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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
シエンとルリ
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「さて、これが今回の回収物か」
宝物庫の中。そこにあったのは台座とそこに載っている小さな匣が一つ。それ以外は金塊やら王冠やら宝剣だが今回の目的は小さな匣だけであり、そもそもシエンにとって金目のものには興味が無い。
「後は依頼主に渡して終わりだな」
シエンは小さな匣を影で生み出した穴へと放り込む。あらゆるものを収納することが出来る影のため何かと長旅には便利である。
「とりあえずこの神殿から出よう」
軽く伸びをしたあと、転移呪文でクランセマムにある自分の家に設置している座標碑まで飛んだ。するとあっという間にシエンの前に一軒家が姿を現していた。扉を開けると、カランカランと来客が入ってきたのを知らせる鈴がなり、一人の少女がリビングの扉の隙間から顔をひょこっと覗かせてきた。
「ただいま、ルリ」
「お兄ちゃん、おかえり!!」
入ってきたのが自分の兄だと分かった少女は扉を押して、シエンの懐へと飛び込んできた。
雪のように白い髪は枝毛ひとつなく綺麗で、太陽に負けず劣らずな程に明るく紅い瞳。そしていつも浮かべている何ものにも染まりそうな程に無邪気な笑顔。少女の名前はルリ。シエンの妹だ。
「それにしてもよくこんな遅い時間まで起きてたな。お兄ちゃんのことは気にせず寝ても良かったんだぞ?」
ルリの頭を撫でながら心配そうに告げると、
「やだ!ルリはお兄ちゃんの家族だもん!だから、お兄ちゃんにおかえりって言うのはルリの役目なの!」
ルリはそう返して頬を膨らませる。相変わらずな妹にシエンは優しく微笑み抱き抱える。
「そっか、いつもありがとうな、ルリ」
「えへへー」
シエンはルリと一緒にリビングへと入る。そして夜遅くまで起きていてくれた妹のためにもとすごく遅めの夕飯を作ってあげたり、その後に風呂と歯磨きを済ませ、寝間着に着替えて布団に寝転がると、待っていたことで疲れが溜まっていたらしいルリはすぐに眠りについた。
「…全く。お兄ちゃんには勿体ない妹だよ、ルリは」
シエンは何処か悲しげな表情で儚げに笑って、ルリの髪を撫でる。この幸せを噛み締めるように、優しく撫で続けて、最後にまた儚げに笑った。その笑顔はまるで、誰かに懺悔しているかのように見えたことに気づく者は誰一人いない。そして--
「今度は・・・失敗しないからな」
この小さな一言に秘められた意味を知る者もいなかった。
宝物庫の中。そこにあったのは台座とそこに載っている小さな匣が一つ。それ以外は金塊やら王冠やら宝剣だが今回の目的は小さな匣だけであり、そもそもシエンにとって金目のものには興味が無い。
「後は依頼主に渡して終わりだな」
シエンは小さな匣を影で生み出した穴へと放り込む。あらゆるものを収納することが出来る影のため何かと長旅には便利である。
「とりあえずこの神殿から出よう」
軽く伸びをしたあと、転移呪文でクランセマムにある自分の家に設置している座標碑まで飛んだ。するとあっという間にシエンの前に一軒家が姿を現していた。扉を開けると、カランカランと来客が入ってきたのを知らせる鈴がなり、一人の少女がリビングの扉の隙間から顔をひょこっと覗かせてきた。
「ただいま、ルリ」
「お兄ちゃん、おかえり!!」
入ってきたのが自分の兄だと分かった少女は扉を押して、シエンの懐へと飛び込んできた。
雪のように白い髪は枝毛ひとつなく綺麗で、太陽に負けず劣らずな程に明るく紅い瞳。そしていつも浮かべている何ものにも染まりそうな程に無邪気な笑顔。少女の名前はルリ。シエンの妹だ。
「それにしてもよくこんな遅い時間まで起きてたな。お兄ちゃんのことは気にせず寝ても良かったんだぞ?」
ルリの頭を撫でながら心配そうに告げると、
「やだ!ルリはお兄ちゃんの家族だもん!だから、お兄ちゃんにおかえりって言うのはルリの役目なの!」
ルリはそう返して頬を膨らませる。相変わらずな妹にシエンは優しく微笑み抱き抱える。
「そっか、いつもありがとうな、ルリ」
「えへへー」
シエンはルリと一緒にリビングへと入る。そして夜遅くまで起きていてくれた妹のためにもとすごく遅めの夕飯を作ってあげたり、その後に風呂と歯磨きを済ませ、寝間着に着替えて布団に寝転がると、待っていたことで疲れが溜まっていたらしいルリはすぐに眠りについた。
「…全く。お兄ちゃんには勿体ない妹だよ、ルリは」
シエンは何処か悲しげな表情で儚げに笑って、ルリの髪を撫でる。この幸せを噛み締めるように、優しく撫で続けて、最後にまた儚げに笑った。その笑顔はまるで、誰かに懺悔しているかのように見えたことに気づく者は誰一人いない。そして--
「今度は・・・失敗しないからな」
この小さな一言に秘められた意味を知る者もいなかった。
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