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序章
第4話 魔王軍が攻めてきてるらしいけどお茶を飲む④
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『チィーッス! サブロウ先輩! ご無沙汰してまーすっ!』
――盛大に始まらなかった。
「え……?」
リリスは将軍の下げた空のガシャポンより軽い頭と、三角定規より直角な腰の曲がり具合に見事なキョトン顔を披露し、
「久しぶりだね、将軍」
対するサブロウは先程と変わらぬ様子で気だるげに対応していた。
『いや~、まさか先輩が居るとも知らず、この街にカチコミかけてしまうとは、本当にすいませんっしたー! このバーバリアン、一生の不覚!』
「別に気にしなくていいよ」
『そういう訳にはいきません! なんだったら今回のサブタイトル、『戦うのやめた!! 将軍バーバリアンよい子宣言』に変えますんで!』
「そこまでせんでいい。あと、七つの球を集めそうなサブタイにするな」
『いや~、でも本当に誤解しないでくださいね? 何か最近、あの~……勇者? とかいう輩が出てきたっつーんで、ここは魔王軍として一発かまさなアカンのとちゃうんか? ってうちの社長――じゃないや、魔王様が言うもんだから仕方なくっていうか何つーか~……ね?』
てんやわんやで許しを請う将軍に先程までの威厳はなく、その姿は最早球場に笑顔を届けるマスコットのそれであった。
「だから、いいって。僕、関係ないんだし」
『あ! もし、ご機嫌を損ねたと仰られるのであれば、ケツの穴を差し出す準備は、いつでもできてるんで! ハイ!』
将軍は仲間になりたそうにプリケツをサブロウへ向けた。
「要らないって……。別に怒ってないから、帰りたいなら早く帰れば?」
心底嫌そうな顔をするサブロウは、これ以上お下劣メンバーを増やすまいと、しっしと手を振る。
『なんとお優しい! その寛大なご慈悲は誠に遺憾であります!』
「テンパりすぎて使い方、間違ってるぞ」
見事な土下座をかました将軍は、呆れるサブロウから逃げるように、手を振りながら走り去っていく。
「じゃあ、先輩! 今度、お中元送りますんで!」
「はいはい」
「お手紙も書きます!」
「はいはい」
「あと、13なスナイパーと、ギャンブル巡査長と、山と海の確執も全巻送ります!」
「それはやめろ。読み切れない」
こうして将軍がプリケツを振りまきながら撤退したことで、熾烈を極めた魔王軍との戦いは幕を閉じたのであった。
「えーっと~……知り合い?」
「まあ、昔ちょっとね……」
驚くリリスにサブロウは深く答えず、さらっと流した。
◆
と、いう訳で……
「「「「「うおおおおおおおっ‼ 勇者レッド! 勇者レッド! 勇者レッド!」」」」
勇者レッドの働きにより、魔王軍は撤退していった。
村人たちは勇者を称え、レッドを取り囲むように歓喜の名を上げている。
そう。勇者レッドの力で街は救われたのだ。
誰もがそう思ったし、誰が見てもそうだった。
だがそれは、あくまで表向きの話。
そんな光景を遠巻きに見ていたリリスとサブロウ。
「あーあ。せっかく主人公に成り上がるチャンスだったのに……。全部あの子の手柄にされちゃったじゃない」
「まあ、いいじゃん。実際、あの子は頑張ってたわけだし。後は若いもんに任せようよ。老兵は去るのみってね」
サブロウは特に気にする様子もなく踵を返し、
「ハァ……天界への下剋上はお預けねぇ……」
リリスは肩を落としながら、その後に続く。
今回も結局、サブロウは主人公になれず。
そんなサブロウのお話は、コインで言えば裏向き。止まったままだ。
しかし、サブロウは気にしない。自由気ままに日常を謳歌していく。
そう。これがサブロウの物語だ。
――盛大に始まらなかった。
「え……?」
リリスは将軍の下げた空のガシャポンより軽い頭と、三角定規より直角な腰の曲がり具合に見事なキョトン顔を披露し、
「久しぶりだね、将軍」
対するサブロウは先程と変わらぬ様子で気だるげに対応していた。
『いや~、まさか先輩が居るとも知らず、この街にカチコミかけてしまうとは、本当にすいませんっしたー! このバーバリアン、一生の不覚!』
「別に気にしなくていいよ」
『そういう訳にはいきません! なんだったら今回のサブタイトル、『戦うのやめた!! 将軍バーバリアンよい子宣言』に変えますんで!』
「そこまでせんでいい。あと、七つの球を集めそうなサブタイにするな」
『いや~、でも本当に誤解しないでくださいね? 何か最近、あの~……勇者? とかいう輩が出てきたっつーんで、ここは魔王軍として一発かまさなアカンのとちゃうんか? ってうちの社長――じゃないや、魔王様が言うもんだから仕方なくっていうか何つーか~……ね?』
てんやわんやで許しを請う将軍に先程までの威厳はなく、その姿は最早球場に笑顔を届けるマスコットのそれであった。
「だから、いいって。僕、関係ないんだし」
『あ! もし、ご機嫌を損ねたと仰られるのであれば、ケツの穴を差し出す準備は、いつでもできてるんで! ハイ!』
将軍は仲間になりたそうにプリケツをサブロウへ向けた。
「要らないって……。別に怒ってないから、帰りたいなら早く帰れば?」
心底嫌そうな顔をするサブロウは、これ以上お下劣メンバーを増やすまいと、しっしと手を振る。
『なんとお優しい! その寛大なご慈悲は誠に遺憾であります!』
「テンパりすぎて使い方、間違ってるぞ」
見事な土下座をかました将軍は、呆れるサブロウから逃げるように、手を振りながら走り去っていく。
「じゃあ、先輩! 今度、お中元送りますんで!」
「はいはい」
「お手紙も書きます!」
「はいはい」
「あと、13なスナイパーと、ギャンブル巡査長と、山と海の確執も全巻送ります!」
「それはやめろ。読み切れない」
こうして将軍がプリケツを振りまきながら撤退したことで、熾烈を極めた魔王軍との戦いは幕を閉じたのであった。
「えーっと~……知り合い?」
「まあ、昔ちょっとね……」
驚くリリスにサブロウは深く答えず、さらっと流した。
◆
と、いう訳で……
「「「「「うおおおおおおおっ‼ 勇者レッド! 勇者レッド! 勇者レッド!」」」」
勇者レッドの働きにより、魔王軍は撤退していった。
村人たちは勇者を称え、レッドを取り囲むように歓喜の名を上げている。
そう。勇者レッドの力で街は救われたのだ。
誰もがそう思ったし、誰が見てもそうだった。
だがそれは、あくまで表向きの話。
そんな光景を遠巻きに見ていたリリスとサブロウ。
「あーあ。せっかく主人公に成り上がるチャンスだったのに……。全部あの子の手柄にされちゃったじゃない」
「まあ、いいじゃん。実際、あの子は頑張ってたわけだし。後は若いもんに任せようよ。老兵は去るのみってね」
サブロウは特に気にする様子もなく踵を返し、
「ハァ……天界への下剋上はお預けねぇ……」
リリスは肩を落としながら、その後に続く。
今回も結局、サブロウは主人公になれず。
そんなサブロウのお話は、コインで言えば裏向き。止まったままだ。
しかし、サブロウは気にしない。自由気ままに日常を謳歌していく。
そう。これがサブロウの物語だ。
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