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第9話 泡立つのはニセモノの葛藤

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「ふあっ…!!!あああっ…!!!」

 アロルドの硬くて熱い彼自身が、私のナカを貫く衝撃に、私の身体は大きく弓なりに反り返って痙攣してしまう。
 身体が勝手にビクビクと震えてしまうのを抑えられない。

「あっ、あぁっ…!…アロルドっ…アロルドっ…!」

 熱くて硬いモノが自分の中へ納まっている異物感と圧迫感に呼吸が苦しい。
 少し動かれるだけでも、ビリリと痺れるような快感が全身を走って訳がわからなくなる。
 それなのに、まるで自分の中を掻き回されるかのように何度も何度も繰り返し突き上げられ、気持ち良いのと苦しいので涙が零れてしまう私の涙を、アロルドは唇で拭う。
 アロルドは私の両手をどちらもしっかり握ってくれて、恋人つなぎのように指と指をしっかり絡め合いながら、何度も何度も腰を打ち付ける。
 数えきれないくらいにたくさんのキスをして、愛おしげに名前を囁いて……。
 私の顔を見下ろすアロルドの顔は、普段の整ったキレイな王子様然としたものではない、切なげで、苦しそうで……余裕の無さそうな表情をしていた。
 その表情に、色気みたいなものを感じてしまい、私は妙にドキドキしてしまい余計に身体も昂ってしまう。
 もしかしたら、彼もそんな感じなのかも知れない。
 私は、彼が本当に求めているのは私ではなくこの世界の聖女ユラだと言う事実に気がついていたけれど、今だけはその事実から目を背けて、アロルドの愛情を受け止めたいと思ってしまった。
 彼の身体に腕を回し、彼の身体にすがり付きながら、何度も何度も絶頂した。
 アロルドも、私のナカに熱いものを何度か吐き出して、それでもまだ収まりが着かない様子で、何度も私を抱いた。
 私はこのままじゃ死んじゃうんじゃないかと怖くなってしまったけれど、彼の手や身体や唇を拒むことなんて出来なくて、彼に求められるがまま、意識が飛んでしまうまで抱かれ続けたのだった。

 翌日。
 目を覚ましたアロルドは、土下座せんばかりの勢いで私に謝罪してきた。
 顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりと、可哀そうになるくらいに狼狽していたので、私の方が返って冷静になってしまったくらいだった。
 本当にずっと寝ぼけていて夢の続きのつもりのまま、あんなに激しく私を抱いたのかと思うと、呆れやら感心やらで複雑な気持ちにはなったものの、拒絶しようと思えば出来たのにしなかった私が悪いと言うのも大きいので、当然私は彼を責めたりは出来ない。
 …とは言え、さすがに拒絶出来たけどしなかったなんてことを正直に言えるはずはなくて、私もしどろもどろになってしまう。

「……別に……嫌じゃなかったから良い……」

 恥ずかしくて、言葉にも悩んでしまって、結局はこんな風に言うので一杯いっぱいだった。
 その言葉にアロルドも「それは……」って何か言いたそうな顔はしていたのだけれど、それ以上はっきりした言葉なんて言えないし、聞きたくなかったから、もう王都に戻らないとまずいでしょ!と半ば強引に彼を送り出してしまった。
 実際予定外にここで時間を使ってしまったのは確かだろうし、私のせいで彼の立場が悪くなってしまうのが嫌だなって思ったのも本心ではあるけれど……。

 私は屋敷の二階の窓から、去っていくアロルドが乗った馬車が見えなくなるまで見送った。
 彼に抱かれた身体がまだ熱いような気がして、服の胸元をきゅっと握り締める。
 触れられた肌に、重ねられた唇に、まだ彼のぬくもりを感じる気がして、顔が熱くなる。
 彼の切なげな表情と吐息を思い出すとまた鼓動が速くなってしまう。

(……彼が好きなのは結良じゃない……。……この世界のユラなのに……)

 彼が愛しているのは、彼の幼馴染の聖女ユラだ。
 昨晩のことだって、彼は彼女を抱いているつもりだったはずだ。

(……私は彼を騙して、彼に抱かれて……愛されてしまった。私は偽物なのに……)

 彼のゲームでは見たことがなかった表情かおを知る度に胸がざわめいた。
 彼の真摯な想いを、激しい愛情を感じる度に、胸がざわめいて、彼から目を離せなくなってしまった。
 彼の瞳に映る彼の想い人が、本当は自分ではないと言うことが、苦しくてたまらない。

「……ここでは自分勝手に生きようって決めたのに……なんでこんな風になっちゃうのかな……」

 私は震えてしまいそうになる自分の身体をきゅっと抱いて、小さく呟いた。
 自分の頼りない腕では、いくら身体を抱いても不安や恐怖は消せない。
 身体に優しく触れたあの大きな手のひらを、強く抱いてくれたあの力強い腕を恋しく思ってしまう。

(……好きになんて、なっちゃいけなかったのにな……)

 私が本当は貴方の幼馴染じゃないと伝えたら、アロルドは一体どんな顔をするだろう。
 きっと狼狽する。困惑して、悩んで、その後に……騙した私を怒るだろうか。
 彼の善良さと恋心につけ込んだのだ。
 私の事を軽蔑して、嫌いになってしまうかも知れない。

 私を見る彼の目が、軽蔑と嫌悪に満ちたものに変わってしまったら……と考えると、胸が締め付けられるように痛んだ。
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