28 / 117
序章
第27話 おじさんと少女が邂逅しそうで、しなかったりするお話⑤
しおりを挟む
「えっとー……ここだよね? 確か……」
「ええ。先程の男性が言うには間違いないはずなのですが……」
「ちょっとぉ~……エミィをここまで走らせといて、違ったとかじゃないでしょうね⁉」
……………………。
「でも、誰もいないね? さっきまでお祭り騒ぎだったのに……」
「ですが、いらっしゃらないということは裏代興業が来たという何よりの証。やはり、この場所で間違いないのでは?」
「その裏代興業すらいないってのはどういうわけ? ただのガセネタだったのかしら?」
……あれ? これもう始まってるの……?
「もう帰っちゃったとか……?」
「それですと囚われた方たちを、お助けするのが困難に……」
「追いかけるにしても誰もいないんじゃ、何処に行ったのかも分からないわね……」
おっと、いかんいかん。最終回っぽく終わったから気ぃ抜いてたわ。えっとー……どこまで行ったんだっけ? サブロウの話はー……もう終わってんのね? ハイハイハイ。
「すみませーん! 誰かいませんかー?」
というわけで、気を取り直してナレーションを再開していこう。
えー……前回ね。サブロウが勝手に何かー……サラッとね。話を終わらせちゃったもんだから、今はそのー……ガールズチームがー……アレか。来てんのか。で、明芽が今ぁー……閉じこもってる皆に語りかけてると! うん! そういう状況だ。
「この声は……勇者様?」
「あれ? 裏代興業の奴がいねえ……」
「ってことは、もしかして……!」
明芽の呼びかけは街の住人たちのココロをアンロック。伝染するかのようにオープンハートさせていく。
そうなると当然、この後の流れは……
「うおおおおおおっ‼ 勇者様がこの街をお救いしてくださったぞぉおおお‼」
「さすが勇者様だわ! なんて慈悲深いお方なんでしょう!」
「やったああああっ‼ これで傭兵が乗る人型機動兵器の続編を心置きなく待てるぅぅぅ‼」
……と、まあ相変わらず勇者を褒め称えていくワンパターンな展開。
「あのー……違うんですけど……」
そんな明芽の声など届くはずもなく、再び騒ぎ立てるおバカな住人たち。どうやらこの分だと、お祭りはまだまだ続きそう。
ってなわけで、明芽率いる『TBA』が困惑する中、今回も勇者御一行によって街は救われたのであった。
◆
そして、後日――
「ちょっとサブロウくん‼ 起きなさいよッ‼」
又もや早朝襲撃をブチかますは、マナーの欠片を三角コーナーに捨ててきたリリス。ご就寝中のサブロウの身体に跨っておられる。
「も~う……何で君はいつもそんなに早いんだよぉ……。他にやることないのぉ……?」
「サブロウくんが昨日、勝手に帰っちゃうからでしょうが⁉ なんで何も言わずに帰っちゃうのよっ! メチャクチャ寂しいじゃない!」
「ごめんごめん……まさか君が、そんなに寂しがり屋だとは思わなかったよ」
「いや、正直その件が霞むくらいのことが起きちゃったからもうどうだっていいわ‼ それよりも奴隷商人の話よ、奴隷商人っ‼ 聞いた⁉」
「さあ? 知らないし、興味もない」
興味がないのは本当だが、知らないのは嘘である。
あの後、サブロウは倒した奴隷商人を【ラトビルスの空】によって、ある場所へと飛ばした。
嘘か誠か、その名を語った者である以上、討ち取った者としての筋を通す必要があったからだ。
勿論、送った場所は――『裏代興業』である。
捕まっていた美女たちも当然解放。
馬車には十人ほど囚われていたらしいが、実は可笑しなことに、その美女たちには見覚えがあったとのこと。しかも全員である。
その上、皆一様に羨望の眼差しを向けていた。サブロウの数少ない主人公っぽいシーンである。
奴隷商人と美女たち……この二つの案件がサブロウを、どこぞの団長様の如く憂鬱にさせていた。……またこの時期がやってきたのかと。
「かぁー! ダメよ、そんなことじゃ‼ そんなんだから、あの勇者ちゃんに先越されちゃうのよ! わかってる⁉」
「分かった分かった……。という訳で今回も結局、サブロウは主人公になれず……ってことで手打ちにしてくれ……もう……眠いから……」
あ、あぁ……まあ、今回は頑張った方じゃない?
