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序章
第25話 おじさんと少女が邂逅しそうで、しなかったりするお話③
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「てえへんだ、てえへんだっ‼ 今、ガチの奴隷商人がそこまで――って、あれ⁉ 誰もいないっ⁉」
扉を勢い良く開けた下町感あふれる男は、『滑遁会』の惨状にクリビツ天仰。受付のお姉さんが代わりに出迎える。
「あら、こんにちわ。他の方たちなら女の子たちの尊さを前に、絶賛灰と化していますけど?」
「はぁ……相変わらずッスね、この人たちは……」
下町男が白き灰に向かって合掌していると、立っていた明芽が神妙な面持ちで話しかける。
「あのう、何かあったんですか? さっき奴隷商人って聞こえちゃったんですけど……」
「君は確か……最近来た勇者ちゃんッスね? 悪いことは言わねえ。すぐに逃げた方がいい!」
「でも、奴隷商人ってことは捕まってる人が居るってことですよね?」
尚も関わろうとする明芽に、困り顔を漂わせる下町男。
しかし、ここは止めねばならない。これから話す組織は、それほどに強大なのだから。
「いいッスか、勇者ちゃん? 奴隷商人は奴隷商人でも、今来てる奴らは『ガチ』のやつなんスよ。なんたってバックには、あの『裏代興業』が関わってるって噂だ」
明芽がリアクションすよりも前に、エミリアが「裏代興業ですって⁉」と、テーブルを叩きながら立ち上がる。
「エミィちゃん、知ってるの?」
「ええ……裏代興業っていうのは――」
裏代興業とは――
別の組織とはつるまない、裏社会でも異例な少数精鋭の組織のこと。
しかし、少数精鋭と侮るなかれ。
現状、裏代興業に逆らえる者は、この世界で一人しかいないとされており、実質、今の裏社会で一強状態だったりする。
そのトップに君臨する者の名は……『ブリッツ』。
七つある議席のうち、代行者権限を『三つ』所持しており、誰もが認めるであろう世界最強の男なのだ。解説終了――
「――っていうヤバい組織よ。関わるのはマズいわ!」
「そんな怖そうな人たちなんだ……」
元気いっぱいだった明芽も流石にその表情を引き攣らせていた。無理もない……彼女はまだ十七歳の少女なのだから。
そんな明芽を見たハルフリーダも立ち上がり、安心させる為にと補足解説をする。
「我が国でも、その名は轟いています。ですが、奴隷売買をしているというのは初耳ですね……。何かの間違いでは?」
「確かにそうッスけど、奴らはそう語ってる。なんにせよ関わらない方が身のためッスよ!」
下町男の発言で辺りには再び、緊張が走る。しかし――
「私……助けに行ってくるよ!」
そんな空気を断ち切るのも勿論……主人公である明芽の役目。
「いやっ……今の話聞いてたッスか⁉ 絶対、危ないですって⁉ 特に君みたいな女の子が行っちゃあ……」
当然、下町くんが止めに入る。
「それでも私は行く。だって……勇者だから! んーん、勇者じゃなくても……私は行く!」
だが、明芽は止まらない。
すると、その信念に同調するように、ハルフリーダが隣に立つ。
「ならば私も同行いたします。この街の方たちには歓迎していただいた恩がありますので」
「ハルちゃん……!」
明芽はハルフリーダの想いに頬を緩ませる。
そうなると当然、この子も動かざるを得ない。
「ハァ……しょ、しょうがないわね。アンタたちだけじゃ心配だしっ……エ、エミィも付いて行ってあげるわよ……!」
「エミィちゃん……!」
カタカタと震えつつも隣に並ぶエミリア。
並び立つ二人の仲間によって明芽の面持ちには、その名に恥じぬ明るさが芽吹き始めた。
そんな三人の友情パワーを前に下町くんは……
「フッ……どうやら止めても無駄なようッスね。わかりました……。なら、この街のことは任せたッス! 俺は隠れてるんで!」
綺麗なサムズアップで裏口へと避難した。
いや、お前も頑張れよ。何、さらっと女の子に任せちゃってんだよ。止めるだろ、普通……
とまあ、そんなこんなでトリプルガールズ・ビー・アンビシャス――略して『TBA』の初陣が決まった。
