アルトリアの花

マリネ

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半ば無理矢理にマリアと連れてきた少女は、お風呂に入れたら、目を疑うほどの美少女と変貌した。
「すっごく可愛いんですが。」
硬く絡まっていた髪は、ふわふわのプラチナブロンドに、煤けて垢まみれだった肌は、雪のように真っ白になった。
「ウサギのようだわ。」
ガリガリに痩せていて血色は良くないが、澄んだ赤い瞳が白ウサギを思い起こさせる。
「ガラスの怪我も血が出てた割に酷くなくて良かったわ。軟膏を塗って、しっかり治しましょうね。」
背丈に合う服が見つからず、シャツと半ズボンを着せて見たが、ワンピースのような丈になってしまった。

「なぜ、助ける?」
今まで言葉を発せず、されるがままになっていた彼女が、ぽつりと溢した。
「なぜかしら。」
改めて問われると、ちょっと困る。
確かに他に何人もの捕虜が居た中で、接する事が多かったからか、彼女の事を放っては置けなかった。
初めは小さな身で捕虜となる境遇に。それ以降は情が湧いたのかもしれない。
「気になったからかな?」
「気に入った?」
少し違うが、そうとも言う。
「さて、綺麗になったし皆に見せに行こう。皆びっくりするわよ。」
マリアがにっこりと微笑み、手を引いて歩き出した。

ソウンディックの執務室になっているという一画には、第五騎士団の面々とギルデガルドも揃っていた。
「本当に見違えるようだな。」
レティの後ろに隠れるようにしている少女の姿を、アルベルトがまじまじと眺める。
「娘さん。お名前は何というのかな?」
ギルデガルドの問いに、きゅとレティの服を握るとか細い声で答える。
「クロエ。」
「クロエか。もしや北方の生まれかな。儂も北方出身なのだ、懐かしい名だ。」
こくんと頷いて、ギルデガルドが眺めると、またすぐに隠れてしまった。
「クロエ。少し、お姉さん達にお話を聞かせてくれるかな?」
「いいよ。」
マリアには打ち解けているようだ。

「クロエは北方に住んでたのよね?何で森に居たのかは分かる?」
「分かる。住んでた北の寒い所、怖い魔物一杯来て住めなくなった。皆で暖かい所に行こうって言ってたのに、お母さんいなくなった。黒い人達、お腹空かせてたら食べさせてくれた。クロエ、木の加護あるから迷わない。付いて来い言われた。」
「よく話せたね。こっちにおいで。お茶とお菓子があるよ。」
カルテットは手招きすると、部屋の中心のソファーではなく、角にあるサイドテーブルの方へとクロエを座らせた。
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