38 / 42
第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
最強の男
しおりを挟む
「--っ!?」
足元から突如発現した火柱。それを間一髪で回避する。そして牽制するように通常の魔弾を撃ちながら、シエルは状況を整理し始める。
(…あの男はどこから現れた?気配は感じとれなかった。オマケに敵味方関係無しの無差別攻撃。魔盗団とは違う別勢力か?)
シエルは有り得る限りの予想を次々と頭の中に浮かべていく。例えば、【魔盗団】ではあるが味方でも制御出来ない狂人。他にもいくつか考えられるが、あの男を長い間、相手している暇はないと、シエルは思考を切替える。
「どこの誰だか知らないけど、早めに処理させてもらう」
その一言と共に、複数の魔弾を連続で詰めていく。そして引き金を引く。するとシエルが両手に握っている魔法銃の銃口から一気に複数の魔弾が放出された。縦横無尽に駆け回る黒き弾丸から、白き雷を纏いし弾丸、全てを切り裂く緑の弾丸、全てを焼き尽くす炎槍と化した赤き弾丸、複数の水剣と化した青き弾丸が謎の男を葬り去らんと襲いかかる。
しかし--
「--邪魔だ」
その一言と共に手を払った瞬間、魔弾の効果が全て消えた。更に暴風が巻き起こり、シエルの身体を切り裂く。
「…ぐぅ!?」
幾度となく強敵と死闘を繰り広げてきたシエルだったが、今回の敵もカダと同じで勝てるかは定かではない。恐らくと言うより確実に魔力銃では大したダメージも与えられないと察し、シエルは距離をとって、彼女を呼び出すことにする。
「出番だ、影姫シーカ」
何も無い空間から闇が滲みだし、肥大化。そして、闇色のドレスを纏ったシーカが姿を現す。
『あら、大変そうね。坊や』
シエルの様子を見て、面白そうにクスクスと笑う。その態度に舌打ちをした後、手の平をシーカに向ける。
「かつて世界に君臨せし五代姫の一柱であり、影の女王【影姫シーカ】よ。契約者の声に応じろ」
そして、【影姫剣シーカリウス】召喚の儀式を強引に執り行う。
『…はぁ。仕方ないわね』
身勝手な主の態度に溜息をつき、手の平をシエルに向ける。
『妾が認めし影の執行人シエン・F・クロイセスの声に応じ、全てを喰らい尽くす永遠なる影の力を与える』
そしてシエルとシーカの声が重なり、
「『影は剣となりて、血を求める』」
そう唱えた。すると、影が放出され、一振りの短剣を生み出す。シエルはソレの柄を握り、構える。
「執行の時間だ、影姫剣シーカリウス」
その一言と共に謎の男の懐まで一瞬にして、距離を詰める。その際に、自身の足元から生み出した影で男を拘束する。軽く息を吸い込み、言葉を紡ぐ。
「影殺術--【黒刃棘影】」
グサリと男の腹部に刃を突き刺す。そして、影が黒刃を形成し、臓器などを切り刻む。完全なる殺人技。呆気の無い幕引き。シエルは血を払い、短刀を異空間へと返還する。
「ふぅ…。意外とてこずったな」
シエルは疲労の溜まりきった身体を休ませるように地面に倒れ込むように座る。恐らく連戦は不可能に近い。しかし、それを待ってくれるほど敵も甘くはない。ドクンっと男の身体から心臓の鼓動が突然鳴り響く。死に体と化した筈なのにだ。
「…嘘だろ」
シエルは毒づく。あの一撃で致命傷を受けたはずなのに、その事実は覆される。
「…あっぶねえ!もう少しで人生終了だったぜ」
ベキバキと首を鳴らし、その男は立ち上がった。そして、
「あ、そうえば名乗ってなかったな」
男は思い出したかのように呟き、
「俺はガヴォット・ジャーヴィス。最強の男だ。覚えとけ、小僧」
シエルの眼前まで接近、獰猛な笑みと共に顔面を拳で打ち抜いた。
足元から突如発現した火柱。それを間一髪で回避する。そして牽制するように通常の魔弾を撃ちながら、シエルは状況を整理し始める。
(…あの男はどこから現れた?気配は感じとれなかった。オマケに敵味方関係無しの無差別攻撃。魔盗団とは違う別勢力か?)