裏社会の組織が登場したことにより、ついにシリアス展開へと突入っ⁉ ……と見せかけて残念ながらそうはならないのである。
何故なら、あのやる気のないおじさんが……この街に居るからだ。
扉を勢い良く開けた下町感あふれる男は、『滑遁会』の惨状にクリビツ天仰。受付のお姉さんが代わりに出迎える。
「あら、こんにちわ。他の方たちなら女の子たちの尊さを前に、絶賛灰と化していますけど?」
「はぁ……相変わらずッスね、この人たちは……」
下町男が白き灰に向かって合掌していると、立っていた明芽が神妙な面持ちで話しかける。
「あのう、何かあったんですか? さっき奴隷商人って聞こえちゃったんですけど……」
「君は確か……最近来た勇者ちゃんッスね? 悪いことは言わねえ。すぐに逃げた方がいい!」
「でも、奴隷商人ってことは捕まってる人が居るってことですよね?」
尚も関わろうとする明芽に、困り顔を漂わせる下町男。
しかし、ここは止めねばならない。これから話す組織は、それほどに強大なのだから。
「いいッスか、勇者ちゃん? 奴隷商人は奴隷商人でも、今来てる奴らは『ガチ』のやつなんスよ。なんたってバックには、あの『裏代興業』が関わってるって噂だ」
明芽がリアクションすよりも前に、エミリアが「裏代興業ですって⁉」と、テーブルを叩きながら立ち上がる。
「エミィちゃん、知ってるの?」
「ええ……裏代興業っていうのは――」
裏代興業とは――
別の組織とはつるまない、裏社会でも異例な少数精鋭の組織のこと。
しかし、少数精鋭と侮るなかれ。
現状、裏代興業に逆らえる者は、この世界で一人しかいないとされており、実質、今の裏社会で一強状態だったりする。
そのトップに君臨する者の名は……『ブリッツ』。
七つある議席のうち、代行者権限を『三つ』所持しており、誰もが認めるであろう世界最強の男なのだ。解説終了――
「――っていうヤバい組織よ。関わるのはマズいわ!」
「そんな怖そうな人たちなんだ……」
元気いっぱいだった明芽も流石にその表情を引き攣らせていた。無理もない……彼女はまだ十七歳の少女なのだから。
そんな明芽を見たハルフリーダも立ち上がり、安心させる為にと補足解説をする。
「我が国でも、その名は轟いています。ですが、奴隷売買をしているというのは初耳ですね……。何かの間違いでは?」
「確かにそうッスけど、奴らはそう語ってる。なんにせよ関わらない方が身のためッスよ!」
下町男の発言で辺りには再び、緊張が走る。しかし――
「私……助けに行ってくるよ!」
そんな空気を断ち切るのも勿論……主人公である明芽の役目。
「いやっ……今の話聞いてたッスか⁉ 絶対、危ないですって⁉ 特に君みたいな女の子が行っちゃあ……」
当然、下町くんが止めに入る。
「それでも私は行く。だって……勇者だから! んーん、勇者じゃなくても……私は行く!」
だが、明芽は止まらない。
すると、その信念に同調するように、ハルフリーダが隣に立つ。
「ならば私も同行いたします。この街の方たちには歓迎していただいた恩がありますので」
「ハルちゃん……!」
明芽はハルフリーダの想いに頬を緩ませる。
そうなると当然、この子も動かざるを得ない。
「ハァ……しょ、しょうがないわね。アンタたちだけじゃ心配だしっ……エ、エミィも付いて行ってあげるわよ……!」
「エミィちゃん……!」
カタカタと震えつつも隣に並ぶエミリア。
並び立つ二人の仲間によって明芽の面持ちには、その名に恥じぬ明るさが芽吹き始めた。
そんな三人の友情パワーを前に下町くんは……
「フッ……どうやら止めても無駄なようッスね。わかりました……。なら、この街のことは任せたッス! 俺は隠れてるんで!」
綺麗なサムズアップで裏口へと避難した。
いや、お前も頑張れよ。何、さらっと女の子に任せちゃってんだよ。止めるだろ、普通……
とまあ、そんなこんなでトリプルガールズ・ビー・アンビシャス――略して『TBA』の初陣が決まった。
裏社会の組織が登場したことにより、ついにシリアス展開へと突入っ⁉ ……と見せかけて残念ながらそうはならないのである。
何故なら、あのやる気のないおじさんが……この街に居るからだ。
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