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第二章 宝探し
第106話 ダブルフェイク
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「――ッ⁉」
弾ける銃声と共にバランスを崩す神田。
大和は間髪入れず、露わになった葦原へ銃を――
「何ッ……⁉」
しかし、眼前に葦原の姿はなかった。
それどころか葦原のポジションは変わらず、神田の後方。要はこの男、超反応で屈み、神田と同じ体勢になっていたのだ。
葦原は神田を盾にしつつ、そのままタックル。
大和へとぶつけると、無防備になった手元に握られる銃を蹴り飛ばした。
「お~い、なんてモン持ってんだよ? しかも仲間のこと撃ちやがって……」
葦原は眉を八の字に下げるも、その口元はどこか嬉しげ。
対して神田は無表情のまま、人形の如くゆっくりと立ち上がっていく。
「ただのゴムスタン弾だ。死にはしない。しかし、仲間か……。わざわざそんな言い回しするってことは、本当はスパイじゃなく、お前の能力によって操られてただけってことになるが?」
大和も大和で手元を押さえたまま、顔を歪めつつ身体を押し上げる。
「何? それを確かめる為に撃ったっての? 相変わらずキマってんね~、お前は」
葦原は乱れた髪をかき上げると「でも……」と話を逸らす。
「銃を使うってことは、お前の能力は攻撃タイプじゃないってことだ。もうさすがに万策尽きたと見える。違うか?」
「ああ……もう全部出し尽くしたよ。ほんっと……」
「なら俺の手を取れよ、大和慧。今ここで異能探求部を捨て、風紀委員に入ると誓うなら……優勝させてやる」
そう言って葦原はメリケンサックを外すと、最後の歩み寄りと手のひらを差し出す。
「したいんだろ? 優勝。ならこっち来いよ。その方がお前の為になるって。な?」
さらに付け加える葦原に対し、大和はただ、じっと手のひらを見つめるだけ。
だが暫しして、押さえていた手をゆっくりと差し出していく。
それ即ち、もう手がないということ。手がないのなら差し出された手を……取るしかない。
「いい子だ……」
葦原はその素直な後輩を前に、口角がふわりと舞い上がる。
それは決して『したり顔』ではなく、ただ純粋に嬉しさからくるものだった。が――
「――ッ⁉」
舞えば当然、いずれは落ちるもの。
大和は手を取ると見せかけて、己が手のひらで顔を隠したのだ。……まるで仮面でもつけるかのように。
「何か勘違いしてるようだな?」
まさに意趣返しか……仮面を取った大和は一転、ウィンクと共に不敵な笑みを見せ、葦原の顔から薄ら寒い笑みを消し去っていく。
「まさか……⁉」
「そうだ。オレは全部出し尽くしたと言ったんだ。だから――」
直後、耳に届くは何かが水面に落ちる音。
ポチャン、ポチャン……と、二回に分けて聞こえたその音は、次いで届いた軋むような音と共に葦原の鼓膜に触れる。
残り時間、51秒。
辺りは嘗てない栄光の輝きに包まれ、『宝探し』の勝者を祝福する。
当然、その中心にいたのは――
「……オレの勝ちだ」
『永遠の指輪』をはめる、もう一人の大和だった。
◆
エリア⑨――
『永遠の指輪』へと繋がる鍵……
そのコインが入っていた宝箱の上には、外様からの侵略者――渡が座していた。
足を組み、開かれた空を見上げる姿は、いつも一人……教室でボーっとしていた彼そのものである。
「終わった……か」
と、どこか寂しげに虚空へと呟く渡。
「まさか本当にやってのけるとはね……。大したもんだよ、彼は」
当然、他には……誰も居ない。
「……かもね。初めてできた真面な友達だからかな。こりゃあ、僕も約束……守らないとね」
いつもと変わらず、ただ独り言を言い、
「ま、なるようになるさ……」
いつもと変わらず、ただ去ってゆくだけ……
◆
エリア⑫――
「もう一人の……大和慧だと……⁉」
形勢逆転。今までニヒルな態度を気取っていた葦原も、さすがに動揺を隠せず、その生気のない目をこれでもかと見開いてる。
「油断したなぁ、葦原? もう一人のオレという存在を忘れてたなんて」
対してスーツに身を包んでいた方の大和は口端を上げに上げ、浸かっていた『泉』から足を出しては、制服姿の大和へと歩み寄っていく。
「いつから入れ代わっていた……?」
立ち並ぶ二人を前に歯を食い縛る葦原。
そう。二人はまさしく瓜二つ。見分けることは到底できないだろう。
「入れ代わる? 何を言ってるんだ?」
だからこそ、そこが穴。
制服姿の大和は言うや否や手のひらを差し出す。
するとスーツ姿の大和が早々に指輪を外し、受け渡すと――今度は制服姿の大和が『永遠の指輪』をはめてみせた。
直後――
ドンッ! ドンッ! ……と、上空に絶え間なく炸裂音が鳴り響く。
枝葉の隙間からは色取り取りの打ち上がる花火が窺える。もちろん相沢のものではない。
次いでデバイスや監視カメラに内蔵されていたスピーカーから、テーマパークのパレードが如き音楽が流れ始め、辺りは一気に華やかなムードへ。
『はーい、みなさんお疲れ様です。生徒会長の景川士です。ただ今、時刻11時59分42秒、『永遠の指輪』の装着が確認されました! よって今から優勝者を発表いたします。優勝者は……………………二年B組、大和慧くんです!』
