口撃のヤマト~異能を狩る天才~

最十 レイ

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第二章 宝探し

第68話 集結せし総大将

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 総大将の集会に参加する、それ即ち生徒会長と密接にかかわらなければならないということ。『飛び降り事件』で暗躍し、大和を篭絡せんとしたあの景川と……

「景川……」

 そんな理由もあってか、辟易したリアクションを取る大和。

「こら。景川でしょ? みんなの前で呼び捨てにしたら変な関係だって疑われちゃうじゃない。ま、私はいいけどね?」

 対して景川は後ろ手を組み、相も変わらずお姉さんぶった微笑みを見せる。

「いつまでそのキャラでいるつもりだ? いい加減、胸焼けしてくるぞ」
「ふふっ……やめるつもりはないわ。大和くんが振り向いてくれるまでずっとね? それに素の私って結構暗いからさ。そんなんじゃ生徒会長の仕事も儘ならないし、この方がちょうどいいでしょ?」

 景川はその場でくるりと回ると、モデルのようなポーズを取り、同時にロングスカートがふわりと広がる。

 ここだけ切り取れば誰もが見惚れる優雅なお嬢様。
 しかし、景川の本性を知っていた大和は、「あっそ」と鼻で笑いながら雑に流す。

「相変わらず淡白なリアクションね……。まあ、いいわ。早いとこ入りましょ? 大丈夫、大和くんが心配してるようなことは何も起こらないから」

 景川は苦笑した面持ちを切り替え、扉を開けるなり先導していく。
 大和も幾分か警戒しつつ後に続くが、入室して早々、集っていた面々に意表を突かれることになる。

「これは……」
「言い忘れてたけど、前回のはほぼ辞退しちゃったから。つまり、ここにいる人たちが……本物の総大将よ」

 景川が述べたように総大将の顔ぶれはほぼ一新。
 恐らく烏間が手を引いたためだろうが、『口撃のヤマト』の異名ゆえ、奇異の目で見られていることに変わりはない。

「前回から続投してるのは大和くん。それから……」

 景川はそう続けながら、そのもう一人へと視線を移す。
 廊下側の一番手前、偉そうに座しているのは執行者の首領ドン――あの樫江田丈かしえだじょうだった。

「よお、クソガキ。また会ったな」
「アンタ……まだやるつもりかよ?」

 ねめつけてくる樫江田を、大和は少々面倒くさげに見下ろす。

「勘違いすんな。俺はやられた借りを返しに来ただけ。今の標的は……あいつだ」

 樫江田の視線に釣られ、大和は対極の窓辺に見知った男を見い出す。

「おう、兄弟! 席、取っといたでぇ!」

 教室中に響き渡る声は確かめるまでもなく、兄弟である伍堂のもの。前席の背もたれをポンポン叩いている。

「伍堂……なんでお前がここに?」

 大和は知り合いを見つけた嬉しさからか、自然と足が伍堂の方へ向く。

「ウチんとこの大将がいきなり辞めるぅ言い出してのう。せやからワシがなったったんや。兄弟一人じゃ寂しい思てな?」
「ハッ、別に寂しかないが……まあ、反動で幾分か安堵してるのは確かだ」
「へっ、正直でええ! ほれ? ここ座り」

 互いに笑みを交わしたのち、促された大和は窓際の一番前の席へ。
 全員が着席したことを確認すると、景川は外面バッチリのスマイルで壇上へと上がる。

「よし。じゃあ、揃ったようだし早速始めたいんだけど、みんなも知っての通り、総大将の入れ替えが何故か多分に発生しちゃってね。本来なら顔合わせだけのところを、今日はこのままルール説明までいっちゃうから。時間の都合上ね。ちゃーんと覚えてクラスでの作戦会議に役立てるのよ?」

 若干ピリつく室内に、伍堂の「ハーイ!」という返事だけが響く。
 景川は「元気なお返事ありがとう」と、お姉さんの体裁を保ちつつ続ける。

「さて、今回のレクリエーションは前述したように『宝探し』となっているわ。対象は『永遠とわの指輪』で、これを指にはめた者が優勝者よ。場所は学園の裏手にある演習場、『草創の森』で行うものとする。生徒全員には『偃武場』の専用スーツ『Turritopsisツリトプシス』が支給されるから、だということは覚悟しておいて。耐久力はかなりあるけど過信しないこと。防衛機能が停止した瞬間、使用者は失格となり、その対象に攻撃行動をとった者にも当然同じ処分が下される。エリアは二十一に区分され、その一つ一つに総大将が就くことになるわ。ここまでで何か質問は?」

 すると、中心に座していた生徒が、いの一番に手を上げる。

「景川さん。エリア決めはどうなさるおつもりかしら?」

 その人物は一言で言えば、絢爛華麗な女子生徒だった。
 学校指定である紺の制服には金の刺繍が節々目立ち、白のブラウスにはジャボ、おまけに金髪碧眼で縦ロールと、お嬢様要素に事欠かない外見をしていた。

 一見すると完璧な容姿だが、唯一欠点を上げるとすれば、その鋭すぎる目つきだろう。
 近寄り難さで言えば大和以上だが、景川に対する目つきは何処か和らげで、若干声のトーンも上がっているようだった。

「その件については、もう既に決定済みよ。机の中を見て」

 景川に促された総大将たちは、机の中から一枚の紙を見つける。
 その後、景川はリモコンでカーテンを閉めると共にスクリーンを出し、「はい、注目ー」とプロジェクターで『草創の森』らしきマップを映し出す。

「このマップには番号が振ってあって、左上の①番から順に時計回りで数字が割り振られてるの。外周が12エリア、内周は8、そして中央に1つ、㉑番があるという具合にね。当然、外周は後方から攻めれられる心配がないから有利として、内周は少し不利だけどまだマシな方。で、中央は言わずもがな、八方向から包囲される。つまり――」

 レーザーポインターで解説する景川の話をうっすら耳に入れつつ、大和は今一度、折りたたまれた紙を広げる。

「優勝から最も遠い、隔絶された孤島よ」

 そこには何度見ても変わらない――㉑という数字が刻まれていた。
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