2 / 49
サヨナラ現世、オハヨウ異世界
詳しい説明は省くが、とりあえず逃げろ
しおりを挟む
「ごめんなさいってぇ。少し言いすぎましたから、病まないでください。一家を率いる長男がそんな体たらくで情けなくないんですか?」
「次男です。家督とか要りません。お兄ちゃんにあげます。あ、遺産は分けてね」
「元気そうで何よりです」
いきなり言葉の刃でフルボッコにされた俺は、しばらく体操座りをしていた。
ああ、空はこんなに青いのに……どうして俺はこんな目に……。
「落ち着いて説明もしたいので、とりあえず街まで行きましょう!ここから左にまっすぐ進めば、そのうち街につきますから!さぁ、走って走って!」
なんにも分かってない俺でも一つ分かるのは、案内人のこの……なんだ、女神?天使?……もう付き人でいいか。
この付き人の性格が大変よろしくなく、謎のテンションに振り回される未来しかないと言うことだ。
「起きたばっかで走りたくねぇよ、裸足だし」
「ええー?でものんびり歩いてると、死んじゃいますよ?」
「走っても死ぬだろ。足の裏切って、破傷風になって」
「発症するまで体が持てばいいですけどねー。とりあえず希望的観測は、後ろを見てから口にしてもらえますか?」
内心クソうざいと思いながら振り返ると、そこには黒くて大きな塊がいた。
俺のよく知るそれよりもずっと大きいそれは、じっと俺を見つめていた。
せめて見つめるならエルにしろ。
「……うん、なるほど。俺は間近で見たことがあるぞ。登別かどっかでたくさん飼われていてな。アレは可愛かった。ところで知ってるか?死んだフリって自殺みたいなもんなんだってよ!」
「そうですか。トリビア込みの思い出話を今して死ぬか、今度にして生き延びるか、選んでもらえます?」
「先伸ばし一択☆」
「わぁ、ウインクへったくそ」
俺は一目散に逃げ出した。
後ろから聞こえてくる恐ろしい獣の声は、死が近くにあることを自覚させる。
「おいエルッ!あのクマ、追い払えるような魔法とか能力とかないのか!?」
「クマくらい私にかかれば余裕です。でもやはりここは、ユーマくんの力で何とかしてもらわないと!」
足を傷だらけにしながら走る俺のとなりを、エルはスイーッ……と宙に浮いた状態で並走している。
その能力で俺も運べや。
「アレは魔熊、ワンパンで高さ10mの巨木をへし折ります。でもユーマくんなら平気ですよね?」
「ふざけんなっ!?一般的な高校生は普通のツキノワグマのパンチでも死ねるわ!あんな3mはあるようなクマに殴られて即死しないわけねぇだろ!」
「でもユーマくんの体育の成績ならなんとか……」
「3だ、3!大して良くも悪くもねぇよ!」
「3とか……ウケる」
「もうほんと死ねよこの女」
幸運にも、グリズエビルとかいうヒグマカスタムみたいなクマはそれほど足が早くない。
ヒグマからは絶対に逃げ切れないとは良く言うが、こいつはそうとも限らないらしい。
「あの子、縄張りから追い出したかっただけみたいですね。そろそろ追いかけてこなくなりますよ!」
「なんでっ……分かるっ……!?」
「あなたよりは知能指数が高いので!ユーマくん、知能指数まで3とか言わないですよね?」
「100くらいならあるわァッ!」
この女に大声で言い返しながらよく走り続けられると自分でも驚きだが、そのおかげでなんとかクマの追跡を振りきれたようだ。
もう二度とクマなんか見たくない。
登別とか絶対行かない。
「よく頑張りましたね、ユーマくん!さぁ、あそこに見えるのが記念すべき最初の街ですよ!」
きっとエルは、今だけは本心で誉めたのだろう、そんな気がした。
そして彼女の指差した先には、街と言うほど栄えてはいない、だが落ち着いた生活が送れそうな村があった。
「次男です。家督とか要りません。お兄ちゃんにあげます。あ、遺産は分けてね」
「元気そうで何よりです」
いきなり言葉の刃でフルボッコにされた俺は、しばらく体操座りをしていた。
ああ、空はこんなに青いのに……どうして俺はこんな目に……。