シエルは有り得る限りの予想を次々と頭の中に浮かべていく。例えば、【魔盗団】ではあるが味方でも制御出来ない狂人。他にもいくつか考えられるが、あの男を長い間、相手している暇はないと、シエルは思考を切替える。
「どこの誰だか知らないけど、早めに処理させてもらう」
その一言と共に、複数の魔弾を連続で詰めていく。そして引き金を引く。するとシエルが両手に握っている魔法銃の銃口から一気に複数の魔弾が放出された。縦横無尽に駆け回る黒き弾丸から、白き雷を纏いし弾丸、全てを切り裂く緑の弾丸、全てを焼き尽くす炎槍と化した赤き弾丸、複数の水剣と化した青き弾丸が謎の男を葬り去らんと襲いかかる。
しかし--
「--邪魔だ」
その一言と共に手を払った瞬間、魔弾の効果が全て消えた。更に暴風が巻き起こり、シエルの身体を切り裂く。
「…ぐぅ!?」
幾度となく強敵と死闘を繰り広げてきたシエルだったが、今回の敵もカダと同じで勝てるかは定かではない。恐らくと言うより確実に魔力銃では大したダメージも与えられないと察し、シエルは距離をとって、彼女を呼び出すことにする。
「出番だ、影姫シーカ」
何も無い空間から闇が滲みだし、肥大化。そして、闇色のドレスを纏ったシーカが姿を現す。
『あら、大変そうね。坊や』
シエルの様子を見て、面白そうにクスクスと笑う。その態度に舌打ちをした後、手の平をシーカに向ける。
「かつて世界に君臨せし五代姫の一柱であり、影の女王【影姫シーカ】よ。契約者の声に応じろ」
そして、【影姫剣シーカリウス】召喚の儀式を強引に執り行う。
『…はぁ。仕方ないわね』
身勝手な主の態度に溜息をつき、手の平をシエルに向ける。
『妾が認めし影の執行人シエン・F・クロイセスの声に応じ、全てを喰らい尽くす永遠なる影の力を与える』
そしてシエルとシーカの声が重なり、
「『影は剣となりて、血を求める』」
そう唱えた。すると、影が放出され、一振りの短剣を生み出す。シエルはソレの柄を握り、構える。
「執行の時間だ、影姫剣シーカリウス」
その一言と共に謎の男の懐まで一瞬にして、距離を詰める。その際に、自身の足元から生み出した影で男を拘束する。軽く息を吸い込み、言葉を紡ぐ。
「影殺術--【黒刃棘影】」
グサリと男の腹部に刃を突き刺す。そして、影が黒刃を形成し、臓器などを切り刻む。完全なる殺人技。呆気の無い幕引き。シエルは血を払い、短刀を異空間へと返還する。
「ふぅ…。意外とてこずったな」
シエルは疲労の溜まりきった身体を休ませるように地面に倒れ込むように座る。恐らく連戦は不可能に近い。しかし、それを待ってくれるほど敵も甘くはない。ドクンっと男の身体から心臓の鼓動が突然鳴り響く。死に体と化した筈なのにだ。
「…嘘だろ」
シエルは毒づく。あの一撃で致命傷を受けたはずなのに、その事実は覆される。
「…あっぶねえ!もう少しで人生終了だったぜ」
ベキバキと首を鳴らし、その男は立ち上がった。そして、
「あ、そうえば名乗ってなかったな」
男は思い出したかのように呟き、
「俺はガヴォット・ジャーヴィス。最強の男だ。覚えとけ、小僧」
シエルの眼前まで接近、獰猛な笑みと共に顔面を拳で打ち抜いた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる