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第二章 宝探し
第103話 学園の核弾頭、白翼のセイヴァー
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エリア⑥――
「イタタタタっ……お二人とも、大丈夫ですか……?」
上空での大爆発ののち、エリア⑥へと舞い落ちた牧瀬は、全身に感じる多種多様の痛みに顔を歪めつつ体を押し上げる。
「うん……何とか生きてるよ……。スーツは瀕死だけどね……」
蛯原は肩を押さえつつ牧瀬の下へ足を運ぶ。
紳士的に手を差し伸べるも普通に無視され、一人で立ち上がる彼女の背を悲しげに見つめていた。
「いやぁ~、見事な打ち上がりだったなぁ! 過去一じゃないかコレ? ハッハッハ!」
相沢は相沢で主犯のくせに、煤けた角刈りを大笑いしながら払っている。どうやら悪びれるつもりはないらしい。
牧瀬が少しばかりの抵抗と、相沢をねめつけていると……
「アタシが言うのも何だけどさ……アンタらうるさすぎよ?」
爆音なのか悲鳴なのか、とにかく何かを聞き付けたであろう藤宮が、呆れ眼で合流する。
「あ、藤宮さん! ご無事でしたか」
と、牧瀬は安堵の笑みを浮かべつつ藤宮の下へ。
「その言葉、そっくりそのまま返したいところなんだけど……目立ち過ぎたわね」
「え……? どういう意味でしょう?」
「どういう意味って……。アタシが察知できるくらいなんだから、そういう意味でしょうよ」
藤宮の言葉の意味を察し、今更ながら辺りを見回す牧瀬。
だが、もう時すでに遅かった……。周囲を取り囲んでいたのは、このエリアを根城とする二年A組の面々。藤宮同様、悲鳴を聞きつけ駆け付けたようだ。
「これはひょっとして……マズい感じですかね……?」
「ええ、マズいわ。ただ、アイツを連れてきたのはナイス人選かも」
牧瀬が「え……?」と藤宮へ視線を移すと、彼女の横顔には勝機を思わせる、笑窪ができあがっていた。そして――
「ねえねえ、アレって……?」
「ああ……『邀撃の魔女』だ」
「しかも『学園の核弾頭』までいやがる……!」
「嘘だろォ⁉ あと残り二十分ちょいなのにぃぃ……」
「ここで相沢くんなんて……」
その予想は正しく、二年A組の面々はこれ見よがしに顔を引き攣らせ、後退りしている。
「え? 『学園の核弾頭』? これは一体どういう……?」
牧瀬が異様な光景を前に小首を傾げていると、蛯原が得意気に「説明しよう!」と人差し指をピンと立たせた。
「相沢は名家『人間煙火店』の跡継ぎで、代々その力を受け継ぐ継承者の一人だ。その規模、爆発力、美しさは歴代最強で、去年同じクラスだった奴らは皆、異能演習で散々な目に遭ったそうな。気付いた頃には噂に尾ひれがついて、知る人ぞ知る『学園の核弾頭』となりましたとさ……。以上、経験者からの解説でした」
「あぁ……だから蛯原くん知ってたんですね。あの痛みを……」
牧瀬からの初めての同情と嘗てのトラウマで、嬉しいやら悲しいやら絶妙な表情を浮かべる蛯原。
そんな中、二年A組の一人が、それはそれは嫌そうな顔で一歩前に出る。
「おい、お前ら……何しに来た? 頼むからもう余計なことしないでくれ……」
その覇気のなさから察するに、戦闘の意志はない様子。
すると勝機を得た藤宮は、大和直伝? の『口撃』態勢へと移行する。
「アタシたちはただ『泉』を探してるだけ。アンタらに興味はないわ。それでも邪魔するって言うなら……ここで相沢を爆発させるッ!」
爆弾魔か。……と、牧瀬は心の中でツッコんだ。
だが、意外にもその効力は絶大だったようで……
「――ッ⁉ 爆発させるだって⁉」
二年A組の面々を恐れ戦かせた。
「そうよ! もし相沢が本気を出したら、この辺り一帯の宝箱は衝撃で開いちゃうでしょうね。つまり、このエリアごとアンタらもお陀仏ってわけよ!」
「ぐぬぬっ、なんと卑怯な……! わかった! わかったから! 俺らも一緒に探すから、それで勘弁してくれ……」
交渉(脅迫)は見事成立。それどころか捜索隊を増やすまでになった。
元々、他クラスは消極的である為、それも成功する一つの要因となったのだろう。
当の相沢は「へ?」とキョトン顔を見せていたが、その絶大なる隠し玉に恐れをなしたことが功を奏し、結果的に『泉』の有無は、ものの十分程度で割れることとなる。
◆
AM.11:44――
エリア⑱――
「はぁ……はぁ……はぁ……ッ!」
北から南、南から北へと走り回ってきた大和。
エリア⑱に着くなり、上がる息で残りのアイテム、『ピーピングカード』を使用する。
効果は『使用者のいるエリア情報を公開する』であり、文字通り大和のデバイスには続々とエリア情報を開示されていく。
「エリア⑱……所有クラス三年E組……滞在数13名……保有ポイント51……宝箱総数128……その他ギミック……なし……。『泉』はないか……」
大和は息を整えんと、近くにあった木へと凭れ掛かる。
開始してからずっと身体も頭も動きっぱなし……。さすがの大和も幾分か疲労の色を滲ませていた。
残り16分……。あれから一度も通信は入らない。
刻々と迫る『優勝』という重圧を前に、否応なく気まで滅入ってくる大和。
