WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

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序章

第27話 おじさんと少女が邂逅しそうで、しなかったりするお話⑤

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「えっとー……ここだよね? 確か……」
「ええ。先程の男性が言うには間違いないはずなのですが……」
「ちょっとぉ~……エミィをここまで走らせといて、違ったとかじゃないでしょうね⁉」

 ……………………。

「でも、誰もいないね? さっきまでお祭り騒ぎだったのに……」
「ですが、いらっしゃらないということは裏代興業が来たという何よりの証。やはり、この場所で間違いないのでは?」
「その裏代興業すらいないってのはどういうわけ? ただのガセネタだったのかしら?」

 ……あれ? これもう始まってるの……?

「もう帰っちゃったとか……?」
「それですと囚われた方たちを、お助けするのが困難に……」
「追いかけるにしても誰もいないんじゃ、何処に行ったのかも分からないわね……」

 おっと、いかんいかん。最終回っぽく終わったから気ぃ抜いてたわ。えっとー……どこまで行ったんだっけ? サブロウの話はー……もう終わってんのね? ハイハイハイ。

「すみませーん! 誰かいませんかー?」

 というわけで、気を取り直してナレーションを再開していこう。

 えー……前回ね。サブロウが勝手に何かー……サラッとね。話を終わらせちゃったもんだから、今はそのー……ガールズチームがー……アレか。来てんのか。で、明芽あやめが今ぁー……閉じこもってる皆に語りかけてると! うん! そういう状況だ。

「この声は……勇者様?」
「あれ? 裏代興業の奴がいねえ……」
「ってことは、もしかして……!」

 明芽の呼びかけは街の住人たちのココロをアンロック解錠。伝染するかのようにオープンハートさせていく。

 そうなると当然、この後の流れは……

「うおおおおおおっ‼ 勇者様がこの街をお救いしてくださったぞぉおおお‼」
「さすが勇者様だわ! なんて慈悲深いお方なんでしょう!」
「やったああああっ‼ これで傭兵が乗る人型機動兵器の続編を心置きなく待てるぅぅぅ‼」

 ……と、まあ相変わらず勇者を褒め称えていくワンパターンな展開。

「あのー……違うんですけど……」

 そんな明芽の声など届くはずもなく、再び騒ぎ立てるおバカな住人たち。どうやらこの分だと、お祭りはまだまだ続きそう。

 ってなわけで、明芽率いる『TBA』トリプルガールズ・ビー・アンビシャスが困惑する中、今回も勇者御一行によって街は救われたのであった。



 そして、後日――

「ちょっとサブロウくん‼ 起きなさいよッ‼」

 又もや早朝襲撃をブチかますは、マナーの欠片を三角コーナーに捨ててきたリリス。ご就寝中のサブロウの身体に跨っておられる。

「も~う……何で君はいつもそんなに早いんだよぉ……。他にやることないのぉ……?」
「サブロウくんが昨日、勝手に帰っちゃうからでしょうが⁉ なんで何も言わずに帰っちゃうのよっ! メチャクチャ寂しいじゃない!」
「ごめんごめん……まさか君が、そんなに寂しがり屋だとは思わなかったよ」
「いや、正直その件が霞むくらいのことが起きちゃったからもうどうだっていいわ‼ それよりも奴隷商人の話よ、奴隷商人っ‼ 聞いた⁉」
「さあ? 知らないし、興味もない」

 興味がないのは本当だが、知らないのは嘘である。

 あの後、サブロウは倒した奴隷商人を【ラトビルスの空】によって、へと飛ばした。
 嘘か誠か、その名を語った者である以上、討ち取った者としての筋を通す必要があったからだ。

 勿論、送った場所は――『裏代興業』である。

 捕まっていた美女たちも当然解放。
 馬車には十人ほど囚われていたらしいが、実は可笑しなことに、その美女たちには見覚えがあったとのこと。しかも全員である。

 その上、皆一様に羨望の眼差しを向けていた。サブロウの数少ない主人公っぽいシーンである。

 奴隷商人と美女たち……この二つの案件がサブロウを、どこぞの団長様の如く憂鬱にさせていた。……またこの時期がやってきたのかと。

「かぁー! ダメよ、そんなことじゃ‼ そんなんだから、あの勇者ちゃんに先越されちゃうのよ! わかってる⁉」
「分かった分かった……。という訳で今回も結局、サブロウは主人公になれず……ってことで手打ちにしてくれ……もう……眠いから……」

 あ、あぁ……まあ、今回は頑張った方じゃない?
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