「落ち着いて説明もしたいので、とりあえず街まで行きましょう!ここから左にまっすぐ進めば、そのうち街につきますから!さぁ、走って走って!」
なんにも分かってない俺でも一つ分かるのは、案内人のこの……なんだ、女神?天使?……もう付き人でいいか。
この付き人の性格が大変よろしくなく、謎のテンションに振り回される未来しかないと言うことだ。
「起きたばっかで走りたくねぇよ、裸足だし」
「ええー?でものんびり歩いてると、死んじゃいますよ?」
「走っても死ぬだろ。足の裏切って、破傷風になって」
「発症するまで体が持てばいいですけどねー。とりあえず希望的観測は、後ろを見てから口にしてもらえますか?」
内心クソうざいと思いながら振り返ると、そこには黒くて大きな塊がいた。
俺のよく知るそれよりもずっと大きいそれは、じっと俺を見つめていた。
せめて見つめるならエルにしろ。
「……うん、なるほど。俺は間近で見たことがあるぞ。登別かどっかでたくさん飼われていてな。アレは可愛かった。ところで知ってるか?死んだフリって自殺みたいなもんなんだってよ!」
「そうですか。トリビア込みの思い出話を今して死ぬか、今度にして生き延びるか、選んでもらえます?」
「先伸ばし一択☆」
「わぁ、ウインクへったくそ」
俺は一目散に逃げ出した。
後ろから聞こえてくる恐ろしい獣の声は、死が近くにあることを自覚させる。
「おいエルッ!あのクマ、追い払えるような魔法とか能力とかないのか!?」
「クマくらい私にかかれば余裕です。でもやはりここは、ユーマくんの力で何とかしてもらわないと!」
足を傷だらけにしながら走る俺のとなりを、エルはスイーッ……と宙に浮いた状態で並走している。
その能力で俺も運べや。
「アレは魔熊、ワンパンで高さ10mの巨木をへし折ります。でもユーマくんなら平気ですよね?」
「ふざけんなっ!?一般的な高校生は普通のツキノワグマのパンチでも死ねるわ!あんな3mはあるようなクマに殴られて即死しないわけねぇだろ!」
「でもユーマくんの体育の成績ならなんとか……」
「3だ、3!大して良くも悪くもねぇよ!」
「3とか……ウケる」
「もうほんと死ねよこの女」
幸運にも、グリズエビルとかいうヒグマカスタムみたいなクマはそれほど足が早くない。
ヒグマからは絶対に逃げ切れないとは良く言うが、こいつはそうとも限らないらしい。
「あの子、縄張りから追い出したかっただけみたいですね。そろそろ追いかけてこなくなりますよ!」
「なんでっ……分かるっ……!?」
「あなたよりは知能指数が高いので!ユーマくん、知能指数まで3とか言わないですよね?」
「100くらいならあるわァッ!」
この女に大声で言い返しながらよく走り続けられると自分でも驚きだが、そのおかげでなんとかクマの追跡を振りきれたようだ。
もう二度とクマなんか見たくない。
登別とか絶対行かない。
「よく頑張りましたね、ユーマくん!さぁ、あそこに見えるのが記念すべき最初の街ですよ!」
きっとエルは、今だけは本心で誉めたのだろう、そんな気がした。
そして彼女の指差した先には、街と言うほど栄えてはいない、だが落ち着いた生活が送れそうな村があった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
あなたを、守りたかった
かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。
今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。
しかし、婚約者のローランドが迎えにこない!
ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・
スカッとザマァではない
4話目の最後らへんで微グロ注意。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる