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第一章
第39話 ようやくサブタイトルが私の元に戻ってきたな……サブだけにね。
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「じゃあね、サブロウおじさん。次会えるのが何年後になるか分からないけど、また――」
「三億。無駄口叩かず、さっさと行け」
鬼畜な笑みを浮かべるブリッツの所業に、もはや一号くんは何も語らず、死んだような目で下界のジャングルへと降りていった。
そんなやり取りを見ていたサブロウは、昔のトラウマが刺激された所為か、普段なら絶対にしないであろうことをブリッツへ進言する。
「兄貴……あんまり追い詰めちゃ、一号くん辞めちゃいますよ? ただでさえ裏代興業の組員少ないのに……」
「おいおい、サブ? いつから俺に意見できるようになったんだ? お前も久しぶりにやるか……『魔天籠ダッシュ』」
魔天籠ダッシュとは――
その名の通り、魔天籠の外周に設置してあるバルコニーを、雨の日の運動部が如く、ひたすら走り込むトレーニング法である。
一周の長さは計測不可……これはあらゆる世界と売買ができる魔天籠ショッピングが導入されたことによって生じる、時空の歪みが影響している為と専門家たちの間では、日夜議論されてたりされてなかったりする。
さて、勘のいい方なら、もうお気づきであろう。一億であろうが三億であろうが、そもそも周回なんてものが最初っから機能してないということを。
要するに全てはブリッツの気分次第。終えるためには基本的に年単位を覚悟しなければならない地獄の修行なのだ。
だが、ブリッツもそこまで鬼畜ではなかった。しっかりと偽りの給水ポイントを設け、そこにバームクーヘンをてんこ盛りで用意する隙のなさだ。
ちなみに、この地獄をサブロウも潜り抜けている。だからこそ、つい口を挟んでしまったのであろう。解説終了――
「相変わらず、くどい説明だな。毎回こんなの聞かされちゃあ、気が休まらねえだろ。なあ、サブ?」
ブリッツは私を睨んだ後、同情するようにサブロウへ視線を移す。
リリスは明らかな違和感を感じているものの、当然質問なんてできる雰囲気ではないので、首を傾げるしかやることがなかった。
「そんなことより兄貴。喧嘩はもう済んだはずですよ? これ以上、何に付き合えと?」
「ハッハハ……あれが喧嘩だと? そんなもん俺が認めると思うか?」
「喧嘩を収めるのも力の内です。充分、認めるに値――」
しかし、サブロウの発言はそこで遮断された。
何故なら瞬きをした時にはもう、死神が大鎌を構える拷問椅子に拘束されていたからだ。
「ちょっ……これって、まさか……永獄コース……?」
驚くリリスが察する通り、正式名は【永獄拷子】。嘗てサブロウがリリスに執行したことのあるレベル6の拷問魔術だ。
恐らく【黙令眼】で執行したのだろうが……この私でさえ感知できなかった……。
「落ちたな、サブ。昔のお前なら【廻天之理】で解除まで持ち込めただろうに。畑仕事なんぞやってるから、そんなザマになっちまうんだぜ?」
ブリッツの指摘に対し、サブロウはぐうの音も出ない様子。
もはや今の状況では額の冷や汗すらも拭うことができない……。まさに万事休すだ。
そんなサブロウ相手に、ブリッツは更に言葉を続ける。
「お前の生き方を否定するつもりはないが、スローライフ気取りはやめといた方がいい。あれは主人公がやるから、ギリ成立してるようなもんで、今のお前がやったって何の意味もない」
「スローじゃなくてストップです。好きで止めてるんですよ、僕は。そのことで、あれこれ言われる筋合いはありません。それよりも用件を言ってもらえませんかね? あまり座り心地が良くないので」
精一杯、平静を装うサブロウ。
それに引き換えブリッツは「そうだなぁ……」と余裕の笑みを見せ、溜めに溜めたのち――こう言い放つ。
「俺と一緒に来い、サブ! これから別次元の世界を――蹂躙しにいくッ‼」
「三億。無駄口叩かず、さっさと行け」
鬼畜な笑みを浮かべるブリッツの所業に、もはや一号くんは何も語らず、死んだような目で下界のジャングルへと降りていった。
そんなやり取りを見ていたサブロウは、昔のトラウマが刺激された所為か、普段なら絶対にしないであろうことをブリッツへ進言する。
「兄貴……あんまり追い詰めちゃ、一号くん辞めちゃいますよ? ただでさえ裏代興業の組員少ないのに……」
「おいおい、サブ? いつから俺に意見できるようになったんだ? お前も久しぶりにやるか……『魔天籠ダッシュ』」
魔天籠ダッシュとは――
その名の通り、魔天籠の外周に設置してあるバルコニーを、雨の日の運動部が如く、ひたすら走り込むトレーニング法である。
一周の長さは計測不可……これはあらゆる世界と売買ができる魔天籠ショッピングが導入されたことによって生じる、時空の歪みが影響している為と専門家たちの間では、日夜議論されてたりされてなかったりする。
さて、勘のいい方なら、もうお気づきであろう。一億であろうが三億であろうが、そもそも周回なんてものが最初っから機能してないということを。
要するに全てはブリッツの気分次第。終えるためには基本的に年単位を覚悟しなければならない地獄の修行なのだ。
だが、ブリッツもそこまで鬼畜ではなかった。しっかりと偽りの給水ポイントを設け、そこにバームクーヘンをてんこ盛りで用意する隙のなさだ。
ちなみに、この地獄をサブロウも潜り抜けている。だからこそ、つい口を挟んでしまったのであろう。解説終了――
「相変わらず、くどい説明だな。毎回こんなの聞かされちゃあ、気が休まらねえだろ。なあ、サブ?」
ブリッツは私を睨んだ後、同情するようにサブロウへ視線を移す。
リリスは明らかな違和感を感じているものの、当然質問なんてできる雰囲気ではないので、首を傾げるしかやることがなかった。
「そんなことより兄貴。喧嘩はもう済んだはずですよ? これ以上、何に付き合えと?」
「ハッハハ……あれが喧嘩だと? そんなもん俺が認めると思うか?」
「喧嘩を収めるのも力の内です。充分、認めるに値――」
しかし、サブロウの発言はそこで遮断された。
何故なら瞬きをした時にはもう、死神が大鎌を構える拷問椅子に拘束されていたからだ。
「ちょっ……これって、まさか……永獄コース……?」
驚くリリスが察する通り、正式名は【永獄拷子】。嘗てサブロウがリリスに執行したことのあるレベル6の拷問魔術だ。
恐らく【黙令眼】で執行したのだろうが……この私でさえ感知できなかった……。
「落ちたな、サブ。昔のお前なら【廻天之理】で解除まで持ち込めただろうに。畑仕事なんぞやってるから、そんなザマになっちまうんだぜ?」
ブリッツの指摘に対し、サブロウはぐうの音も出ない様子。
もはや今の状況では額の冷や汗すらも拭うことができない……。まさに万事休すだ。
そんなサブロウ相手に、ブリッツは更に言葉を続ける。
「お前の生き方を否定するつもりはないが、スローライフ気取りはやめといた方がいい。あれは主人公がやるから、ギリ成立してるようなもんで、今のお前がやったって何の意味もない」
「スローじゃなくてストップです。好きで止めてるんですよ、僕は。そのことで、あれこれ言われる筋合いはありません。それよりも用件を言ってもらえませんかね? あまり座り心地が良くないので」
精一杯、平静を装うサブロウ。
それに引き換えブリッツは「そうだなぁ……」と余裕の笑みを見せ、溜めに溜めたのち――こう言い放つ。
「俺と一緒に来い、サブ! これから別次元の世界を――蹂躙しにいくッ‼」
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