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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
【小さな太陽】ユルゲン・アステイラ ①
しおりを挟む俺の親父が統治するアーレンデル皇国は争いの耐えない国だ。他国の領土を力ずくで奪ってきた。そして付けられた呼称が【狂呪愚国】。 『狂気という呪いにかかった愚かな国』という意味らしい。小さい頃に何度も親父から聞かされた『欲しければ殺し奪え』という言葉。
俺は、その考え、その考えを正しいと思い込む国民、そして--アーレンデル皇国そのものが嫌いだった。
ただ、アーレンデル皇国で暮らすにはその法に従うしかなかった。なぜなら、裏切り・反逆等を行った者、その法に疑問を抱いた者は処刑されるからだ。俺は、それを破り、処刑される国民を5歳の頃から沢山見てきた。その中には、世話になった恩師や友人、その家族などもいた。
小さい頃は法を破る奴らが悪いと思っていた。でも、悪いのはその法を作った親父だった。
処刑された恩師が言っていた。
『前の王様は平和と国民を愛する方だった。国民が傷つくことを嫌い、国民の死を自身の家族のように悲しむお優しい心を持っていた。そう、お前のように。 この国は間違っている。 ユルゲン、おお前が、この国を変える最後の希望だ』
最初は何を言ってるのか分からなかった。だけど、気づいた。初めて、城を抜け出した時、 俺は見た。
貧困に苦しみ、いつ訪れるかも分からない戦に怯える国民達を。
その人々を見た時、俺は決意した。
【国民達を、この国の狂った法から救い出す】と。
その為に必死に鍛えた。親父は戦闘においてはアーレンデル皇国最強と謳われるほどの実力者。今の俺では勝てない。だから、毎日毎日、鍛えた。苦手な魔法を必死に覚えた。嫌いな勉学を必死に頑張った。年月が経ち、14歳になった俺は親父に呼び出された。 そして、告げられた。
『ユルゲン。貴様は俺が作った法が気に入らないらしいな。俺が気づかないと思ったのか?』
全てを知られていた。体が震えた。
『本来なら貴様を俺が直々に殺すつもりだったが、残念な事にそれが不可能となった。運が良かったな、ユルゲン。貴様は、【勇者】に選ばれた』
親父は不満げにそう告げた。そして--
『勇者となり、死ね。馬鹿息子』
それが、親父から息子である俺に伝えられた最後の言葉だった。
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