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第二章 入隊編

入隊編5話 オレは文系。でも軍隊は体育会系

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オレとアクセルさんのおっぱい談義は白熱する。

円錐形、ロケットおっぱいが至高にして究極であるという認識は一致したが、円錐形の対抗馬に関しては意見が違った。

オレは釣り鐘型と主張したが、アクセルさんは半球型だと譲らず、合意には至らなかった。

「ふう、円錐形の対抗馬に関しては、まだまだ考察する余地がありますね。」

「ああ、おっぱいの世界は奥深い。無限の可能性を秘めている。次の論点は乳輪についてにしよう。これも色や大きさの違いで、おっぱいをガラリと変える重要なファクターなのは………痛え!」

アクセルさんの頭に拳が振り下ろされた。かなり容赦ない勢いで。

制裁を加えたのはショートカットでキャップを反対向きに被った、作業ツナギ姿の白人女性。

そして爆乳。なんとオレのおっぱいスカウターが煙を吹いて壊れたのだ。

バカな!100cmまで測定可能なオレのおっぱいスカウターが壊れただと!

この女性、まさかのm超えのおっぱいだというのか。不二子ちゃんでも99,9cmだぞ!

脅威の爆乳のこの女性は彫りの深い顔立ちで、楽勝で美人さんの範囲に入る。

ホント、美人の多いとこだね、ここ。

「アクセル!新入りをエロスの世界に引きずり込むんじゃない!」

「お~痛てて。引きずり込んでねえよ。元からエロスの世界の住人だったんだ!」

おっぱいに目が釘付けになっているオレを見て、爆乳さんはため息をついた。

「………みたいだね。まったくもう。」

「すいません、でも羽虫は誘蛾灯に吸い寄せられる生き物なんです。」

「じゃあ、バチッとその命、散らせてみる? 羽虫みたいに。」

爆乳さんは腰のベルトからスパナを引き抜いて、トントンと手の平を叩いた。

「食堂で2階級特進は勘弁してください。」

そもそも戦死じゃなきゃ2階級特進はないか。

「碌でもない新入りが来たもんだねえ。マリカさんも何考えてんだか。まあいいか、メカニックチームに入る訳じゃなし。」

「アクセルさんのお仲間ですか?」

「違うわよ。確かにアクセルとは同郷の腐れ縁だけどね。私はタチアナ・カジンスキー少尉。メカニックチームのリーダーよ。コイツらは主に車両の操縦、私達はその整備。手が足りない時はフォローし合う。もっとも私達メカニックチームがフォローするばっかりだけど。コイツらは本当に荒っぽい使い方するから。」

「文句は無茶なオーダーするボスに言ってくれ。」

仲いいなあ。幼馴染みなんだろうか。

「オレはまだ自分の車両とかないですけど、持てたらお世話になります。」

運転はともかく整備はオレには敷居が高すぎる。文系だしな、オレ。

「ああ、そこまでアンタが生きてりゃいいね。」

「タチアナさんやアクセルさんやゲンさんのお陰で助かりました。歓迎会が終わるまでポツーンかと覚悟してました。」

最初にオレに話しかけてくれた恩人のゲンさんは、テーブルに突っ伏してスヤスヤお休みだ。

お爺ちゃんは夜が早いらしい。

スパナを片手でクルクル回しながらタチアナさんが言う。

「カナタだっけ? そう呼ぶよ。」

「はい、カナタでお願いします。」

「離れて見てたけどね。馴染みたいと思ってるなら誰かが動いてくれるのを待つんじゃなくて、まず自分から動きなよ。ゲンさんが気をきかせてくれてなきゃアンタ本当にポツーンだったよ。」

そっか、そうだよな。

う~ん、身に染みついたボッチの習性の修正は難しい。

「はい、そうですよね。一人が長かったので、そのあたりの距離感が掴めなくて。」

「心配すんな。この基地にはおっぱいの最奥を極めんとする求道者は多い。話題に困ったらまず、おっぱいネタを………」

今度こそホントに容赦なく、タチアナさんはアクセルさんをスパナでドツいた。

火花が散ったと思う。そしてアクセルさんはゲンさんのとなりでお休みになった。

永眠じゃなきゃいいけど。うわっ、マンガみたいなコブが出来てるよ!

かなりいい音がしたのに、ゲンさんはグラスを握ったままスヤスヤ眠っている。

オレはその手を見てギョッとした。指と指の間に皮膜? 水掻きか、これ?

「ああ、ゲンさんの手ね。水掻きだよ。そういう体にしてあるのさ。」

「バイオメタルってそんなことも出来るんですか?」

「それだけじゃない、前腕の体毛がもの凄く濃いだろ? 見えないけどスネ毛もそう。それを伸ばしてヒレも形成出来る。ゲンさんは水中戦のエキスパートなんだ。無呼吸でも30分は戦えるってさ。」

タガメでゲンゴロウだもんな、水中はゲンさんの庭って訳だ。

「名は体を表すのいい見本ですね。」

「水中でゲンさんと戦って勝てるのは1番隊でもマリカさんだけらしいよ。私は戦闘員じゃないから詳しくは知らないけどさ。」

「その道のエキスパートの土俵で戦っても勝てるんですか。ハンドレットって半端ないですね。」

「お喋りは楽しんだか? そろそろ実践教育の時間だぜ?」

最初にオレに絡んできた白人の巨漢が立っていた。やっぱりきやがったか。

「ウォッカ、止めときなよ。」

「整備クルーは引っ込んでな。これは俺達戦闘員の問題だ。」

ウォッカねえ。多分渾名なんだろうけど。

アクセルさんといいタチアナさんといい、ロシア系が多いことだ。

だがこのロシア系はフレンドリーではない。やる気満々だな。



1番隊の隊員達は手際良くテーブルを動かして中央にスペースを作る。

ウォッカは顎でスペースを指して、先に特設リング中央に歩いていく。

オレに顎で指図すんな。オレを顎で使っていいのはマリカさんだけなんだぞ!

