた。
 心なしか身体もどんどん小さくなっていくような……っていうか、どういう原理だよコレ?

「もう諦めたらどうです? 僕たちに他世界蹂躙とか荷が重かったんですよ。せっかく、この世界で生まれ育ったんですから、これからも地に足浸けて頑張っていきましょうよ。ね?」
「あ、あぁ……そのけんはもう……ええんじゃ。ワシのたのみっちゅうんは~……え~っと~……あれ? なんじゃったかなぁ~? しゃいきん、ものわしゅれがはげしゅうて~……え~っと~……」

 いや、キャラ変わりすぎだろ。どんだけ落ち込んでんだよ。

「あぁ、あれじゃあれじゃ。しゃいきん、びしゅまるくけの~……はるふりーだ? っちゅうおんなが~、おまえんとこにきとるやろ? あのおんな、わしんとこにおちゅれせい」
「師匠と同じこと言ってるし……。誘拐しろってことですか? やりませんよ、そんなこと」

 さすがは裏代興業のトップ。こんな状態でも王女を誘拐し、自分のシマを拡大しようと画策しているようだ。

「まあ、できたらでええよ。できたらで」

 できたらでいいんかい。この短期間で丸くなりすぎだろ。

「じゃあ、これで失礼します。兄貴」
「ああ……また、あしょびにきんしゃい」

 お前は夏休みに帰省した孫に別れを告げるおじいちゃんか。

 そんなジジイにサブロウは軽く会釈したのち、先程から固まっているリリスを連れて我が家へと帰還したのだった。



「いやぁ~、やっと帰ってこれたよ。やっぱ我が家が一番だね」

 昇華サブリメーションから排出されたサブロウは、我が家の有難みに浸るよう背伸びをする。

「………………」

 対してリリスは変わらず、ずっと固まったまま。
 珍しく昇華サブリメーションからの排出も滞りなく済んでいた。

「事なきを得られたのも君のおかげだ。助かったよ」

 これまた珍しく礼を述べるサブロウ。
 伝説の暗殺者が泳げないくらいの有り得ない光景だ。

「………………」

 しかし、リリスは尚も黙りこくった状態。
 いつもなら伝説の元極道に喧嘩を売る、チンピラばりに調子づくところだが……

「あれ、どうしたの? いつもならもっとこう……絡んでくるじゃん?」

 エロゲの主人公張りに目元が隠れている所為か、リリスの表情が窺えない。
 サブロウも流石に違和感を感じ、そろりと心配気に覗き込む。
 
「………………」
「あの……」
「………………」
「えっと……」

 シャ――――――――――――……………………

 静まり返った部屋に奏でられる、澄み透った水の音……近くの小川からだろうか? 程よく太みのある上流、その先から湧き出た聖水は、突起ある岩場の横を通り抜け、引き締まった下流へと伝っていくと、それはそれは大地に美しき水面を作ったそうな。

 つまり、何が言いたいかというと……

「いや、漏らしてる漏らしてる⁉ 思いっ切り漏らしてるよ⁉ お〇っこ!」

 リリスが漏らしてしまったのだ。おしっ――じゃなくて聖水(意味深)を。

「えへぇぇええぇぇんん! ごわがっだよおぉおぉぉぉおお! ザブロウぐぅぅううぅぅうぅん‼」

 リリスはサブロウへと抱きつき、タガが外れたように泣きじゃくる。
 恐らく啖呵を切ったあたりから、かなり無理をしていたんだろう。さすがのリリスもブリッツは怖かったらしい。

「ちょいちょい! 抱きつかないでよ⁉ 僕まで汚れちゃうでしょうが⁉」

 サブロウは逃げようとするも、がっちり両腕でロックされ、何の因果か再び拘束プレイが始まってしまう。

「ずごじぐらい、いいでじょおぉおおぉぉお⁉ おんなのごのお〇っご堪能できるだがらざぁああぁぁあっ⁉」
「いや、実際にくらうと結構不快感の方が勝つから! いいから、離れっ……離れんかいッ……!」

 こうしてスカトロプレイをバックに、『最強の師匠・兄弟子編』は幕を閉じる。
 ちゃっかり私の所為で他世界がピンチになった気もするが……きっと気のせいだろう。

 というわけで、今回は二人とも主人公と認めるので、それで手打ちってことでいいよね?
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