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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
影姫シーカ
しおりを挟む美しくそびえ立つ煌炎で創られた巨大な城。かつて五代姫の一柱、【煌姫リーゼ】が支配していた領域。その域はあっと言う間に周囲の木々を呑み込み、煌炎に彩られた世界へと変貌する。それも元の景色をひとつ残さず煌炎がメラメラと燃えている。展開範囲はガヴォットとシエル、そしてユリセスを囲う程度。普通に考えれば余りにも範囲が狭いと思われがちだが、範囲は自由に広げることが出来る。今回は標的が一人で距離も近い為、範囲を狭める策にしたのだ。そしてそれを成し遂げたユリセスの身体を依代とした【煌姫リーゼ】はため息をついて、
『久々の受肉だって言うのに何で冴えない少年を守らなきゃいけないのかしら。 はぁ…。ユリセスに感謝しなさいよ。 シーカ』
そう言葉を紡ぐ。そして【煌姫リーゼ】は地面に突き刺したリーゼレイドを握る。すると、ドクンッと剣が生きているかのように脈打ち、肌を焼くのでは無いかと錯覚させる程の灼熱が剣を覆った。
『やれやれ、相変わらず生意気な娘ね、リーゼ。それと、妾はおばさまではなくお姉さんよ』
「勝手に出てくんなっていつも言ってるだろ、クソ魔女」
魔力の回復により、自由に出てくることのできるようになったシーカにシエルは毒づく。
『あら、出るのも出ないのも妾の勝手でしょう。それに、元とは言えば坊やが最初から妾に肉体を譲らなかったのが敗因じゃない』
「・・・ヤダね。前みたな事になるのはゴメンだ。お前のせいで散々絞られたんだからな」
シエルは過去に起きたトラウマを思い出しかけて頭を振った。二度と思い出したくない過去に何重にもロックをかけて置く。
「まぁ、良い。それよりもお前から見て、彼女はアイツに勝てそうか?」
『そうねぇ。五分五分ってところかしら』
シエルの質問にシーカはそう答える。
「あれで五分五分って自分で最強って言ってるだけあるんだな、あのガヴォットとかいう男」
『因みに坊やが私に肉体を譲っていれば余裕で勝ってたわ』
シーカのちくちく発言にシエルは呆れたため息をつく。
「はぁ…。前から思ってたけど、どうしたらそんな自信が湧いてくるんだ、お前は?」
『ねぇ、もう平気なら私に守られてないで自分で戦ってくれる? 後、シーカのその言葉は馬鹿げててて腹立つけどホントの事よ。五代姫の中で一番強いんだから』
ガヴォットの攻撃を軽々としのぎながらリーゼが不機嫌そうに声をかけてきた。それに対し、シーカはドヤ顔でシエルを見やる。
「・・・はぁ。分かったよ。クソ魔女、今回は体貸してやる」
『あら、意外と素直なのね。で、一応確認なんだけど、今回は力のセーブ無しでも文句は無いわよね?』
「--好きにしろ」
シーカは掌に凝縮された闇の塊を生み出し、不機嫌に答えたシエルの胸に押し当てた。すると、ドクンドクンっと鼓動の音がなり、シエルの肉体とシーカの霊体が溶けて混じり合っていく。やがて、捻れた片角を生やし、足元部分を動きやすく裂かれたデザインの闇色のドレスを纏った青年とも少女ともとれる見た目をした姿に変わった。その存在は片手に握られた影姫剣シーカリウスに似た長剣の切っ先を前に向け、
「『執行の時間よ(だ)、シーカリウス』」
シエルとシーカの重なった声で、そう告げた。
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