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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
悪の目的
しおりを挟む唐突に告げられた失踪事件の真実。シエンは一瞬、カダが告げた言葉を理解できなかった。それも無理はない。こうもあっさりと簡単に悪びれもなく罪悪感なんて存在のない不気味な笑みを浮かべて『私が犯人です』なんて言葉を吐ける神経が信じられないからだ。ただ数秒後には、その真実がスゥーと頭に入っていき全てを受け入れる。本来であれば、感情的になって怒る場面なのだろうが、それは相手の思うつぼであり、こういう時こそ冷静な判断ができる状態で、いなければならない。
「ふむ。もう少し感情的になる場面だと思ったのですが、どうやら予想は外れたみたいですね」
カダは、『残念です』と、わざとらしく肩を落とす。その態度を見てるだけで不快な気持ちになる。まるで、人間の皮を被った怪物が人間の真似をしている様で、生理的に受け付けない。シエンは警戒を解かぬまま、カダの動向を伺う。
「まぁ、いいでしょう。 それよりも私がどのようにして失踪事件を起こしたのかを教えましょう」
ニッコリと笑い、今度は自ら犯行の手口を語り始める。
「まず初めに私は、この【刻罪ノ欠片】を集める為に各地で【禁忌指定魔獣】と【四大魔獣】の封印を解きました。そして雑魚冒険者が沢山集まる【ラビル遺跡】に目をつけ、ここに潜伏することにした。ただ、冒険者をこの欠片に吸収させるには殺すしか方法がなく、そんなことをすれば痕跡が残りバレてしまう。そこで、考えたのが古の魔法に位置づけられた【空間魔法】を使うという案。本来であれば、誰一人使うことが出来ないと言われている魔法だが、私はこの時代の生物ではない。とまぁ、あとは簡単さ。先程のように気配を殺し姿を隠して潜伏し、冒険者を空間魔法で別空間に飛ばしてそこで【グリフェンリード】に殺させるという手順です。しかし、【刻罪ノ欠片】に血を吸わせすぎた事で【グリフェンリード】が別空間の壁を破壊し、このようにこの階層に姿を現してしまったのです。いやはや、ついにバレてしまうとは残念です」
わざとらしく落胆するカダ。ペラペラと犯行の手口を語り、あまつさえ【禁忌指定魔獣】だけでなく【四大魔獣】の封印まで解くとはどれだけの罪を刻んでいるのか。こんな事をした以上、捕縛されたら最後、カダは処刑確定だ。そして、ここには犯人を捕えるための権限を得るシエンがいる。しかし、ここで迂闊に手を出せば、戦闘不能状態のラフィーナ達に危険が及ぶ。よって、ここは慎重に必要な情報をさらにカダから引き出して、この場を立ち去る以外道はない。
「…お前は…その欠片を集めて何がしたいんだ?」
「そりゃ決まってるじゃないですか。善と悪の認識を入れ替えるんですよ。ほら、今の世って生きにくくありませんか? 人を殺したら悪。人を犯したら悪。人から物を奪ったら悪。どれもこれも悪だ悪だとのたまうこの世界はあまりにも生きにくい。だから、私はこの欠片で殺す事も犯す事も奪う事も善だと認識させる世界に改変する!!」
カダはそう宣言する。この世の決められた理を破壊し、改変すると。これが冗談で言っていたとしても許されることでは無い。それに【刻罪ノ欠片】がどんなの効果を持つのかを知らないシエンにとっては、それが嘘だとしても信じるしかない。少しでも世界改変の可能性があるのなら信用せざる得ない。
「とまぁ、そういう訳なので貴方の相手をしてる暇はないわけですよ。てなわけで、そろそろ私はこれでおいとまさせていただきます。またいずれ会うことが出来たら、その時は貴方と遊んであげます」
カダは最後にそう告げた後、転移魔法で姿を消した。
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