WATARI~サブロウくんのストップライフ~

最十 レイ

文字の大きさ
上 下
17 / 117
序章

第16話 やっぱり女の子たちの話がいい①

しおりを挟む
 セイターンの街、中央街――

 先日、魔王軍が攻め込んできたこの場所は、勇者フィーバーに連日お祭り騒ぎだった。
 しかし、その祭りも漸く佳境。お開きムードが漂っていたのだが……

〖祝! お姫様救出記念! 祝! 勇者御一行様! 祝! 歓迎会! 祝!〗

 という横断幕が、そこらかしこに掲げられ、どうやらお祭り騒ぎはもう暫く続くよう。っていうか、祝! 多すぎるだろ。

 相変わらずのフットワークの軽さを見せる住人たちは、祭りの続行にテンションが爆上がり。人目も憚らず、そこら中で盛りまくっていた。

 そんな騒ぐ理由としかとらえていない淫靡な連中を前に、両手で顔を隠すは三人の少女……レッド、エミリア、そして件のお姫様であるハルフリーダ王女だった。

 少女たちは耳まで真っ赤にし、『滑遁会なめとんかい』の扉に仲良く頭をぶつけては、そそくさと中へ入っていく。

 中には基本的に男客しかいない為か、若干騒がしいとはいえ、外に比べれば穏やかなものだった。まあ、ここでも盛り合ってたら地獄絵図どころの話ではないからな。

 レッドこと明芽あやめたちは空いている円卓へと腰を据える。
 まずは三人とも顔を手でパタパタ仰ぎ、火照った体のクールダウンを図るようだ。

「ふ、ふん! 相変わらずな連中ねっ! もう少し慎みってものを……ごにょごにょ」

 ドギマギという言葉がお似合いなのは、ぺったんこ界の姫であるエミリア。
 今まで友達が居なかったせいか、外の連中の距離感の近さに、動揺を隠せずにいるようだ。

「あはは……ほんとみんなアグレッシブだよね~。お姫様もいきなりでビックリしましたよね?」

 こんな時でも悪口を漏らさないのは、大天使界の大天使である大天使の明芽。
 お姫様を気遣う大天使っぷりに、男たちは私も含め大天使だった。

「はい……少々驚きましたが、賑やかで非常に良い街かと思います。わたくしの国とは正反対ですね」

 お淑やかで慎ましい佇まいは、まさしくお姫様なハルフリーダ。
 フードを外したお姿は美しいの一言に尽き、綺麗に結われたブロンドの髪と碧い瞳が、新たなるヒロインの可能性を照らし出す。光さす道t――

「お姫様の国か……。そう言えば、お姫様はどうしてこの街に? 悪い人たちに追いかけられてるって話は聞きましたけど」
「はい。実はわたくし……その……お友達が欲しくって……」
「友達……?」

 明芽が小首を傾げる中、エミリアもそのワードに聞き耳を立てる。

「お父様とお母様に愛されたわたくしは、過保護に育てられたがゆえに、お部屋で過ごすことが多かったのです。もちろん感謝はしているのですが、中々お友達を作る機会には恵まれなくて……。いつも一人、白鳥星雲のロゴがイカすゲームで遊んでいました」
「それはまた渋いチョイスで……」
「そんな悩みを抱えていた時、ある女性が現れてこう言ったのです。『サブロウくんに会えばその悩み、立ちどころに解決するわ!』と」

 明芽とエミリアは「「え? サブロウって……」」と、同時に顔を見合わせる。

「それを聞いたわたくしは居てもたってもいられず、城を飛び出したという訳なのですが……。その反応から察するに、お二方もサブロウ様をご存知なのですか?」

 その問いには親近感を抱きつつあるエミリアが答える。

「ええ。エミィたちもサブロウって人に会う為に、あの森に行ってたの。まあ、結局辿り着けなかったんだけどね」
「そうだったのですか……」
「っていうか、その……言い辛いんだけどさ。ひょっとして、お姫様……騙されたんじゃない?」

 ハルフリーダは「騙された……?」と、見る見るうちにその面持ちをお暗くしていく。

「だってそうでしょ? 出てった矢先に悪漢に追いかけられるなんておかしすぎる。その女に騙されたって考えるのが自然っていうか……」
「そう……ですよね。ハハ……やっぱりダメだなぁ、わたくしは。考えればすぐ分かることなのに。所詮、わたくしのような世間知らずは部屋で一人、白鳥星雲のロゴがイカすゲームを起動した瞬間にサウンドボタンを連打する人生がお似合いなんです」

 随分と個性的な落ち込み方を見せるハルフリーダ王女。
 エミリアも余計なことを言ってしまったと、あわあわしながら後悔の念に打ちひしがれている。

 そんな落ち込む少女たちを救うのは決まっていつも――主人公の役目。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...