「ええ。先程の男性が言うには間違いないはずなのですが……」
「ちょっとぉ~……エミィをここまで走らせといて、違ったとかじゃないでしょうね⁉」
……………………。
「でも、誰もいないね? さっきまでお祭り騒ぎだったのに……」
「ですが、いらっしゃらないということは裏代興業が来たという何よりの証。やはり、この場所で間違いないのでは?」
「その裏代興業すらいないってのはどういうわけ? ただのガセネタだったのかしら?」
……あれ? これもう始まってるの……?
「もう帰っちゃったとか……?」
「それですと囚われた方たちを、お助けするのが困難に……」
「追いかけるにしても誰もいないんじゃ、何処に行ったのかも分からないわね……」
おっと、いかんいかん。最終回っぽく終わったから気ぃ抜いてたわ。えっとー……どこまで行ったんだっけ? サブロウの話はー……もう終わってんのね? ハイハイハイ。
「すみませーん! 誰かいませんかー?」
というわけで、気を取り直してナレーションを再開していこう。
えー……前回ね。サブロウが勝手に何かー……サラッとね。話を終わらせちゃったもんだから、今はそのー……ガールズチームがー……アレか。来てんのか。で、明芽が今ぁー……閉じこもってる皆に語りかけてると! うん! そういう状況だ。
「この声は……勇者様?」
「あれ? 裏代興業の奴がいねえ……」
「ってことは、もしかして……!」
明芽の呼びかけは街の住人たちのココロをアンロック。伝染するかのようにオープンハートさせていく。
そうなると当然、この後の流れは……
「うおおおおおおっ‼ 勇者様がこの街をお救いしてくださったぞぉおおお‼」
「さすが勇者様だわ! なんて慈悲深いお方なんでしょう!」
「やったああああっ‼ これで傭兵が乗る人型機動兵器の続編を心置きなく待てるぅぅぅ‼」
……と、まあ相変わらず勇者を褒め称えていくワンパターンな展開。
「あのー……違うんですけど……」
そんな明芽の声など届くはずもなく、再び騒ぎ立てるおバカな住人たち。どうやらこの分だと、お祭りはまだまだ続きそう。
ってなわけで、明芽率いる『TBA』が困惑する中、今回も勇者御一行によって街は救われたのであった。
◆
そして、後日――
「ちょっとサブロウくん‼ 起きなさいよッ‼」
又もや早朝襲撃をブチかますは、マナーの欠片を三角コーナーに捨ててきたリリス。ご就寝中のサブロウの身体に跨っておられる。
「も~う……何で君はいつもそんなに早いんだよぉ……。他にやることないのぉ……?」
「サブロウくんが昨日、勝手に帰っちゃうからでしょうが⁉ なんで何も言わずに帰っちゃうのよっ! メチャクチャ寂しいじゃない!」
「ごめんごめん……まさか君が、そんなに寂しがり屋だとは思わなかったよ」
「いや、正直その件が霞むくらいのことが起きちゃったからもうどうだっていいわ‼ それよりも奴隷商人の話よ、奴隷商人っ‼ 聞いた⁉」
「さあ? 知らないし、興味もない」
興味がないのは本当だが、知らないのは嘘である。
あの後、サブロウは倒した奴隷商人を【ラトビルスの空】によって、ある場所へと飛ばした。
嘘か誠か、その名を語った者である以上、討ち取った者としての筋を通す必要があったからだ。
勿論、送った場所は――『裏代興業』である。
捕まっていた美女たちも当然解放。
馬車には十人ほど囚われていたらしいが、実は可笑しなことに、その美女たちには見覚えがあったとのこと。しかも全員である。
その上、皆一様に羨望の眼差しを向けていた。サブロウの数少ない主人公っぽいシーンである。
奴隷商人と美女たち……この二つの案件がサブロウを、どこぞの団長様の如く憂鬱にさせていた。……またこの時期がやってきたのかと。
「かぁー! ダメよ、そんなことじゃ‼ そんなんだから、あの勇者ちゃんに先越されちゃうのよ! わかってる⁉」
「分かった分かった……。という訳で今回も結局、サブロウは主人公になれず……ってことで手打ちにしてくれ……もう……眠いから……」
あ、あぁ……まあ、今回は頑張った方じゃない?
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる