WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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第一章

第29話 サブ? 少し話があるから、妾のところまでいらっしゃい。

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「ハァ……やっぱり来たか……」

 さて、早速サブタイトルが乗っ取られている昼下がりの今日この頃。
 呼び出しを受けたサブロウは嫌々ながらも、『よっこらせおじさんムーブ』で素直に立ち上がり、玄関横に植えられている一番左の黒い蕾へと手をかざす。

 くぱぁ……

 もう一度言います。

 くぱぁ……

「何で二回言うの……」

 そんな擬音が聞こえてきそうなほどの開きっぷりを見せる【昇華サブリメーション】のModel-T。
 その能力は別の場所に点在するModel-Tと連結し、対象者をその場所へと転移させるものであった。

「あぁーぁ……行くのめんどくさいなぁー……」

 そう言いつつもサブロウの身体は正直だった。
 呼び出した主には逆らえず、快楽を求めるように開いた昇華サブリメーションの中へ、その熟れた上半身を委ねていく。

「なんでそんな官能的な表現なんだか……」

 サブロウが気だるげに吸い込まれていくと、いつもの如く勝手に扉が開く。

「おっはよー、サブロウくん。聞いてよ~、今朝出したう〇こがメッチャデカくて――って、サブロウくんが吸い込まれてるぅうううッ⁉」

 驚き桃の木リリスの木が、スカトロチックに登場。
 すぐさま救出態勢に移行したリリスは、サブロウの腰を掴んでは激しく前後に揺する。

「まっ、待っててサブロウくんッ! 今すぐ助け……出すからッ……!」
「いや、僕は大丈夫だからっ! 僕は大丈夫だけど絵面が全然、大丈夫じゃないからっ!」
「大丈夫っ……すぐに……出すからッ……もう……出すからねっ⁉」
「いや、もう2アウト! 絵面と台詞で2アウトだからッ! あーもう! しょうがない!」

 このままではマズい……サブロウはそう思った。
 逆のシチュエーションならまだしも、おじさんの壁尻は世界広しといえど需要なんてないからだ。

 なので奇天烈なこの状況を打破せねばと、サブロウは断腸の思いで行動に移す。それは――

「――え?」

 リリスの腰に両足を回し、ドッキングしたまま一緒に吸い込まれることだった。

「いやあぁぁああぁああぁああぁぁあぁ‼――あぁぁ‼――ぁぁ!――ぁ――」



「ぁぁぁあああ――ぶへぇあッ⁉」

 転移されて早々、【昇華サブリメーション】から吐き出されたリリスは、顔面から大地へと熱い接吻をかます。
 対するサブロウは当然慣れており、イギリス貴族へ養子としてきた、悪の救世主が如き着地っぷりを見せる。

「また戻ってきちゃったか……この場所に」

 呟くように言ったサブロウは、眼前に聳え立つ漆黒を見上げる。

 先程まで昼間の陽気が漂っていた空は暗闇に包まれ、巨大な柵の隙間からは荘厳な佇まいの居城が見て取れる。
 横にはこれ見よがしに厳ついスキンヘッドをお持ちの、黒スーツとサングラスでビシッと決めた、筋肉モリモリマッチョマンの門番が睨みを利かせていた。

「オヒサシブリデス、サブロウサン。マスターカラハナシ、キイテマス。ドウゾ、ナカヘ」

 門番の真っ直ぐな片言をトリガーに、柵がひとりでに軋む音を立てる。

「ああ……」

 そのロードを堂々と歩いていくサブロウ。
 置いてけぼりのリリスはというと、顔をくしくしさせながら立ち上がり、門番を訝しげに見つつサブロウの後へ続く。

「ちょっとサブロウくん! 何なのよここは? 説明しなさいよ!」
「あんまり騒がない方がいいよ。ここは【常世の居城ブラック・パレス】。世界中で名のある精鋭たちが集う――傭兵の総本山だからね」

 サブロウが扉を開けるとその先には――言葉とは裏腹な、傭兵とは名ばかりの殺し屋のような集団が待ち構えていた。
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