弾ける銃声と共にバランスを崩す神田。
大和は間髪入れず、露わになった葦原へ銃を――
「何ッ……⁉」
しかし、眼前に葦原の姿はなかった。
それどころか葦原のポジションは変わらず、神田の後方。要はこの男、超反応で屈み、神田と同じ体勢になっていたのだ。
葦原は神田を盾にしつつ、そのままタックル。
大和へとぶつけると、無防備になった手元に握られる銃を蹴り飛ばした。
「お~い、なんてモン持ってんだよ? しかも仲間のこと撃ちやがって……」
葦原は眉を八の字に下げるも、その口元はどこか嬉しげ。
対して神田は無表情のまま、人形の如くゆっくりと立ち上がっていく。
「ただのゴムスタン弾だ。死にはしない。しかし、仲間か……。わざわざそんな言い回しするってことは、本当はスパイじゃなく、お前の能力によって操られてただけってことになるが?」
大和も大和で手元を押さえたまま、顔を歪めつつ身体を押し上げる。
「何? それを確かめる為に撃ったっての? 相変わらずキマってんね~、お前は」
葦原は乱れた髪をかき上げると「でも……」と話を逸らす。
「銃を使うってことは、お前の能力は攻撃タイプじゃないってことだ。もうさすがに万策尽きたと見える。違うか?」
「ああ……もう全部出し尽くしたよ。ほんっと……」
「なら俺の手を取れよ、大和慧。今ここで異能探求部を捨て、風紀委員に入ると誓うなら……優勝させてやる」
そう言って葦原はメリケンサックを外すと、最後の歩み寄りと手のひらを差し出す。
「したいんだろ? 優勝。ならこっち来いよ。その方がお前の為になるって。な?」
さらに付け加える葦原に対し、大和はただ、じっと手のひらを見つめるだけ。
だが暫しして、押さえていた手をゆっくりと差し出していく。
それ即ち、もう手がないということ。手がないのなら差し出された手を……取るしかない。
「いい子だ……」
葦原はその素直な後輩を前に、口角がふわりと舞い上がる。
それは決して『したり顔』ではなく、ただ純粋に嬉しさからくるものだった。が――
「――ッ⁉」
舞えば当然、いずれは落ちるもの。
大和は手を取ると見せかけて、己が手のひらで顔を隠したのだ。……まるで仮面でもつけるかのように。
「何か勘違いしてるようだな?」
まさに意趣返しか……仮面を取った大和は一転、ウィンクと共に不敵な笑みを見せ、葦原の顔から薄ら寒い笑みを消し去っていく。
「まさか……⁉」
「そうだ。オレは全部出し尽くしたと言ったんだ。だから――」
直後、耳に届くは何かが水面に落ちる音。
ポチャン、ポチャン……と、二回に分けて聞こえたその音は、次いで届いた軋むような音と共に葦原の鼓膜に触れる。
残り時間、51秒。
辺りは嘗てない栄光の輝きに包まれ、『宝探し』の勝者を祝福する。
当然、その中心にいたのは――
「……オレの勝ちだ」
『永遠の指輪』をはめる、もう一人の大和だった。
◆
エリア⑨――
『永遠の指輪』へと繋がる鍵……
そのコインが入っていた宝箱の上には、外様からの侵略者――渡が座していた。
足を組み、開かれた空を見上げる姿は、いつも一人……教室でボーっとしていた彼そのものである。
「終わった……か」
と、どこか寂しげに虚空へと呟く渡。
「まさか本当にやってのけるとはね……。大したもんだよ、彼は」
当然、他には……誰も居ない。
「……かもね。初めてできた真面な友達だからかな。こりゃあ、僕も約束……守らないとね」
いつもと変わらず、ただ独り言を言い、
「ま、なるようになるさ……」
いつもと変わらず、ただ去ってゆくだけ……
◆
エリア⑫――
「もう一人の……大和慧だと……⁉」
形勢逆転。今までニヒルな態度を気取っていた葦原も、さすがに動揺を隠せず、その生気のない目をこれでもかと見開いてる。
「油断したなぁ、葦原? もう一人のオレという存在を忘れてたなんて」
対してスーツに身を包んでいた方の大和は口端を上げに上げ、浸かっていた『泉』から足を出しては、制服姿の大和へと歩み寄っていく。
「いつから入れ代わっていた……?」
立ち並ぶ二人を前に歯を食い縛る葦原。
そう。二人はまさしく瓜二つ。見分けることは到底できないだろう。
「入れ代わる? 何を言ってるんだ?」
だからこそ、そこが穴。
制服姿の大和は言うや否や手のひらを差し出す。
するとスーツ姿の大和が早々に指輪を外し、受け渡すと――今度は制服姿の大和が『永遠の指輪』をはめてみせた。
直後――
ドンッ! ドンッ! ……と、上空に絶え間なく炸裂音が鳴り響く。
枝葉の隙間からは色取り取りの打ち上がる花火が窺える。もちろん相沢のものではない。
次いでデバイスや監視カメラに内蔵されていたスピーカーから、テーマパークのパレードが如き音楽が流れ始め、辺りは一気に華やかなムードへ。
『はーい、みなさんお疲れ様です。生徒会長の景川士です。ただ今、時刻11時59分42秒、『永遠の指輪』の装着が確認されました! よって今から優勝者を発表いたします。優勝者は……………………二年B組、大和慧くんです!』
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