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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
真の番人
しおりを挟む神殿の最奥。そこには宝物庫の扉があった。シエンは魔法トラップが張られてないかを地面に落ちていた石ころを投げて確認する。すると、扉に触れた石ころが雷の槍に砕かれる。どうやら、今回の魔法トラップは【雷帝の怒槍】らしい。
「なかなか厄介な魔法トラップをしかけやがるな」
シエンは拳銃を再び取り出し、銃口を扉に向ける。そして、
「魔弾装填--地の魔精霊よ。汝、弾丸となりて雷を滅しろ」
と唱える。すると、その声に応じた地の魔精霊が地面から出現し、己が肉体を弾丸へと変換させて宝物庫の中心に埋め込まれている【雷帝の怒槍】の起動魔法陣を貫き破壊する。
「よし、開けるか」
シエンは魔法トラップが無効化された扉に手をふれ開ける。最初に視界に入ってきたのはいくつもの冒険者の白骨死体。その次に一振の剣を床に刺してその柄を握る格好をした石像があった。普通の石像にしては微かな魔力を帯びている。おそらくだが、魔力で動く仕組みなのだろう。
「真の番人はこの石像ってことか?」
シエンは試しに下位呪文で小さな炎を放つ。その炎が石像に少しづつ迫り、刹那、強烈な風が石像を守るように巻き起こった。
「なるほど。自動防御魔法陣か」
先程、石像を守った風は【自動防御魔法陣】によるもの。かつて太古の時代に存在していたという【失われし呪文】の一種だ。 他にも【自動攻撃魔法陣】、【自動治癒魔法陣】がある。この魔法は本来であれば人にかけることしか出来ない。しかし、石像にかけられるということは相当の魔法陣の使い手だ。
「しかも、数千年前の魔法陣が未だに残ってるなんてな」
拳銃に魔弾を一気に4つも装填しながら呟く。そして、一度息を吸い、狙いを定める。石像の額へと。
「赤、青、黄、緑の弾丸は混合し、全ての因果を断ち切る」
詠唱が終わるのと同時に引き金をひいた。放たれた赤、青、黄、緑の弾丸は途中から混合しひとつの弾丸となりて石像の額へと向かう。そして先程のように【自動防御魔法陣】の効果により風が生まれる。そう予想していた青年の読みを石像は覆す。風が生まれたかと思えばそれは風ではなく透明な薄い鏡だ。その鏡に弾丸が直撃し、貫くかと思いきや、キンッと跳ね返す音がなり、シエンの方へと返ってきた。
「--くっ!?」
反射による弾丸が自身の額に触れる手前、シエンはギリギリで身を躱す。久しぶりに死の匂いを感じ取ったシエンは吐き捨てるように告げる。
「はっ。まさか、【自動防御魔法陣】以外に【自動反撃魔法陣】までかけられてるなんてな」
シエンはどうしたものかと拳銃に魔弾を装填しながら考える。【自動防御魔法陣】と【自動反撃魔法陣】を突破するのはそこまで難しくないが、この二つが掛けられているということはまだ謎があるはずだ。そんなことを考えていると、
『汝、強さの証を示せ』
男の声が響き、石像が動いた。床に刺された剣を引き抜き、切っ先をシエンに向ける。それが合図だ。
「--っ!?」
瞬き一つの時間で目前まで剣の先端が迫り、紙一重で身を躱すが、躱した先に石像の拳が存在し、思い切り顔面をとらえる。硬い石の感触が顔面を襲い、シエンの身体が吹き飛ぶ。ダラァッと鼻から血が垂れ、顔に痣が生まれる。一瞬の気の緩みで意識が持っていかれそうだ。
「ペッ。こんな依頼ならもう少し金ぶんどっとけば良かったかな」
シエンは口の中の血を吐き捨て、少し後悔する。簡単な依頼だと聞いていたから受けたものの今度からは多少は気をつけようと反省しつつ、射撃で中距離を保つ。流石に接近戦は分が悪い。だが、石像はそんなことお構い無しと弾丸を体で弾きながら徐々に距離を詰めてくる。そして、再び石像の間合いまで距離が縮まる。
『終わりだ、人間』
石像が剣を振り上げ、告げる。もう避ける時間はない。絶対絶命の状況下。その中でシエンは含みのある笑みを浮かべ、
「終わるのはお前だ、バーカ」
とある一点へと狙いを定め、引き金をひいた。パァンっという乾いた音がなり、続けて砕ける音がした。その音は石像の右肩から鳴ったもの。それに伴い剣が地面へと落下する。
『どういう…事だ?』
何が起こったのか分からない石像。それの額に銃口を向け、
「どんな硬いもんでもな、何度も同じ場所に傷をつければ壊れるもんなんだよ。それと【自動防御魔法陣】と【自動反撃魔法陣】に頼るつもりだろうけど、もう無意味だよ」
引き金に指をかけ、
「--数千年もおつかれ」
労いの言葉と共に石像の核を撃ち砕いた。
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