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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編

ギルド統括者の命令

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冒険者ギルド【クレイセルド】にある『統括者の部屋』に職務をこなしていたシエンとラフィーナという名前の女性職員が呼ばれていた。二人はいきなりの呼び出しに疑問を抱いていたが、それは直ぐに解決した。

「君ら二人に【ラビル遺跡】の探索をお願いしたい」

ギルド統括者【イドル・マーセリン】が告げた。彼が言う【ラビル遺跡】は冒険者がよく行き交うと言われる狩場のひとつだ。話によれば大した宝なんで存在せず、湧いてくる魔獣も雑魚ばかりとの事だった。クエストランクで言うならFクラス位の楽な仕事。シエンとラフィーナにとっては赤子の手をひねるレベルだ。

「【ラビル遺跡】っすか。別にいいですけど、今更あんなボロっちい遺跡になんの用で?」

「どうやら最近、あの遺跡で冒険者の失踪事件が多発していてね。それも決まって駆け出しの冒険者が、だ」

「それって単に魔獣にやられただけでは?駆け出しならよくあることですよ」

アホらしい、とシエンはため息をつく。どんな仕事かと思えばなんてことは無いヤル気なんて湧いてこない内容。駆け出しの冒険者は自分の力を理解せず無謀な冒険に向かうことが多い。それで命を落とした冒険者達をシエンは何度も見てきた。嫌になるほどに。

「確かによくある話だ。しかし、おかしな点があってね。失踪する冒険者は他の冒険者達の目の前で唐突に消えるみたいなんだ。オマケにあの遺跡には人を転移させるようなトラップも魔獣もいない。だと言うのに消えたとなればこの失踪は魔獣や罠以外--他の原因によるものだという可能性が高くなるわけだ」

「それで…先輩だけでなく私も呼ばれたと?」

イドルの仮説に、先程まで黙っていたラフィーナがシエンを横目で見てから首を傾げた。

「そうだ。君の眼は普通では見えないモノを色で捉え、それがなんの痕跡なのかを認知出来る。その眼と彼の力があれば、この失踪の謎も簡単に解けると思い、呼んだまでだよ」

イドルが告げた『その眼』という単語。それは、ラフィーナが生まれつき持つ特殊な魔眼の事だ。この魔眼は【全能ノ魔眼】と呼ばれており、1万年に1人だけが宿すと言われている。そして効果は『見えざるモノを眼で捉え、暴き出す』というものだ。その為、彼女の眼の前では、全ての不可視魔法や不可視な現象は意味を成さない。

「というわけで、頼めるかな?二人とも」

「はぁ…。断っても意味無いのは分かってるんで分かりましたよ」

「先輩と一緒にってのが死ぬほど不満ですが、統括者の命令なら、本当は死ぬほど嫌ですけど分かりました」

諦めのシエンと、その彼と一緒に行くのが100%不満なラフィーナはイドルの命令に了承して部屋を出た。
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