ヒューヒューやれやれーと囃し立てる隊員達。

逃げる訳にはいきそうにない。

オレは食堂内特設リングでエキシビションマッチをやる事になった。



「チビ助、しばらく医務室の流動食を楽しませてやるよ。」

そりゃ2mはあるコイツから見れば170ちょいのオレはチビ助かもしれないけどさ。

文系男子として口喧嘩では負けたくないね。

「デカいアンタが羨ましいよ。脳味噌に回す栄養もガタイに回したらそんなにデカくなれるんだろうね。オレもそうすりゃよかったな。」

ピキッと青筋が立った。うん、脳筋らしい反応だ。

「マリカさん、このチビ助、少々痛い目見せても構わんですよね? 後にしろとは言われましたが、やるなとは言われてねえですぜ?」

マリカさんは瓶ごと度の強そうな酒を飲みながら、

「いいだろう、やりな。余興としては楽しめそうだ。」

「退屈しのぎになるほど長くはかからんですよ。」

根拠はないがとにかくスゴイ自信だな、アンタ。

「ただし、念真能力は使うな。」

「ポッと出の新入りに念真能力を使うほど落ちぶれちゃあいませんや。」

「分かってないねえウォッカ。おまえの為に言ってるんだよ、アタイは。」

「へ?」

「カナタの念真強度は100万nだ。分かったろ? いくらおまえの脳味噌が乏しくても。」

ざわざわ ザワザワ ざわざわ

隊員の皆さんがカイジの黒服になってらっしゃる。

どうやら100万nっていうのは相当な数値らしい。

ここは心理的に追い打ちをかけておこう。

「やめるならやめてもいいですよ? 無駄なカロリーを消費したくないんで。」

「その程度でビビるかボケェ!1番隊舐めんなよ!」

ま、引いてくれるとは思ってなかった。

マリカさんありがとうだな、オレはまだ手足に障壁を纏わせるのは上手くない。

ちゃんと勝負できる舞台をセッティングしてくれたんだろう。

「じゃあ念真能力はナシってことで。」

「いいだろう。準備はいいかチビ助?」

「いつでもどうぞ。」

ウォッカは両拳を固めて突進してくる。流石に精鋭部隊の隊員、堂に入ってらぁ。

ブルファイターだな、見た目通りに。体格は頭一つ違う。当然リーチも長い。

左ジャブ×2、そして右の打ち下ろし。オレはスウェイとダッキングで躱す。

体格差のある相手には武器ありで戦いたいよなぁ。

格闘だと体格、体重差の占めるウェイトが大きいんだよ。

泣き言いってもしゃあないか。戦場は常に無差別級の殺し合いだ。

ウォッカの攻撃を躱すのは難しくない。

マリカさんとは天地の差、10号や13号だってコイツより断然動きは速かった。

打ち下ろしをかい潜ってリバーにフック、当たったがウォッカはニヤリと笑った。

まだ全力じゃねーよ。硬さと重さを確かめただけだい。

ウォッカの巻き込むようなフックをバックステップで躱して距離を取る。

ウォッカは重量級バイオメタルだな、スピードに劣るがパワーに秀でる。

巨漢は大概重量級だろうけど一応確認はしないとね。



よし、作戦は決まった。さあいくぜ!

オレはウォッカのパンチを躱しつつ軽くペチペチと叩きにいく。

まずオレのパワーを誤認させる、そんで怒らせる。その為には言葉も使う。

「アンタ軍隊じゃなくて家電屋の棚に並んでた方がいいんじゃない? 大型扇風機としてさ?」

「黙れ!テメエこそ蚊の刺すようなパンチしか撃てねえのか!」

「そりゃアンタは蚊以下だもん。」

オレはウォッカの額を平手でペチンと叩いて距離を取る。

「綺麗な紅葉が咲きました。御一同様、拍手拍手!」

オレが手を叩くと1番隊の隊員達がどっと笑う。

しっかりしろー、新入りにナメられてんぞーと声が飛ぶ。

うん、いい感じで青筋が増えたね。そろそろ来るだろ。

ウォッカはまたも突進してきて両腕を振るう。そして来たっ!キックが!

キックを温存してるとは思ってた。戦争はスポーツじゃない。何を使ってもいい。

仮にも精鋭部隊の隊員が、ボクシングスタイルの格闘しか出来ないなんて思えなかった。

冷静さを欠いた状態でキックを出して欲しかったんだ!

どんな人間でも足は2本、キックを繰り出せば1本足。

なんとか躱して軸足に全力のローキック!

ひっくり返ったね。倒れた顔面に鼻を狙ってストンピング!

鼻血はさらに冷静さを奪う、頭にくるもんな。鼻血ブーは。

さらにストンピングを続けようとしたが、オレは調子に乗り過ぎた。

右足首を掴まれたのだ。そしてウォッカはそのまま立ち上がり、オレを地面に叩きつけた。

背中を叩きつけられ一瞬息が止まる。

もう一度地面に叩きつけられる前に、左脚でウォッカの顔面に蹴りをいれてなんとか脱出。

マジで危なかったぜ。



さて、コイツをどうやったら倒せる?

性懲りもなく毎回毎回、窮地に陥ってるなぁオレ。


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