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一学期【中間試験】編

迷惑すぎる幼なじみ

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馬鹿みたいにドデカい喧嘩をおっぱじめようとしていたリィンとレヴィを『ハイスリープガス』で眠らせた俺は、二人をベッドに寝かせ、夜食を食べる為にリビングへと向かっていた。

「はぁ、色々とあり過ぎて腹減った」

廊下の電気をつけてお腹をさする。確か、鍋の中にはまだカレーが残っていたはずだ。普段は夜食なんて食べない。理由はまぁ、太るから。一応、思春期の男の子なので、女の子に見られても恥ずかしくない体型を維持したい気持ちはある。だけど、今日は仕方ない。

「・・・ん? なんで明かりついてんだ?」

少し前に妹華が「もう寝るから」ってリビングの明かりを消していたはずだ。俺は泥棒でも入ってきたのかと、風呂場に備えてある護身用の木刀を手にする。そして、息を潜め足音を殺してリビングの扉に触れる。キィィと小さな音が鳴り、少しだけ中の様子が確認できる。

キッチン近くに配置されたテーブル。そこに見覚えのあるというか見覚えしかない後ろ姿があった。オマケに何やら食べているのか、モギュモギュと音が鳴っている。

「はぁ・・・あのバカ」

俺は忍ぶことをやめ、普通に扉を開けて、美味しそうにカレーを頬張るモギュモギュ女こと岸野院雫の背後に立つ。そして、口の中に入れてたものを飲み込んだのを確認してから、こめかみを両拳でグリグリと押す。


「んぎゃっ!? いた、痛い!痛い!やー!! んびゃあぁあああぁあああぁああ!?」

椅子から転げ落ちるんじゃないかって思う位の苦鳴を上げる馬鹿な幼馴染に容赦なくこめかみグリグリを続ける。その度に苦鳴が響き続け、俺は数分後にお仕置きに満足してこめかみグリグリをやめる。

「・・・うぅ。グリグリ痛い」

涙目で俺の方を振り返る雫。

「そんな目で俺を見てもダメだぞ。悪いのはお前だ。こんな時間に飯なんか食べにきやがって」

壁にかけられた時計を指さす。もう深夜1時だ。流石にこんな時間にリビングの電気がついてれば泥棒だと思ってもおかしくない。この馬鹿は昔から何をするかわからないから対処に困る。

「えー。だって、ケー君のお父さんが『お腹が空いた時はいつでも兄太にご飯作って貰え』って言ってたもん」

雫は頬を膨らまし、口を尖らせて文句を垂れる。まるで幼い子供のよう。

「あんっっっのクソ親父!!  あほに、なんてこと吹き込んでやがんだッ!!」

俺は思い切り叫んだ。今はどこの国でどんな旅をしているのかわからないクソ親父に対して。毎度毎度、俺の飯を食いに来るのには、そういう理由があったのか。全く迷惑な事だ。お陰で食費が凄いやばい。ただでさえ、妹華の服代やら遊び代なんかで生活費が消えていくのだ。そこに大食らいのあほが追加されたせいで大変だ。

「あー、クソ腹立つ。とりあえずお前は帰れ。もうお腹いっぱいになったろ?」

シッシッと追い払うように言うと、

「うーん、あと5杯はいける!!」

めちゃくそ眩しい笑顔で元気よく答えてきた。

「あと5杯じゃねえよ!いいからはよ帰れ!そんなに帰りたくねえなら俺が家まで連れてってやる!ほら、行くぞ!」

ブーブー文句を垂れる雫の腕を掴み引っ張る。しかし、あろう事かこのアホは抵抗してきた。思い切り机を掴み、離れまいとする。このまま引っ張ってやろうかと思ったが、その机には雫が食べ終わった後のカレーの皿がある。床に落としたり机を汚すことは避けたい。それにカレーの皿がなかったとしても机を引きずることで床に傷がつく可能性もある。結果、雫が自分の意思で家に帰ることを祈るしかない。

「あぁ、もう。あと5杯食ったら帰るんだな?」

「えっと、やっぱ10杯!!」

「ダメに決まってんだろ!アホ!5杯だ!5杯!それ以上は絶対に作ってやらん!


俺はそう言って、未だ文句を垂れる雫を無視して、自分もご飯とルーをさらに盛り付け食べ始めた。
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