が、その時――
「ようやく見つけたぜ、大和ォ! 探し回っちまったぜ」
天から舞い落ちる羽と共に、白翼の『救済者』が翔け付けた。
「イタタタタっ……お二人とも、大丈夫ですか……?」
上空での大爆発ののち、エリア⑥へと舞い落ちた牧瀬は、全身に感じる多種多様の痛みに顔を歪めつつ体を押し上げる。
「うん……何とか生きてるよ……。スーツは瀕死だけどね……」
蛯原は肩を押さえつつ牧瀬の下へ足を運ぶ。
紳士的に手を差し伸べるも普通に無視され、一人で立ち上がる彼女の背を悲しげに見つめていた。
「いやぁ~、見事な打ち上がりだったなぁ! 過去一じゃないかコレ? ハッハッハ!」
相沢は相沢で主犯のくせに、煤けた角刈りを大笑いしながら払っている。どうやら悪びれるつもりはないらしい。
牧瀬が少しばかりの抵抗と、相沢をねめつけていると……
「アタシが言うのも何だけどさ……アンタらうるさすぎよ?」
爆音なのか悲鳴なのか、とにかく何かを聞き付けたであろう藤宮が、呆れ眼で合流する。
「あ、藤宮さん! ご無事でしたか」
と、牧瀬は安堵の笑みを浮かべつつ藤宮の下へ。
「その言葉、そっくりそのまま返したいところなんだけど……目立ち過ぎたわね」
「え……? どういう意味でしょう?」
「どういう意味って……。アタシが察知できるくらいなんだから、そういう意味でしょうよ」
藤宮の言葉の意味を察し、今更ながら辺りを見回す牧瀬。
だが、もう時すでに遅かった……。周囲を取り囲んでいたのは、このエリアを根城とする二年A組の面々。藤宮同様、悲鳴を聞きつけ駆け付けたようだ。
「これはひょっとして……マズい感じですかね……?」
「ええ、マズいわ。ただ、アイツを連れてきたのはナイス人選かも」
牧瀬が「え……?」と藤宮へ視線を移すと、彼女の横顔には勝機を思わせる、笑窪ができあがっていた。そして――
「ねえねえ、アレって……?」
「ああ……『邀撃の魔女』だ」
「しかも『学園の核弾頭』までいやがる……!」
「嘘だろォ⁉ あと残り二十分ちょいなのにぃぃ……」
「ここで相沢くんなんて……」
その予想は正しく、二年A組の面々はこれ見よがしに顔を引き攣らせ、後退りしている。
「え? 『学園の核弾頭』? これは一体どういう……?」
牧瀬が異様な光景を前に小首を傾げていると、蛯原が得意気に「説明しよう!」と人差し指をピンと立たせた。
「相沢は名家『人間煙火店』の跡継ぎで、代々その力を受け継ぐ継承者の一人だ。その規模、爆発力、美しさは歴代最強で、去年同じクラスだった奴らは皆、異能演習で散々な目に遭ったそうな。気付いた頃には噂に尾ひれがついて、知る人ぞ知る『学園の核弾頭』となりましたとさ……。以上、経験者からの解説でした」
「あぁ……だから蛯原くん知ってたんですね。あの痛みを……」
牧瀬からの初めての同情と嘗てのトラウマで、嬉しいやら悲しいやら絶妙な表情を浮かべる蛯原。
そんな中、二年A組の一人が、それはそれは嫌そうな顔で一歩前に出る。
「おい、お前ら……何しに来た? 頼むからもう余計なことしないでくれ……」
その覇気のなさから察するに、戦闘の意志はない様子。
すると勝機を得た藤宮は、大和直伝? の『口撃』態勢へと移行する。
「アタシたちはただ『泉』を探してるだけ。アンタらに興味はないわ。それでも邪魔するって言うなら……ここで相沢を爆発させるッ!」
爆弾魔か。……と、牧瀬は心の中でツッコんだ。
だが、意外にもその効力は絶大だったようで……
「――ッ⁉ 爆発させるだって⁉」
二年A組の面々を恐れ戦かせた。
「そうよ! もし相沢が本気を出したら、この辺り一帯の宝箱は衝撃で開いちゃうでしょうね。つまり、このエリアごとアンタらもお陀仏ってわけよ!」
「ぐぬぬっ、なんと卑怯な……! わかった! わかったから! 俺らも一緒に探すから、それで勘弁してくれ……」
交渉(脅迫)は見事成立。それどころか捜索隊を増やすまでになった。
元々、他クラスは消極的である為、それも成功する一つの要因となったのだろう。
当の相沢は「へ?」とキョトン顔を見せていたが、その絶大なる隠し玉に恐れをなしたことが功を奏し、結果的に『泉』の有無は、ものの十分程度で割れることとなる。
◆
AM.11:44――
エリア⑱――
「はぁ……はぁ……はぁ……ッ!」
北から南、南から北へと走り回ってきた大和。
エリア⑱に着くなり、上がる息で残りのアイテム、『ピーピングカード』を使用する。
効果は『使用者のいるエリア情報を公開する』であり、文字通り大和のデバイスには続々とエリア情報を開示されていく。
「エリア⑱……所有クラス三年E組……滞在数13名……保有ポイント51……宝箱総数128……その他ギミック……なし……。『泉』はないか……」
大和は息を整えんと、近くにあった木へと凭れ掛かる。
開始してからずっと身体も頭も動きっぱなし……。さすがの大和も幾分か疲労の色を滲ませていた。
残り16分……。あれから一度も通信は入らない。
刻々と迫る『優勝』という重圧を前に、否応なく気まで滅入ってくる大和。
が、その時――
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