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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
奇跡剣アロンフェグラル
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勇者達の試練が映し出される巨大水晶の置かれている玉座の間。そこは神聖リディシアの国王、そして彼に許された者だけが入れる神聖な場所。しかし、それは数時間前の事だ。
巨大水晶が大きく抉れ、欠片というより瓦礫に近い破片が床に敷かれた赤い絨毯をズタズタに切り裂き、綺麗な白い床を突き破っている。そして、国王が座す椅子は跡形もなく砕け散り、壁や床中を赤が染めていた。
「・・・っ」
無数の兵士の亡骸の山から誰かの声が漏れる。グチュグチャと亡骸の切り裂かれた腹部から溢れる臓器の音を鳴らしながらその誰かが這い出てきた。
他の兵士の様に銀色の鎧ではなく、紫と黒で彩られし鎧を身につける白い髪をした女騎士。彼女の名前は、リレウ・アンティエール。神聖リディシア王国の国王の娘であるレティリアの守護騎士であり、瑛太を牢獄にぶち込んだ張本人でもある。
「・・・姫様は・・・どこ、に?」
全身に無数の切り傷と打撲痕を負いながらも、彼女は自分よりも、主であるレティリアの身を最優先する。視界は歪み、頭がクラクラしている為、足取りはおぼつかない。
「・・・ひめ、さま」
そう何度もレティリアの名を呟きながら探し回っていると、ザッと何かが床に擦れる音がした。リレウは痛む身体を引きずるようにしながら、音のした方へ向かう。徐々に音のする方に近づく度に、咳き込む音や服の摺れる音が聞こえてくる。
「・・・っ」
リレウは、自身の得物【奇跡剣アロンフェグラル】を鞘から抜き、警戒しながら瓦礫の裏を覗き込んだ。
「・・・!? 姫様!!?」
リレウは瓦礫裏で、床に倒れ込み血だらけの顔を両手で覆い、激痛に耐えるような声を漏らす金髪の少女レティリアを見つけ、剣を放って駆け寄った。
「かの者の傷を癒せ、【治癒】!」
即座に治癒魔法を唱え、レティリアの傷を癒していく。だが、治っていくのは身体にある打撲痕や切り傷だけ。未だにレティリアは顔を押え苦しんでいる。
「姫様、一旦失礼します」
リレウは一言謝ってから、顔を隠す両手を引き剥がして顔の様子を見る。そして、息を呑んだ。
あらわになった彼女の顔には、否、両眼は光を奪われていた。簡単に言えば、潰されていた。あの綺麗な瞳から溢れるのは涙じゃない。真っ赤な血だ。
彼女がみている世界は奪われてしまった。
「は、はい!私です!姫様の騎士、リレウです!」
そう何度もレティリアの言葉に返答すると、彼女は安心したように微笑んだ。
「安心したわ。あなたが無事で」
なぜ、そんなことが言える。リレウは歯噛みする。目を潰され光を失ったと言うのに、なぜ人の心配をするのか。
なぜ、姫様を守れなかった無力な私を罵らないのか。と、リレウは思った。
「待っててくださいね…姫様」
リレウは、先程放り投げた【奇跡剣アロンフェグラル】を握り直し、唱える。
「【奇跡剣アロンフェグラル】よ!お前が奇跡の剣と言うならば、今ここにその力を証明しろ!!」
そして剣を床に突き刺した。すると、剣を中心に魔法陣が構築され、レティリアの全身を覆った。その魔法陣は徐々に輝きを増し、やがてレティリアの真下から巨人の開いた両手が現れた。口をパックンと開いたような両手はレティリアをその掌に乗せた状態で止まった。
『主の命により、またひとつ【奇跡】が生まれる』
男の声が突如響き、この世に新たな【奇跡】を生み出す宣告が放たれた。
巨大水晶が大きく抉れ、欠片というより瓦礫に近い破片が床に敷かれた赤い絨毯をズタズタに切り裂き、綺麗な白い床を突き破っている。そして、国王が座す椅子は跡形もなく砕け散り、壁や床中を赤が染めていた。
「・・・っ」
無数の兵士の亡骸の山から誰かの声が漏れる。グチュグチャと亡骸の切り裂かれた腹部から溢れる臓器の音を鳴らしながらその誰かが這い出てきた。
他の兵士の様に銀色の鎧ではなく、紫と黒で彩られし鎧を身につける白い髪をした女騎士。彼女の名前は、リレウ・アンティエール。神聖リディシア王国の国王の娘であるレティリアの守護騎士であり、瑛太を牢獄にぶち込んだ張本人でもある。
「・・・姫様は・・・どこ、に?」
全身に無数の切り傷と打撲痕を負いながらも、彼女は自分よりも、主であるレティリアの身を最優先する。視界は歪み、頭がクラクラしている為、足取りはおぼつかない。
「・・・ひめ、さま」
そう何度もレティリアの名を呟きながら探し回っていると、ザッと何かが床に擦れる音がした。リレウは痛む身体を引きずるようにしながら、音のした方へ向かう。徐々に音のする方に近づく度に、咳き込む音や服の摺れる音が聞こえてくる。
「・・・っ」
リレウは、自身の得物【奇跡剣アロンフェグラル】を鞘から抜き、警戒しながら瓦礫の裏を覗き込んだ。
「・・・!? 姫様!!?」
リレウは瓦礫裏で、床に倒れ込み血だらけの顔を両手で覆い、激痛に耐えるような声を漏らす金髪の少女レティリアを見つけ、剣を放って駆け寄った。
「かの者の傷を癒せ、【治癒】!」
即座に治癒魔法を唱え、レティリアの傷を癒していく。だが、治っていくのは身体にある打撲痕や切り傷だけ。未だにレティリアは顔を押え苦しんでいる。
「姫様、一旦失礼します」
リレウは一言謝ってから、顔を隠す両手を引き剥がして顔の様子を見る。そして、息を呑んだ。
あらわになった彼女の顔には、否、両眼は光を奪われていた。簡単に言えば、潰されていた。あの綺麗な瞳から溢れるのは涙じゃない。真っ赤な血だ。
彼女がみている世界は奪われてしまった。
「は、はい!私です!姫様の騎士、リレウです!」
そう何度もレティリアの言葉に返答すると、彼女は安心したように微笑んだ。
「安心したわ。あなたが無事で」
なぜ、そんなことが言える。リレウは歯噛みする。目を潰され光を失ったと言うのに、なぜ人の心配をするのか。
なぜ、姫様を守れなかった無力な私を罵らないのか。と、リレウは思った。
「待っててくださいね…姫様」
リレウは、先程放り投げた【奇跡剣アロンフェグラル】を握り直し、唱える。
「【奇跡剣アロンフェグラル】よ!お前が奇跡の剣と言うならば、今ここにその力を証明しろ!!」
そして剣を床に突き刺した。すると、剣を中心に魔法陣が構築され、レティリアの全身を覆った。その魔法陣は徐々に輝きを増し、やがてレティリアの真下から巨人の開いた両手が現れた。口をパックンと開いたような両手はレティリアをその掌に乗せた状態で止まった。
『主の命により、またひとつ【奇跡】が生まれる』
男の声が突如響き、この世に新たな【奇跡】を生み出す宣告が放たれた。
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